おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ミスター・ミセス・ミス・ロンリー

2024-08-01 07:12:38 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2020/2/1は「ピアノレッスン」で、以下「ヒア アフター」「ビートルズがやって来る/ヤァ!ヤァ!ヤァ!」「彼岸花」「羊たちの沈黙」「瞳の奥の秘密」「ひとり狼」「陽のあたる場所」「日の名残り」「火火(ひび)」と続きました。

「ミスター・ミセス・ミス・ロンリー」 1980年 日本


監督 神代辰巳
出演 原田美枝子 宇崎竜童 原田芳雄 名古屋章 草野大悟 天本英世 三国連太郎

ストーリー
花森(名古屋章)という男に店をまかされている市雄(宇崎竜童)は、深夜帰宅途中、電柱に手錠でくくられた女をひろった。
女は千里(原田美枝子)と名乗り、そして二人の奇妙な暮らしが始まった。
ある日、二人は新聞で「北川商産カズノコ倒産、北川社長は十五億円抱え失踪」の記事を読んで、お互いに同じ企みを持っていることを感じた。
出版社に勤める三崎(原田芳雄)も下村(天本英世)と北川について話していた。
「北川は無事ヨーロッパに着きました」と言う下村に、うなずく三崎。
市雄はミスを犯し、国籍がないため店を閉めなければならなくなった。
市雄のために花森と言い争う千里。
市雄はその帰り、出会ったときと同じように、千里を手錠で電柱にくくって、捨ててきた。
その千里を、今度は三崎が拾った。
三崎が彼女を連れ帰ったとき、市雄が現われ、こうして三人は出会った。
数日後、三崎のところへ下村がやってきた。
「三崎さん、あんたがやった十五億円、全部札の番号、控えてあるそうだ。私はこの仕事から手を引く。餞別にいいネタをあげます。市雄って奴は、宗形っていう、べら棒に金を持っている男を知ってます」と話すと去っていった。
職のなくなった市雄と千里に、三崎は十五億円を使える金に換える手伝いをしないかと持ちかける。
三人は宗形(三国連太郎)を探しはじめた。
そして、千里はうまく宗形のところへ入り込んだ。
三人の罠に宗形はジワジワと落ちていく。


寸評
当時21歳の原田美枝子が原案、制作、脚本、主演まで行っているのだが、彼女をそこまで動かしたものは何だったのだろうか。
彼女の意気込みの様なものは作品からは感じ取れなかった。
話は荒唐無稽なものなのに中途半端な内容で、原田美枝子の小悪魔的な可愛さだけが残る作品だ。
主人公の心情を手書きの文字で伝える演出に驚くが、それが映画のテンポを削いでしまっている。
原田美枝子が演じる千里はいろんな男の元を転々としていて、暴力を振るわれていたのか小犬のように怯える時があるかと思えば、過去の男たちの家の合鍵を作っていて盗みに入っているというしたたかさもある女性である。
いつも鼻をすすっているなど神経質そうな面も見せ、見た目も可愛いし細身なのに巨乳というキャラクターを上手くいかせていなかったように思う。
天使のような可愛さと小悪魔のような意地悪さをもった人物、あるいは善人の一面を持ちながら悪人としての裏の顔を持つ人物。
もしかすると、原田美枝子はそのような二面性のある女を演じて見たかっただけなのかもしれない。
映画の内容よりも、どのようにしてこの映画を製作することになったのかの事情の方に興味が残った。

千里が手錠で電柱にくくられているというインパクトのあるシーンから始まるのだが、その後の展開は何が何やらわからない。
本編の大半は原田美枝子、原田芳雄、宇崎竜童の変なやりとりをダラダラと見せつけられているような印象。
彼らに絡む脇役も名古屋章がゲイの男を演じるなど個性派俳優が怪演を披露していく。
天本英世は驚くような役柄ではないが、心筋梗塞を起こしそうになると酒を飲んで治すと言う変な老人として登場するなど、物語を追っていると「もういいや」という気分になってくる。
宇崎竜童が「オカマ・・・」と言われ、「言わないで・・・」と返すシーンには笑ってしまうし、三国連太郎が立ち上がった時にオナラをして、それを原田美枝子に嗅がせて「クサイ、クサイ」と笑い転げるなど滑稽なシーンもあってコメディの要素もあるのだが、それらのシーンは全体の中で浮いてしまっている。
2時間以上も費やして描く必要があったのかの不満が残る。

本筋は強奪された15億円を巡るやり取りで、それが今迄のダラダラは何だったのかと言いたくなるほど急展開で結末に持っていかれる。
ある種のドンデン返しで、なあ~んだ、そうだったのかで終わるけれど、その醍醐味もなかった。
天本英世とあの男たちはどのような関係だったのだろう。
面白かったのは市雄を演じた宇崎竜童で、店を任されているマスターなのだが、実は彼はオカマだったということが判明した後の演技が笑わせていい味を出している。
ダウンタウン・ブギウギバンドというグループのリーダーで、ヒット曲も数多く作曲しているが、役者としてもいい雰囲気を持っている。
原田芳雄は僕の好きな俳優で、相変わらずカッコいいなと思わせた。