おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

いつかギラギラする日

2023-08-07 08:05:29 | 映画
「いつかギラギラする日」 1992年 日本


監督 深作欣二
出演 萩原健一 木村一八 千葉真一 荻野目慶子 多岐川裕美 石橋蓮司  
   原田芳雄 八名信夫 安岡力也 樹木希林 六平直政

ストーリー
うらぶれた産婦人科から出て来た女・美里(多岐川裕美)の肩を抱いた神崎(萩原健一)は、10年来の愛人である美里に「また仕事を始める」とつぶやいた。
昔の仲間で現在うつ病で入院中の井村(石橋蓮司)に話を持ちかけ、2人そろってこれも昔の仲間である北海道の柴(千葉真一)のもとへ飛んだ。
待ち受けていた柴は30歳年下の麻衣(荻野目慶子)と同棲しており、2人がよく出掛けるディスコのマネージャー、角町(木村一八)が今度の仕事の仕掛け人だった。
角町は自分のライヴハウスを持つために5千万円を必要としていたのだ。
計画は洞爺湖の温泉ホテルの売上金2億円を運ぶ現金輸送車を襲うというもので、角町が加わることに神崎は難色を示したが、計画は実行され成功、4人は廃屋になっているレストラン跡にたどり着いた。
しかし2億円入っているはずのジュラルミンケースにあったのは、たった5千万の現金だけだった。
イラつく角町、失望の井村をよそに神崎がそれを4等分し始めたとき、角町が銃を発射、井村は即死し、柴も重傷を負った。
柴を背負いからくも逃れた神崎は、身を案じて廃屋へやってきた美里の車で現場を離れた。
柴は計画を知る麻衣を角町が襲うのではないかと案じたが、実は麻衣は柴を裏切り角町と組んでいた。
麻衣は角町が現金を独り占めするため彼女を襲いに来るのを察知し、逆に角町から現金を奪う。
角町は暴力団がやっている金融会社から金を借りており、組長(八名信夫)から返済を迫られていた。
組長は金と店の権利を奪い取ろうとして、殺し屋の野地(原田芳雄)に神崎と角町の抹殺を依頼していた。
突然神崎のもとに麻衣から5千万を返すとの電話があり、指定の場所に出掛けたが、麻衣はショットガンを向けてきた・・・。

寸評

当初予算は3億円だったものが11億円まで膨らんでしまい、おまけに興行成績も悪くて大赤字と言う作品だが、ヒットしなかった理由は分かるような内容である。
原因はクールなギャングものかと思えば、ドタバタを繰り返す喜劇の様でもあり、若者の純愛篇も盛り込まれてくるという中途半端さにあったと思う。
一言でいえば、遊び心が過ぎた作品だということだ。

出だしはいい雰囲気で、ストップモーションと共にキャストが表示されるクレジットの出方が期待を持たせる。
最初のシーンは、内緒で子供を堕ろしてきた美里を神崎が迎えいき、医院からでてきた彼女のうしろからスッと隣にならぶ場面で、「知ってたの」と言う美里に、「10年一緒にいたんだから」と返す神崎。
美里は「ごめんね、油断しちゃってた」と応えるしんみりしたシーンから、神崎が美里に再び仕事を始めることを伝えるまでの流れは、まるでフレンチノワールを見ているような雰囲気がある。

仲間の芝を訪ねたところから様相が一変するのだが、理由は荻野目慶子の麻衣が登場するからだ。
いや、麻衣の荻野目慶子が登場したからだ。
そう言わざるを得ないほど麻衣を荻野目慶子が怪演していて、この映画で一番印象に残るキャラクターである。
彼女に比べると、渋い役柄であるはずの石橋蓮司や千葉真一が早々にフェードアウトしてしまっている。
あっけなさすぎるではないか。
代わって登場するのが角町の木村一八なのだが、荻野目、木村が揃うと兎に角にぎやかになる。
僕は二人のオーバー演技に素直に乗ることができなかった。

彼等の騒がしさと対比するかの如き落ち着いたグッとくる場面は存在している。
神崎は組事務所を去るときに、原田芳雄扮するヒットマンと階段ですれ違いニヤリと笑う。
同じ臭いをお互いに感じる場面としてツボを押さえている。
賑やかだった麻衣と角町だが、途中で麻衣が「なんであたし達、こんなことしてるんだろう?」とつぶやくと、角町は「金だろうな。金っていってもただ通りすぎていくだけだけどな・・・」と応え、「金だけじゃねえよ、人だって何だってただ通り過ぎてくだけさ」と続ける。
この言葉を聞いた真衣は「一瞬でもみていてくれる人の為に何でもすると・・」と言う。
それまでとのギャップもあって、若者の心情がやんわりと伝わってくるいいシーンとなっている。
一番いいのは芝が息を引き取るシーンだ。
「おっさん、休むのはどこがいい・・・」と言う萩原健一を捉えるカメラアングルがいい。
神崎は裸で横たわっている芝に何か掛けてやってくれと美里に言うが、美里は「何かかけるのね」とレコードをプレーヤーに架け静かな音楽を流すと、別荘のベランダで神崎が静かにたたずむというイキなシーンだ。
神崎と角町の最後のシーンもいいんだし、最初から最後までこの雰囲気で押し通して欲しかったという気持ちが拭い去れない。
すごいカーアクションが用意されていても、僕には軽さを感じさせる作品としか映らないのだが、でも評価する人はいるというマニアックな作品だと思う。



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