おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

南から来た用心棒

2024-08-03 08:19:42 | 映画
「南から来た用心棒」 1966年 イタリア / フランス / スペイン


監督 ミケーレ・ルーポ
出演 ジュリアーノ・ジェンマ コリンヌ・マルシャン フェルナンド・サンチョ ロベルト・カマルディエル ロザルバ・ネリ ネロ・パッツァフィーニ
アンドレア・ボシック ピエトロ・トルディ ミルコ・エリス

ストーリー
“皆殺し団”の首領で、残虐きわまりない殺人盗賊ゴードンは、最近あいついで敢行した掠奪戦の際失った部下を補充しようと、国境に近い牢獄を襲撃し、囚人たちを連れ出した。
その囚人の中にはコルトさばきの滅法うまい男アリゾナ・コルトがいた。
南部生れの彼は一風変った性格の持主で、金のためならどんな危険な仕事でも平気でするという用心棒が稼業であった。
彼はゴードンの部下になることを拒否すると悠々と一人で去った。
そしてブラックストン・ヒルの町にやって来た。
町ではゴードンが右腕と頼むケイが銀行襲撃にそなえての偵察に余念がなかった。
だが彼は自分の素姓をサロンの老人の娘ドロレスに見破られてしまい、彼女を惨殺して姿をくらました。
ドロレス殺しの犯人がケイであると判明したのはゴードン一味の銀行襲撃のあった直後で、アリゾナはケイ殺しの役を買って出た。
謝礼金はわずかなものだったから、彼はドロレスの妹ジェーンを一夜の慰みに提供してくれるなら謝礼は数ドルでもかまわないと宣言し、彼女に承諾させると“皆殺し団”探しにとりかかった。
そして数々の危機を脱した末、遂にケイを倒したが重傷を負ってしまった。
ところが彼はゴードンの手下だが人の好い老人ダブル・ウィスキーの好意で町はずれの荒れた教会に隠れ治療することになった。
間もなく老人はゴードンが銀行から掠奪した金を横取りして来てアリゾナの前に出し、ゴードンの首と交換しようと言った。
アリゾナにとっては申し分のない金額であった。


寸評
イタリア製西部劇、通称マカロニ・ウエスタンの1本であるが、量産されたイタリア製西部劇の最大公約数的な作品である。
中には見るべき作品もあったが、ほとんどは本作のような内容なのでブームは5年くらいで終わった。
1964年に「荒野の用心棒」が大ヒットしてブームになったのだが、1969年に本家アメリカから「勇気ある追跡」、
「ワイルド・バンチ」、「明日に向かって撃て!」などが封切られたので、さすがにそれらの作品と比べると内容的に劣るマカロニ・ウエスタンは見放されたのだと思う。

「南から来た用心棒」の人公はマカロニ・ウエスタンにおける大スターであるジュリアーノ・ジェンマで、それなりの見どころを持った作品となっている。
西部劇の持つ風情や旅情といったものはなく、ひたすらアクションを追及しているのが、いかにもマカロニ・ウエスタンといった感じで、特徴がよく出ていてマカロニ・ウエスタンを語るのには適した作品だ。
始まってすぐに盗賊の集団が刑務所を襲い囚人たちを助け出す。
ダイナマイトによる爆破あり、派手な銃撃戦ありで、最初からエンジン全開と言う滑り出しだ。
ジュリアーノ・ジェンマが演じる主人公のアリゾナ・コルトは銃弾が近くに飛んできているのに平然としている不死身の男だ。
主人公は超スーパー・ヒーローなのだと教えるための登場シーンである。
彼は盗賊の一味でウィスキーとあだ名のある飲んだくれの男に助けられボスの所に行くのだが、ウィスキーはこのジャンルの映画によく登場するキャラクターである。
ボスの片腕となっているのがケイという男なのだが、とてもアリゾナの敵になることができないことも早々と描かれている。
そしてアリゾナが銀行襲撃の下見に現れたケイを見逃がしてやることで、ゴードン一味が銀行を襲い町で暴れまくることになる。
このあたりの描き方は大雑把なもので疑問が湧いてくる演出となっている。
ゴードン一味が暴れまくる様子はカメラワークなど気にしない物量作戦で描かれているのもマカロニ・ウエスタンらしいと言える。
ボスのゴードンもマカロニ・ウエスタンでは定番的なキャラクターで新鮮味はない。
マンネリともいえるが、マンネリこそがB級作品のB級作品たるゆえんでもある。

ゴードンはひどい男で、聞いていないのに返答したと言ってはその男を殺す。
酔っ払いで捕まっていただけなのにと愚痴をこぼした老人も射殺する。
頭に一発撃ち込んで止めを刺すというもので、残酷描写はマカロニ・ウエスタンの特徴でもある。
それを観客に楽しませるかのように必要以上の殺人がゴードンによってもたらされる。
銃撃戦も含めそれしかないような作品だが、それがマカロニ・ウエスタンなのだから、正にこれは雨後の筍の如く撮られた作品のお手本のような内容だ。
アリゾナは一味が奪った金は持ち主に返すと言っていたが、ゴードンにかけられた賞金25,000ドルを初め、仲間の賞金は一体どうなったのだろう。
アリゾナが取得したという雰囲気でもなかったしなあ・・・