「き」の第1弾は2019年4月3日からでした。
今日から第2弾です。
「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」 1962年 日本
監督 今井正
出演 ミヤコ蝶々 北林谷栄 浦辺粂子 飯田蝶子
原泉 村瀬幸子 岸輝子 東山千栄子
斎藤達雄 渡辺篤 織田政雄 殿山泰司
三木のり平 渡辺文雄 渥美清 小沢昭一
木村功 田村高広 伴淳三郎
ストーリー
秋の陽ざしも弱々しい浅草仲見世で、サト(ミヤコ蝶々)とくみ(北林谷栄)はすっかり意気投合。
くみは工員を八十人も使っている製靴工場の御隠居だそうだし、サトの方も息子夫婦(渡辺文雄、関千恵子)がポリエチレンの会社をやっていて、これまた全くの楽隠居だという。
それにしてはくみの服装が粗末だし、サトの顔にも生気がない。
サトたちは、街角で化粧品のセールスマン田口(木村功)と知り合う。
女房とのノロケ話に二人は過ぎし昔の結婚生活を思いうかべて涙ぐむ。
その頃、老人ホーム福寿園では、福田園長(田村高廣)や寮母の青木(市原悦子)たちが蒼くなっていた。
このホームのお婆さんがひとり、遺書まで残して失踪したからである。
松屋デパートのネオンが隅田川の水面に映りははじめた頃、二人のおばあちゃんは吾妻橋のまん中にしゃがみ込んでいた。
サトが、実は息子と嫁に邪魔にされて死場所を探しに家出たと打ち明ければ、くみも「私もそろそろ世の中においとましようと思ってたのさ」と、意外なことをロ走った。
老人ホームを飛び出したのは彼女なのだ。
川はドブ臭いからとあきらめ、都電では車輪が鉄で痛かろうと迷っていると、巡査(柳谷寛)につかまった。
サトは“鬼の夫婦”が住む都営住宅へ、くみは老人ホームへ戻されてしまう。
一夜明けて朝から嫁と口論をはじめたサトはテレビのつまみをひねるうち、福寿園の中継放送できのう別れたくみの大写しを見た。
その夜「わては友達のとこへ行くわ。もう厄介にならんでよろし」と、サトは啖呵をきって横になった・・・。
寸評
当時のベテラン俳優が総出演しているような作品である。
主人公のミヤコ蝶々、北林谷栄を初め、女優陣は東山千栄子、浦辺粂子、飯田蝶子、原泉、村瀬幸子、岸輝子などが顔をそろえる。
男優人は伴淳三郎、殿山泰司、上田吉二郎、渡辺篤、左卜全、中村是好、斎藤達雄、山本礼三郎などこれまたオンパレードである。
「喜劇 にっぽんのおばあちゃん」となっているが、作品タイトルは「日本のおばあちゃん」と表示されている。
喜劇となっているが笑えるところは少ない。
思わず苦笑いを浮かべてしまうシーンは所々に見受けられるが、喜劇と言うより悲喜劇と言った方がよい内容だ。
ミヤコ蝶々おばあちゃんも北林谷栄おばあちゃんも裕福な暮らしで今は楽隠居だとミエを張っているが、ミヤコ蝶々おばあちゃんは同居している息子夫婦に死んだ夫が残してくれた金を使い込まれたと恨んでおり、そのうえ二人から邪険に扱われていて、自殺しようと思って家を出ている。
北林谷栄おばあちゃんは老人ホーム暮らしで、ホームの仲間内で盗まれたどら焼きの犯人として疑われたために養老院を出て街をさすらっていたのだから、二人が語っていたことは彼女たちの夢物語なのだ。
老人ホームの住人達も自分はリッパだったのだとか、家族に恵まれているなどと見栄を張っている。
浦辺粂子おばあちゃんや東山千栄子おばあちゃんの様に上品なおばあちゃんもいて、育ちの良さをうかがわせるが彼女たちも演じているのかもしれない。
飲食店の寮にいる若い男の子に年寄りは臭いと言わせ、寮母の青木さんにさえ老人臭が嫌だと言わせているので、単純なおばあちゃん万歳映画とはなっていない。
かと言って世の中から見捨てられるだけの話でもない。
化粧品のセールスマンとは対等の会話をしているし、飲食店の明るい店員の十朱幸代は善良な若者の代表者の様に描かれている。
橋幸夫のレコードと引き換えに自腹を切って昼食を食べさせてあげる店員なんて今どきいないだろうが、もしかするとこの頃にはそんな奇特な人が居たのかもしれない。
映画はおばあちゃんたちが浅草界隈をうろついて語り合う会話や行為を切り取っていく。
タバコの使い方なども上手く撮れているし、さりげなく挟み込まれる街の様子のショットも小気味よい。
北林谷栄おばあちゃんもいいが、関西人の僕はミヤコ蝶々おばあちゃんが気に入った。
ミヤコ蝶々おばあちゃんは息子夫婦と狭いアパートで暮らしている。
裕福ではない息子夫婦はおばあちゃんの金を生活費に充てているらしい。
生活費の中にはテレビの購入も含まれている。
テレビをつけようとした子供に「おもちゃじゃない」よ叱る嫁を見ていたおばあちゃんは二人が留守の時にテレビをつけて捨て台詞を吐く。
最後になってタンカを切り始めたミヤコ蝶々おばあちゃんに拍手喝采の気分になれた。
嫁姑問題もあり、間で気をもみながら苦虫をかみつぶした渡辺文雄のストップモーションで終わるのも高齢者との同居問題を的確にとらえていたように思う。
年金を初め高齢者問題は時代が代わっても政治における永遠のテーマの一つなのかもしれない。
今日から第2弾です。
「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」 1962年 日本
監督 今井正
出演 ミヤコ蝶々 北林谷栄 浦辺粂子 飯田蝶子
原泉 村瀬幸子 岸輝子 東山千栄子
斎藤達雄 渡辺篤 織田政雄 殿山泰司
三木のり平 渡辺文雄 渥美清 小沢昭一
木村功 田村高広 伴淳三郎
ストーリー
秋の陽ざしも弱々しい浅草仲見世で、サト(ミヤコ蝶々)とくみ(北林谷栄)はすっかり意気投合。
くみは工員を八十人も使っている製靴工場の御隠居だそうだし、サトの方も息子夫婦(渡辺文雄、関千恵子)がポリエチレンの会社をやっていて、これまた全くの楽隠居だという。
それにしてはくみの服装が粗末だし、サトの顔にも生気がない。
サトたちは、街角で化粧品のセールスマン田口(木村功)と知り合う。
女房とのノロケ話に二人は過ぎし昔の結婚生活を思いうかべて涙ぐむ。
その頃、老人ホーム福寿園では、福田園長(田村高廣)や寮母の青木(市原悦子)たちが蒼くなっていた。
このホームのお婆さんがひとり、遺書まで残して失踪したからである。
松屋デパートのネオンが隅田川の水面に映りははじめた頃、二人のおばあちゃんは吾妻橋のまん中にしゃがみ込んでいた。
サトが、実は息子と嫁に邪魔にされて死場所を探しに家出たと打ち明ければ、くみも「私もそろそろ世の中においとましようと思ってたのさ」と、意外なことをロ走った。
老人ホームを飛び出したのは彼女なのだ。
川はドブ臭いからとあきらめ、都電では車輪が鉄で痛かろうと迷っていると、巡査(柳谷寛)につかまった。
サトは“鬼の夫婦”が住む都営住宅へ、くみは老人ホームへ戻されてしまう。
一夜明けて朝から嫁と口論をはじめたサトはテレビのつまみをひねるうち、福寿園の中継放送できのう別れたくみの大写しを見た。
その夜「わては友達のとこへ行くわ。もう厄介にならんでよろし」と、サトは啖呵をきって横になった・・・。
寸評
当時のベテラン俳優が総出演しているような作品である。
主人公のミヤコ蝶々、北林谷栄を初め、女優陣は東山千栄子、浦辺粂子、飯田蝶子、原泉、村瀬幸子、岸輝子などが顔をそろえる。
男優人は伴淳三郎、殿山泰司、上田吉二郎、渡辺篤、左卜全、中村是好、斎藤達雄、山本礼三郎などこれまたオンパレードである。
「喜劇 にっぽんのおばあちゃん」となっているが、作品タイトルは「日本のおばあちゃん」と表示されている。
喜劇となっているが笑えるところは少ない。
思わず苦笑いを浮かべてしまうシーンは所々に見受けられるが、喜劇と言うより悲喜劇と言った方がよい内容だ。
ミヤコ蝶々おばあちゃんも北林谷栄おばあちゃんも裕福な暮らしで今は楽隠居だとミエを張っているが、ミヤコ蝶々おばあちゃんは同居している息子夫婦に死んだ夫が残してくれた金を使い込まれたと恨んでおり、そのうえ二人から邪険に扱われていて、自殺しようと思って家を出ている。
北林谷栄おばあちゃんは老人ホーム暮らしで、ホームの仲間内で盗まれたどら焼きの犯人として疑われたために養老院を出て街をさすらっていたのだから、二人が語っていたことは彼女たちの夢物語なのだ。
老人ホームの住人達も自分はリッパだったのだとか、家族に恵まれているなどと見栄を張っている。
浦辺粂子おばあちゃんや東山千栄子おばあちゃんの様に上品なおばあちゃんもいて、育ちの良さをうかがわせるが彼女たちも演じているのかもしれない。
飲食店の寮にいる若い男の子に年寄りは臭いと言わせ、寮母の青木さんにさえ老人臭が嫌だと言わせているので、単純なおばあちゃん万歳映画とはなっていない。
かと言って世の中から見捨てられるだけの話でもない。
化粧品のセールスマンとは対等の会話をしているし、飲食店の明るい店員の十朱幸代は善良な若者の代表者の様に描かれている。
橋幸夫のレコードと引き換えに自腹を切って昼食を食べさせてあげる店員なんて今どきいないだろうが、もしかするとこの頃にはそんな奇特な人が居たのかもしれない。
映画はおばあちゃんたちが浅草界隈をうろついて語り合う会話や行為を切り取っていく。
タバコの使い方なども上手く撮れているし、さりげなく挟み込まれる街の様子のショットも小気味よい。
北林谷栄おばあちゃんもいいが、関西人の僕はミヤコ蝶々おばあちゃんが気に入った。
ミヤコ蝶々おばあちゃんは息子夫婦と狭いアパートで暮らしている。
裕福ではない息子夫婦はおばあちゃんの金を生活費に充てているらしい。
生活費の中にはテレビの購入も含まれている。
テレビをつけようとした子供に「おもちゃじゃない」よ叱る嫁を見ていたおばあちゃんは二人が留守の時にテレビをつけて捨て台詞を吐く。
最後になってタンカを切り始めたミヤコ蝶々おばあちゃんに拍手喝采の気分になれた。
嫁姑問題もあり、間で気をもみながら苦虫をかみつぶした渡辺文雄のストップモーションで終わるのも高齢者との同居問題を的確にとらえていたように思う。
年金を初め高齢者問題は時代が代わっても政治における永遠のテーマの一つなのかもしれない。
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