おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

次郎長三国志 第七部 初祝い清水港

2023-12-04 07:12:09 | 映画
「次郎長三国志 第七部 初祝い清水港」 1954年 日本


監督 マキノ雅弘
出演 小堀明男 河津清三郎 田崎潤 森健二 田中春男
   石井一雄 森繁久彌 小泉博 緒方燐作 山本廉
   長門裕之 広沢虎造 久慈あさみ 越路吹雪
   隅田恵子 澤村國太郎 堺左千夫 千葉信男

ストーリー
お蝶の百カ日法要が終わったら保下田の久六(千葉信男)を討つといきまく次郎長一家を恐れて、久六は行方をくらました。
明けて正月、大親分津向の文吉が島流しにあった時生れた喜代蔵少年(長門裕之)は、次郎長(小堀明男)に預けられ、子供乍らも丁半の修業に怠りない。
次郎長が若い頃の兄弟分佐太郎(堺左千夫)と女房お徳(隅田恵子)は、借金のため夜逃げして来たのを大政(河津清三郎)が発見して連れて行き、次郎長は恩返しに清水で料理屋を持たしてやった。
追分の三五郎(小泉博)は店に働く佐太郎の妹お町(紫千鶴)に心をひかれ、法印も女中おまん(木匠マユリ)に惚れて通いつめ、仙右衛門の恋人おきぬ(和田道子)もこの店に住込んでいた。
母親のない喜代蔵はお仲(久慈あさみ)を慕い、なぜ彼女が次郎長の女房にならぬかと言う。
お仲は動揺したが思切ってその決心もできない複雑な気持で、大政(河津清三郎)の恋女房ぬい(広瀬嘉子)をつれてくると告げて旅立った。
お仲は戻らなかったが、ぬいは武家屋敷を出て大政の許へ来た。
そして彼女の礼儀正しい三指式の言動が乾分達を面喰わせた。
お蝶の百カ日が来た。
次郎長一家は河豚の手料理で大酒盛。
追分の三五郎と喜代蔵は保下田の久六を討ちに秘かに清水を出たが、不審な旅人がちらほら清水へ向うのを見て再び引返した。
次郎長一家は河豚の中毒で動けない隙を久六一味に襲われた。
居合せた小松村の七五郎と女房お園(越路吹雪)を初め、ぬいや、旅から戻ったお仲と女達が大奮闘。
河豚の毒にあたって身動きできない次郎長一家の面々と思われたが、それは保下田の久六をおびき寄せる芝居だった。


寸評
毎回中身が違うエピソードが盛り込まれるシリーズだが、今回は母恋ものといった風である。
前作の最後に登場した長門裕之の島の喜代蔵と投げ節お仲の絡みが延々と描かれる。
島の喜代蔵は母親を亡くしていて母親への慕情が強い。
投げ節お仲を「姉ちゃん」と呼んでいるが、母親の面影を写し込んでいるのだろう。
実はこのお仲、次郎長への思いを秘めている。
喜代蔵とその仲間のわんぱくたちはお仲が次郎長と一緒になればいいと言っていたし、喜代蔵も「俺の父親は次郎長親分だが、お仲さんは俺のおっかさんではないじゃないか」と言っている。
つまり渡世の父親が次郎長なら、渡世の母親はそのおかみさんで、それはお仲さんだと言っているのである。
お仲は自分の心の内をズバリと指摘され、そうすることが出来ない辛さに涙を流す。
いい場面だが、お仲と 喜代蔵のやり取りが必要以上で食傷気味になってしまったのは残念だ。

お蝶の百ケ日法要が終わるまで喪に服して大人しくして居ようとした次郎長一家だが、それなら正月のお祝い事も喪に服して行わないのがしきたりではないのかと思うのだがどうなのだろう?
町の人は次郎長一家の仇討を期待しているが、一家の連中はなかなか神輿を上げない。
仇討ちと言えば赤穂浪士なので、忠臣蔵を意識した演出が随所にみられる。
前作でのおかる勘平の引き合いもそうだし、今回の町民の期待に反して仇討ちをせず意気地なしだと思われているとか、馬鹿を装っているのは山崎における大石の放蕩になぞらえていると思われる。

そして前作までに登場した女たちが参集してくる。
沼津の住太郎と妻のお徳は立派な料理屋を次郎長に開業してもらう。
大政の妻のおぬいも投げ節しお仲の計らいで清水港にやって来て次郎長一家に入り込む。
ぬいは武家の妻らしい振る舞いと言葉使いで周囲を戸惑わせるのが面白い。
増川仙右衛門は行く末をちぎり合ったおきぬを迎えに行って帰ってくる。
最後には保下田の久六を打つために投げ節お仲もやって来るし、小松村七五郎の連れ合いのお園も槍を持って駆けつけている。
保下田の久六一家の出入りの時には佐太郎の妹お町や女中のおまんも加勢している。
男に負けず活躍する女性陣である。

保下田の久六一家の子分たちは姿を代えて清水港に入り込んできて、佐太郎、お徳の店の二階に集合するのだが、この料理屋の二階はどれだけ広いんだと言いたくなるような人数である。
それだけの人数との出入りだから、さぞやものすごい立ち回りがあると思っていたら案外とさっぱりしたものだ。
いつもそうなのだが、憎っくき相手をついに仕留めたという演出は行われない。
河豚になぞらえた保下田の久六を料理するための大きなまな板が運ばれてきて仇討の成功を暗示している。
本格的時代劇の重さのない軽妙なシリーズである。
しかし、若者たちがはしゃぎまわっているという雰囲気は徐々になくなってきているように感じる。


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