おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

薄氷の殺人

2020-01-05 11:17:52 | 映画
「薄氷の殺人」 2014年 中国 / 香港

監督 ディアオ・イーナン
出演 リャオ・ファン グイ・ルンメイ ワン・シュエビン
   ワン・ジンチュン ユー・アイレイ

ストーリー
1999年、夏。中国の華北地方で、ひとりの男のバラバラにされた遺体が6都市15ヶ所の石炭工場で相次いで見つかった。
この猟奇的な殺人事件の捜査に当たるのは、妻との離婚問題に頭を痛めるジャン刑事(リャオ・ファン)。
やがてトラック運転手のリウ兄弟が容疑者に浮上するが、兄弟は逮捕時に抵抗し射殺され、真相はわからずじまいになってしまう。
ジャンは真相を解明できぬままやがて警察を辞すことに。
それから5年後の2004年、冬。かつての同僚から5年前と同様のバラバラ殺人が2件発生したことを聞きつけたジャン。
どちらの被害者も、5年前の被害者の若き未亡人ウー・ジージェン(グイ・ルンメイ)と関係を持っていたという。
警備員となっていたジャンも独自に調査を開始し、疑惑の女ウーに近づいていくジャンだったが…。


寸評
中国作品のせいだろうか、ちょっと変わったノワール映画だ。
何よりも映し出される映像というか景色というか舞台設定というべきなのかもしれないが、雪のトンネル、スケート場、観覧車などが登場する街の様子が雰囲気を出している。
特に夜の街は異国情緒たっぷりで、発展する前の街の様子が感じられて、僕にとってはあまり見ることのない映像で新鮮味があった。
あたりが真っ暗な中、街頭の明かりだけの天然のスケートリンクと、男がそこにつながる道路をスケート靴で滑りながら去っていく場面などは異次元の世界に思えた。
中国の田舎町ってこんな感じなのかなと、時代遅れな景色が日本人の僕に関心を引き止め続ける。
始まりは1999年の夏で、話が2004年になると一転して凍てつくような冬景色となる。
この季節の変化による映像の切り替えは意図したものだろうし、それが無意識に我々の心をつかみ取る。
この寒々とした冬の映像は、ジャンとウーの心象を投影しているかのようだ。
現実と夢の中を行き来するような妖しい映像を初め、全体的にセリフに頼らず映像で様々なことを表現している。

事件を追ううちにジャンがウーにのめり込んでいくというのは、この手の映画でよくある展開だが、ちょっと違う雰囲気がある。
ジャンは1999年に妻と別れているのだが、その別れ方がその後のジャンを上手く表現していた。
女にだらしなく、すさんだ生活を送っているジャンを予見させる別れ方だった。
話が進んでいくと「え~、そういうことだったの」になるのだが、韓国映画あたりだともっと面白く撮っただろうなと思う。
両者が交錯し、ラストに向かっていく盛り上がりがもう少し欲しかった。
ジャンが姿を見せないエンディングは、二人のそれぞれの心情を表現して、派手な割には余韻の残る幕切れだったと思う。


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