おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ベンジャミン・バトン 数奇な人生

2023-03-10 07:30:44 | 映画
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 2008年


監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ブラッド・ピット ケイト・ブランシェット
   ティルダ・スウィントン ジェイソン・フレミング
   イライアス・コティーズ ジュリア・オーモンド
   エル・ファニング タラジ・P・ヘンソン

ストーリー
ニューオリンズの病院で、老女デイジーは最期を迎え、娘キャロラインに日記帳を読み聞かせるよう求める。
その日記帳はベンジャミン・バトンの物であり、物語はここから始まる。
場所はニューオリンズ、1918年、第一次世界大戦が終わった日。
生まれたばかりの赤ん坊が老人施設の前に捨てられていて、経営者のバトン夫婦が赤ん坊に気づいた。
赤ん坊の顔は、なんと老人のような顔だった。
バトン夫婦には子供がなく、クイニーは夫の反対を押し切って育てることを決意する。
医者はこの赤ん坊は老衰寸前のような状態で長く生きていけないだろうと言った。
赤ん坊はベンジャミンと名づけられて、なんとか施設の中で育っていった。
年を追うごとに若い容姿になり、杖を使って歩けるようになった。
その頃、施設入居者の孫・デイジーと出合い、ベンジャミンは自分は老人ではなく本当は子供だと話す。
施設の者はベンジャミンを老人だと思っていた。
1936年、ベンジャミンは17歳になっていて、身体も段々若くなってきた。
世界を知りたいと船員になることを決め、デイジーには、どこに行っても手紙を出すことを約束した。
デイジーはバレエ学校に入学してバレエダンサーの夢を追いかけていた。
ベンジャミンは船では老人だと思われていた。
そんな時に一人の婦人と出会い、二人の間に愛が生まれて逢引きするようになった。
しかし、そんな関係は長く続かず、婦人は離れていき、恋は終わりを告げる。
1945年、ベンジャミンは26歳になった。
再会したデイジーは都会的な雰囲気を漂わせ、二人の気持ちはすれ違い離れていった。
数年が過ぎ、デイジーがパリで事故に遭い、バレエダンサーの仕事は続けられなくなった。


寸評
80歳の赤ん坊として生まれ、年を経るほどに若返っていくという通常の反対の加齢を重ねる男に起きる出来事を描いたファンタジックな作品で、その着想が面白い。
容姿と年齢のギャップの中でベンジャミンは生きていくが、時折ユーモアを交えて語られるそれぞれの年代で起きる出来事のつなぎをもう少しコンパクトにまとめてくれていればと言うのが僕の印象である。
死期の迫った施設の老人たちに囲まれて育つ幼少時代から自らも含めた死を意識し、また間近に見てきたことがベンジャミンに自らの運命を受け入れて逆らわずに生きていくことを可能にしたのだろう。
成長の流れが逆となれば恋愛だって難しいのは想像に難くない。
ベンジャミンは恋する女性と少女時代に出会い、やがて老女と少年という関係へと向かっていく。
二人の年齢がピタリと合うのはほんのわずかな期間しかないというのが、恋愛映画の観点から見た場合いちばんの見せどころだったと思う。
僕には、前後のエピソードが長すぎてそこの部分を弱めていたように思えた。
当然ながら映画のメインは若返っていくベンジャミンと、その人生を重ねていくデイジーなのだが、印象的なのはベンジャミンを取り巻く人たちの存在である。

先ず登場するのがベンジャミン誕生前に登場するニューオーリンズの時計職人ガトーだ。
ガトーは駅の大時計の製作を任されるが、息子が第1次世界大戦に召集されて戦死した悲しみのため逆に回る時計を製作し、記念式典で時間を逆に進められれば死んだ者たちも戻ってこれると演説する。
親の悲痛な思いと反戦の叫びで、描かれるガトーの生き様とメッセージが感動的なのだが、それは物語のモノローグとしてのエピソードでもある。
一番印象に残るのは 捨てられたベンジャミンを拾って育てる老人施設の看護師クイニーだ。
クイニ―は老人の顔をした捨て子の赤ん坊を見ても、医師から長生きできないと言われても自分で育てると言う。
その後クイニ―に自分の子どもができてもベンジャミンを遠ざけることはない。
ベンジャミンの父が大金持ちだとわかっても財産に関心を示さない。
このベンジャミンの育ての親であるクイニ―の姿は感動を呼ぶ。
クイニ―が聖人とすれば悪役になるのがベンジャミンの父となるトーマス・バトンである。
自分の妻が難産の末に産んだ赤ん坊が老人の顔をしているのを見て、瀕死の妻を捨て起き赤ん坊を抱えて街に走り出し老人施設の前に置き去りにするとんでもない男だ。
ファンタジー映画として悪人を登場させたくないのか、ベンジャミンを捨てたトーマスはベンジャミンのその後を見守り、自らの余命を知るとベンジャミンにすべての財産を相続させて、すっかり善人となっている。
彼の後悔の度合いを感じ取ることはできないが、妻を亡くし孤独に生きてきた老人は捨てた子供に余生の意義を見い出したくなるのかもしれない。
デイジーが交通事故にあう事を見ると、予期せぬ出来事は偶然の産物が積み重なって引きおこる必然なのかもしれない。
何が起きるか分からないのが人生で、その観点から施設の老人が7回も落雷にあった話はベンジャミンと直接関係ないけれど、なぜか残像として脳裏に残り、船長や恋に落ちる夫人よりもあの老人が印象深い。
精神と肉体が反比例していく戸惑いが、エピソードにおいて時々置き忘れていたように思われたのが残念。


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