おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

パットン大戦車軍団

2020-01-19 13:37:21 | 映画
「パットン大戦車軍団」 1970年 アメリカ


監督 フランクリン・J・シャフナー
出演 ジョージ・C・スコット
   カール・マルデン
   マイケル・ストロング
   カール・ミヒャエル・フォーグラー
   スティーヴン・ヤング
   フランク・ラティモア
   エド・ビンズ

ストーリー
1943年、アフリカ戦線。
初陣のアメリカ第2機甲兵団は、ドイツのロンメル将軍の指揮する戦車軍団によって苦戦を強いられていた。
そこへパットン将軍が着任し、兵団たて直しのためブラッドリー少将を副官に任じ、厳しい再訓練を開始。
そして、エルゲッターの戦闘で、彼の軍団はロンメルの機甲兵団をみごと粉砕した。
アフリカ方面の戦闘が終局を告げると、パットンはシチリア島侵攻の、第2兵団司令官となった。
この侵攻作戦をめぐり、速攻派のパットンと慎重派のモントゴメリーは対立したが、パットンは作戦を強行、パレルモを奪取した。
パットンはイタリア侵攻でイギリスのモントゴメリーと先陣争いを繰り広げることになる。
傷病兵には思いやりを見せるパットンだが臆病者には容赦ない言葉を浴びせる。
戦争ノイローゼの兵隊を殴ったことから、兵団司令官の任をはずされた彼は、欧州上陸作戦最高司令官の重任も、ブラッドリーにさらわれてしまった。
やがてノルマンディ上陸作戦が成功。
作戦に参加できなかったことを悔やむパットンに、名誉回復の日が到来した。
ブラッドリーが、第3兵団司令官として、彼をノルマンディに呼びよせたのである。
勇躍したパットンは、電撃的にドイツ軍を撃破、さらに有名なバルジの戦闘で、戦史に残る功績をあげた。
やがてドイツは降伏。
しかし、ソ連ぎらいのパットンは、そのためまたも物議をかもし出し、ついに失意のうちに軍隊を去る。


寸評
画面を圧倒する星条旗が映し出されパットンが登場してくる。
パットンの姿からしてこの星条旗の大きさが分かろうと言うものである。
スクリーンいっぱいの星条旗を背に、パットンは兵士たちに檄を飛ばすが聞き入る兵士の姿は映し出されない。
さながら個人演説会のようだが、この演説の中身がスゴイ。
全文は記憶にないが、要約すれば次のようなものである。
「アメリカ人は闘争を愛している。全てのアメリカ人は、戦いの痛みやぶつかり合いを愛している。アメリカ人は勝者を愛し、敗者を認めない。アメリカ人は、常に勝つためにプレイする。これこそ、アメリカがこれまでも、そしてこれからも負けを知らぬ理由だ。戦いとは、男が熱中できる最も重要な競技と言える。戦いは素晴らしいものすべてを発揮させ、それ以外のすべてを消し去るのだ。死守するなどと言うことを考えるな。前進あるのみでドイツ兵をやっつけろ!」
すさまじい演説だが、これは今もって続くアメリカの本音を代弁しているような気がする。
僕はこの映画を阪急電車のターミナル駅の下にあり、静かな場面では電車の走る音が聞こえた阪急プラザ劇場で見たのだが、当時のアメリカはベトナム戦争にあえいでいた。
これはもしかしたらアメリカ政府によるプロパガンダ映画ではないかと思わせる冒頭の演説である。
しかし、このような人物が強いアメリカを象徴しているとすれば、暗に反戦の意をこめているようにも思える。
オープニングが象徴するように、この映画はパットンを演じるジョージ・C・スコットの独り舞台の作品だ。
根っからの戦争好きともいえるパットンの多面的な人間性を見事に演じてアカデミー賞主演男優賞に選ばれながら受賞を拒否した。
見るからにタカ派的であるが、その行動を見ると彼自身はリベラルだったのかもしれない。

アフリカ戦線のチェニジアでドイツ軍に大敗を喫した米軍は戦車戦にたけているパットンを派遣する。
弛み切った軍の規律を正していき、やがてロンメルの戦車部隊に大勝するが、戦場にロンメルはいなかった。
がっかりするパットンだが、新任の部下におだてられ気分を良くする。
パットンは功名心にはやる男なのだが、同時にローマ帝国時代の戦争を夢見るロマンチストでもある。
しかし、時代はパットンとロンメルの一騎打ちなどと言う戦いを許さない。
犠牲になるのは名もない兵士たちである。
戦場で神経をやられた兵士を臆病者として平手打ちをくらわしたことでパットンは司令官を解任される。
しかしどうやらこれもアイゼンハワーによる作戦だったようで、パットンは自分の名誉の為の戦いを続け、犠牲をいとわないがその非情さは勝利を呼ぶ。
名誉欲にとらわれているのはパットンだけではない。
英軍のモントゴメリーも同様で、二人は先陣争いを繰り広げる。
連合国の一員であるソ連を無視したことで政治的配慮からパットンは軍隊を去るが、パットンは米ソ冷戦を予想していたのだろう。
ローマ帝国の戦史に精通し憧れるパットンだが、時代は彼の様な男を必要としなくなっていた。
軍人は戦争をしたがるし、軍需産業は危機感を生み出して巨利を得ようとしている。
戦争好きの存在は困ったものだ。
僕はジョージ・パットンを知らないが、パットン=ジョージ・C・スコットと思わせる快演がすべてという作品だ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿