おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

フルメタル・ジャケット

2021-11-08 07:50:16 | 映画
「フルメタル・ジャケット」 1987年 アメリカ


監督 スタンリー・キューブリック
出演 マシュー・モディーン
   アダム・ボールドウィン
   ヴィンセント・ドノフリオ
   R・リー・アーメイ
   ドリアン・ヘアウッド
   アーリス・ハワード

ストーリー
南カロライナ州の合衆国海兵隊新兵訓練基地。
ベトナム戦争のさなかの今日も、これから8週間の地獄の特訓を受ける新兵たちが入隊してきた。
ジョーカー、パイル、カウボーイといった面々だ。
彼らは早速頭を丸刈りにされ、鬼のような訓練教官ハートマンから厳しい訓示を受ける。
実際訓練は苛酷で厳しいもので、しかもハートマンは容赦なく彼らをシゴく。
特に何をやらせてもノロマで不器用なデブのパイルはシゴきの対象とされ、あげくはパイルのミスのとばっちりが他の訓練兵に及び、仲間からもリンチにあう。
そんなパイルをジョーカーはかばうのだが、パイルは徐々に精神に異常をきたし、目つきも変わってくる。
遂に卒業前夜にトイレで狂気が爆発、ハートマンを撃ち殺し、自らも銃をくわえて絶命する。
時が過ぎ、新兵たちも一人前の海兵隊員としてそれぞれの部隊に配属されていた。
ベトナム戦線も終盤に近づいた1968年1月、ジョーカーはダナン基地において報道隊員として比較的のんびりとした生活を送っていた。
だが北ベトナム軍の激烈なテト(旧正月)攻撃が始まり、ジョーカーは純真なカメラマンのラフターマンとともに最前線のフエ市へ向かう。
そこではタッチダウン軍曹の指揮のもと、自らを殺人機械として自負するアニマル・マザーや黒人のエイトボール、クレイジー・アールといった兵隊たちが集まっていた。
そこでジョーカーはカウボーイと感動の再会をしたのだが・・・。


寸評
映画は2部構成となっており、前半はベトナム戦争に送り出される海兵隊の新兵達の訓練風景を描いている。
鍛え上げるのはハートマン軍曹という鬼教官なのだが、圧倒されるのは彼が発する言葉である。
罵詈雑言をこれでもかと浴びせるのである。
「俺の訓練に生き残れたら各人が兵器になる。それまではウジ虫だ!地球上で最下等の生命体だ。貴様らは人間ではない。両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!」などと叫びまくる。
また「パパの精液がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがお前たちだ!」などの下ネタ満載の言葉も浴びせ続ける。
訓練は過酷で、デブと名付けられたパイルはドジなところがあり、連帯責任をとらされる原因を作る落ちこぼれのため仲間からも制裁を受け、徐々に狂っていく。
その変貌ぶりは気味が悪いくらいで、流石は俳優と思わせる目つきがスゴイ。
しかし、デブのような足手まといの兵士がいると、部隊の仲間全員の命が危険にさらされることも想像できるから、海兵隊の訓練は描かれた通りなのかもしれない。
そんな彼らも訓練を終えて戦場へ向かうのだが、そこでのハートマン軍曹の激励の言葉もすごい。
「本日をもって貴様らはウジ虫を卒業する。本日から貴様らは海兵隊員である。兄弟の絆で結ばれる。多くはベトナムへ向かう。ある者は二度と戻らない。海兵は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが海兵は永遠である。つまり、貴様らも永遠である!」
そう叫んだハートマン軍曹は狂人と化したデブによって射殺される。
映画はここで終わってもよかったぐらいに強烈な前半である。

後半はいよいよ戦地のベトナムが描かれる。
特にジョーカーが訓練所時代の同期だったカウボーイと再会してから緊迫感がグングン増していく。
部隊は進軍していくが、敵のベトコン兵はどこにいるかわからない。
突如、銃弾や爆弾が飛んできて倒れる者が出てくる。
描かれるのは戦争映画のように一発の爆弾で何人もが吹っ飛ぶようなアクションシーンではない。
一人、また一人と倒れていく。それも苦しみながらである。
カウボーイは残兵をまとめて指揮する立場になるが、様子を見るために先に進んだ部下が廃墟に潜んでいた敵の狙撃兵に銃撃され負傷してしまう。
狙撃兵はその負傷兵を助けに来る仲間を狙い撃ちするべく待ち構えている。
たまらなくなって一人の兵士が助けに飛び出していくが、相手の思惑通りその兵士も撃たれる。
相手の姿が見えないだけに、戦場に漂う緊張感がこちらにまで伝わって来て、思わず息をひそめてしまう。
カウボーイが狙撃されるシーンも臨場感があふれ出て圧巻である。
ジョーカーや生き残りの兵士は「お礼参りに行こうぜ」と狙撃兵への報復を決意する。
狙撃兵を仕留めるが、それはベトコンの少女で、射殺を懇願する少女をジョーカーが撃つ。
ミッキーマウスのテーマソングに乗って進軍するジョーカーたちは、人を殺すことを何とも思わない兵士になってしまっていたということなのだろう。
「フルメタル・ジャケット」はベトナム戦争を描いた名作の1本だと思う。


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