おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

スパルタカス

2022-09-29 07:55:05 | 映画
「スパルタカス」 1960年 アメリカ


監督 スタンリー・キューブリック
出演 カーク・ダグラス ローレンス・オリヴィエ
   チャールズ・ロートン ジーン・シモンズ
   ピーター・ユスティノフ トニー・カーティス
   ジョン・ギャヴィン ウディ・ストロード
   ジョアンナ・バーンズ

ストーリー
紀元前1世紀、ローマ共和国が隆盛を誇っていた頃。
奴隷のスパルタカス(カーク・ダグラス)はバタイアタス(ピーター・ユスチノフ)の剣闘士養成所に売られた。
彼はそこで女奴隷バリニア(ジーン・シモンズ)を知った。
ローマの名将クラッスス(ローレンス・オリヴィエ)がバタイアスを訪ねた。
バタイアスは余興にスパルタカスと親友の黒人奴隷ドラバとの真剣勝負を命じた。
ドラバは試合に勝ったが、スパルタカスを殺さずクラッススに襲いかかり殺された。
クラッススはバリニアを買い本国に送れと命じた。
スパルタカスは同僚クリクサスと共謀して反乱を起した。
首領スパルタカスと奴隷の集団は、つぎつぎに貴族の所領を襲い奴隷を解放し、ベスビアスの山腹に大奴隷軍の本拠をかまえた。
ローマの政界ではクラッススとグラッカス(チャールズ・ロートン)が主動権を争っていた。


寸評
スパルタカスの反乱は古代ローマ史の中でも記される出来事のようで、その出来事は小説の題材として歴史的ロマンも有していたのだろう。
「ローマ人の物語」というローマ帝国史とも言える歴史絵巻を記された塩野七生さんも「勝者の混迷」の巻でこの事件に触れられており、この映画にも言及されている。
スパルタカスの反乱が奴隷の反乱であったことは事実のようなのだが、スパルタカスがトラキアの王子という伝説は出来すぎとしても、並立する部族の長の息子ぐらいであったかもしれないと女史は推測されている。
もちろん映画であるからその構成上、彼を奴隷の剣闘士としてドラマティックにしていることは理解できる。
この時代のヒーローであるカエサルを登場させたのも同様の理由だろう。
当時カエサルはまだ若く元老院の議席は与えられていなかった筈だ。
さらにクラッススの政敵であるグラックスも同様で、一族は絶えていたはずだがグラックス兄弟は歴史にその名を残しているので登場となったのだろう。
史実のスパルタカスはアルプスを越えて故郷のトラキアに迎えたはずなのに、なぜか反転してシチリアを目指し、内部分裂もあり最後にはクラッススの率いるローマの大軍団に敗れ去ったようだ。
その後のローマは、映画でも描かれれていた援軍に駆けつけたポンペイウスの時代となり、やがてカエサルの登場となる。 いやいや、これは歴史の話で映画の話ではない。

さて映画だが、人間の自由と尊厳の死守の訴えは時代を超えて響くものがある。
映像的にもCGがない時代にありながら膨れ上がる反乱軍や、ローマ軍の威容などが巧みに処理されていた。
背景が絵画であることはすぐにわかるのだが、その前に組まれたセットの大きさと、融合させるカメラワークに感心させられた。
もちろん群衆、軍団はCGがないので総てエキストラであることが想像できる。
その映画的努力に敬服してしまう作品だ。
その敬服には監督がスタンリー・キューブリック であることも寄与しているとは思うのだが、流石に彼の作品だけあって手抜きはない。
スパルタカスのカーク・ダグラスは主演者として当然なのだが、敵役として描かれることになったクラッススを演じたローレンス・オリヴィエは流石の貫禄だった。
顔立ちそのものに風格があった。

捕虜となった6000名の奴隷は本当にアッピア街道で十字架にかけられて晒されたようで、古代の残忍性を思い知らされた。
剣闘士の試合で生き残った者は磔刑になるというので、そちらを選んだ方が「楽に殺してやるから剣を下ろせ」という場面などは、その処刑の過酷さを物語っていた。
飽きさせることのない歴史スペクタクル映画で、3時間以上もある長編だが十二分に堪能できる。
懐かしさを呼び起こされる映写ではあるが、かつてはこのような映画作りをやっていたんだと感じ取れる作品で、郷愁をそそられる作品でもあった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿