おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

夕陽のギャングたち

2023-05-12 07:09:35 | 映画
「夕陽のギャングたち」 1971年 イタリア


監督 セルジオ・レオーネ
出演 ロッド・スタイガー ジェームズ・コバーン
   ロモロ・ヴァリ マリア・モンティ リク・バッタリア
   デヴィッド・ウォーベック アントワーヌ・セント・ジョン
   
ストーリー
革命の動乱が続く1913年のメキシコ。
陽気で人の好い山賊の首領ファン・ミランダは、サン・フェリペに通じる街道で駅馬車を襲った後、オートバイで通り合わせたアイルランド人ジョン・マロリーを捕えた。
彼は、アイルランド共和国の脱走兵でやたらダイナマイトを振り廻すところから、イギリス政府のおたずね者になっていた。
メサ・ベルデの銀行を襲撃しようとしているファンは、彼と組んでメサ・ベルデ行の列車に乗り込んだ。
途中、ファンは警察に見つかり逮捕されそうになったところを、謎の人物、外科医のビレガ博士(ロモロ・ヴァリ)によって助けられた。
メサ・ベルデに着いてみると、銀行は軍隊によって警護されていたが、計画を敢行し襲ってみると、中には政治犯が監禁されていた。
ファンは革命軍の英雄として祭り上げられたものの、冷酷なルイス大佐率いる政府軍によって追われる身となってしまった。
やがてルイス大佐の手によって政治犯のビレガ博士が捕えられ、激しい拷問の結果、何千という革命の指導者たちが死ぬことになった。
一方、山の隠れ家に戻ったファンが目撃したものは、老いた父ニーノ、そして可愛い六人の息子がグチエレスによって虐殺されている姿だった。
怒りに燃え復讐を決心したファンは、待ち伏せていたルイス大佐に捕えられたが、ジョンに救出された。
アメリカへ行こうと決めた二人は列車に飛び乗ったが、その列車が革命軍に攻撃された時、ファンは逃亡中の総督ドン・ハメイを殺し、またまた革命軍の英雄に祭り上げられてしまった。


寸評
一応マカロニ・ウェスタンとなっているが、メキシコ革命を背景にすると西部劇の雰囲気はない。
主人公はロッド・スタイガーとジェームズ・コバーンなのだが、二人が出会うまで30分くらいかかる。
冒頭はファン一家が豪華な駅馬車を襲うシーンから始まるのだが、襲撃が完了するまでも長い。
馬車には上流階級らしい連中が乗っていて、彼らはメキシコ人やら農民を散々馬鹿にする。
見ていてもムカムカしてくるくらいの悪口雑言である。
それが上流階級と山賊一家のそれぞれの立場が一瞬にして逆転してしまうのだが、そこでファンを首領とするこの一団の運命が暗示される。
山賊たちは乗客を殺しはしないが身ぐるみを剥いでしまう。
ファンは冒頭の影でも見られるような絶倫男で、乗り合わせた嫌味な女を犯して「気絶しそう」と言わせる。
そしてジョンのジェームズ・コバーンがバイクに乗って登場するのだが、ここまでが長い。
全体を通じて一つのシーンがやたらと長い時間をかけて撮られているので、上映時間は2時間半以上に及ぶ。
この内容でそれだけの尺を持っているので間延び感があり乗り切れないものがある。

革命の物語のようでそうではなく、イデオロギーも学もなく、ただ家族こそが自分の国家だと考える男の物語なのだが、彼の家族への思いが別れる時に子供たちにかける言葉だけなのが弱い。
したがって家族を殺されたファンの悲しみと怒りが余り伝わってこない。
それなのにこのシーンがやたらと長い。
全体がそうなので意図したものだと思うがテンポを失くしている。
原題は「頭を伏せろ」という意味で、ジョンがダイナマイトを使うときに言うセリフとなっている。
うがった見方をすれば、正義であるはずの革命に目を伏せろと言っているようでもある。
ファンは言う。
「文字を読めるやつが革命を叫び、文字を読めないやつが闘って死んでいく」。
また自分の命惜しさに仲間を密告してしまう革命戦士もいる。
革命の為に実働部隊である下層階級が味わう悲哀とも言えるが、それを声高に叫んでいる風ではない。
最下層の一員だったファンは将軍になったのだろうか。

劇中、ジョンのアイルランド時代の過去がフラッシュバックによって時々描かれる。
台詞は一切なく、エンニオ・モリコーネの音楽だけが流れるのだが、楽しかったと思われるアイルランド時代の悲劇が最後になって描かれる。
ジョンが裏切り者の指導者に向けて言った「人を裁くのは一度だけでいい」という言葉が生きてくる。
ジョンはアイルランドの革命に身を投じてイギリスから手配されながら、今またメキシコ革命に身を投じている背景が読み取れるのだが、しかしそれも徹底的に描くことはしていない。
だからマカロニ・ウェスタンなのかもしれない。
映画が始まる前に、「革命とは贅沢な食事でも言葉の遊びでもない、刺繍の模様でもない、優雅さと丁寧さをもってなされるものでもない、革命とは暴力行為なのだ」という毛沢東の言葉が表示される。
僕は毛沢東は権力欲に執着したとんでもない男だったと思っている。


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