おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

マネーボール

2020-04-14 09:38:28 | 映画
「マネーボール」 2011年 アメリカ


監督 ベネット・ミラー
出演 ブラッド・ピット
   ジョナ・ヒル
   フィリップ・シーモア・ホフマン
   ロビン・ライト
   クリス・プラット
   ケリス・ドーシー
   スティーヴン・ビショップ

ストーリー
高校時代は花形選手だったものの、プロでは大成することなく引退し、球団のフロントに転身するという珍しいキャリアを持つビリー・ビーン。
風変わりで短気なその性格は、若くしてアスレチックスのゼネラルマネージャーになってからも変わらなかった。
自分のチームの試合も観なければ、腹が立つと人や物に当り散らすという、癖のあるマネジメントを強行。
そんな変わりダネが経営するアスレチックスは弱かった。
しかも、貧乏球団のため、優秀で年俸の高い選手は雇えない。
チームの低迷は永遠かと思われ、ワールド・チャンピオンの夢はほど遠かった。
だが、野球経験はないものの、データ分析が得意なピーター・ブランドという球界の異分子と出会ったことで、風向きが変わり始める。
ビリーは後に“マネーボール理論”と呼ばれる“低予算でいかに強いチームを作り上げるか”という独自の理論を実践。
だがそれは同時に、野球界の伝統を重んじる古株のスカウトマンだけでなく、選手やアート・ハウ監督らの反発を生み、チーム状況が悪化。
それでも強引に独自のマネジメントを進めてゆく。
その揺るぎない信念は、徐々にチームに勝利をもたらし、誰も想像しなかった奇跡が……。
球界はビリーの手腕を認め、周囲からの信頼も次第に回復し、そしてある日とんでもないオファーがレッド・ソックスから飛び込んでくる。
しかし、そこで重大なことに気づいたビリーは、意外な行動に出る……。


寸評
実話を基にしているとはいえ、このようなベースボール映画を生み出すアメリカ映画の奥深さを感じさせる。
と同時にこのようなGMが存在しているメジャー・リーグの懐の深さも感じさせる。
日本でも「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という書物がヒットしたが、どちらもドラッカーの経営学を無理やり当てはめたれっきとした野球論がベースになっている。

日本映画でも野球を題材にした映画は存在しているが、その臨場感においてはとてもアメリカ映画の足元に及ばないものがあり、この作品でも実写フィルムを交えながら球場の臨場感を高めていく。
ベースは選手やペナントレース争いではなく、フロントの話なので試合場面は多くはない。
それでも登場する選手はまるで本物のメジャーリーガーのように見える。
主人公のビリー・ビーンが、高校時代にその才能を評価されながらも大成しなかった元大リーガーなので、体もそれらしくたくましい。
その為か、配置される選手の体はブラッド・ピットに比べると小ぶりな役者が配置されていて、実戦を見ることのない彼がロッカールームで行うトレーニングの方が迫力がある。
選手にトレードを言い渡したり、クビを宣告するシーンや、監督とのやり取りにGMの辛さがにじみ出ていて、内幕物の面白さも出ていた。

見るからに運動はダメそうなオタク然としてはいるが、超一流大卒で斬新なデータ分析を行っていた青年ピーター(ジョナ・ヒル)の風貌と態度が映画をサポートしている。
ピーターは打率や本塁打ではなく出塁率を重視する野球を提唱し、打率は低くても四球の多い選手を評価したりするのだが、GMのビリー・ビーンもその提案を支持し、盗塁はしない、送りバントはしない、逆に送りバントをされたら1塁で確実にアウトを取るといった野球を推し進めていく。
監督はそれが理解できず従来の選手を使い続けるが、GMの権限でそれらの選手をトレードに出してしまう。
監督とGMの権限が明確に描かれていて、越権行為は断じて取らない様子を面白く見ることができる。
四球での出塁を期待された代打がサヨナラホームランを打ったりする野球のロマンも描いていてスカッとする。
それでも、ピーターの分析がチームの勝利に反映されていく過程であるとか、優勝決定戦の大事な試合の迫力とかをもう少し描いても良かったのではという思いは残る。
どうしても手に汗握る試合のシーンを期待してしまうのだ。
前半戦で全然だめだったチームが20連勝などという大リーグ記録を打ち立てながら最下位から首位へと勝ち上がっていくのだが、そのあたりの経過が案外とあっさり描かれて肩透かし感がある。

2年後に彼等の理論を実践してレッド・ソックスがワールドシーリーズを制したことがテロップで流れ余韻を持たせるのだが、それよりもビリー・ビーンの幼い娘が歌う歌詞が胸を打つ。
変化をもたらすものは叩かれるが、それでも改革がなければ発展もないのだ。
この映画は、変化を恐れず新理論にすべてを委ねたおかげで旧勢力に勝ち上がる下剋上の話なのだが、この作品の公開はそのような変革を待ち望んでいる庶民の願いを代弁していたともいえる。
既得権者が変化を阻んでいるのだ。


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