おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シュリ

2021-03-27 17:36:36 | 映画
「シュリ」 1999年 韓国


監督 カン・ジェギュ
出演 ハン・ソッキュ
   キム・ユンジン
   チェ・ミンシク
   ソン・ガンホ
   ユン・ジュサン
   パク・ヨンウ

ストーリー
1998年9月、ソウル。
2002年のワールドッカップのため南北朝鮮統一チームが結成され、南北交流試合開催のニュースに国内は沸いていた。
韓国の情報部員ユ・ジョンウォン(ハン・ソッキュ)はアクアショップを経営する恋人イ・ミョンヒョン(キム・ユンジン)との結婚を1カ月後に控えていた。
ユ・ジョンウォンと相棒のイ・ジャンキル(ソン・ガンホ)は最近相次ぐ要員暗殺事件の捜査中で、北朝鮮の女工作員イ・バンヒを追っていた。
彼らに情報を提供する予定であった武器密売商が射殺されることによって、ユ・ジョンウォンはこの事件に北朝鮮の特殊8軍団が巻き込んでいることを知る。
ユ・ジョンウォンとイ・ジャンキルは暗殺犯の行跡を追跡する中で、特殊8軍団が国防科学技術研究所の開発した新素材液体爆弾CTXを奪取しようと計画していることを突き止める。
しかし、彼らがCTX奪取情報を聞いて現場に着いたときには既にCTXを盗難された後であった。
ユ・ジョンウォンはその奪取犯がリビア大使館鎮圧作戦の際、擦れ違ったことのあるバク・ムヨン(チェ・ミンシク)の特殊8軍団の要員たちであることに気がつく。
バク・ムヨンの行跡を追っていたユ・ジョンウォンとイ・ジャンキルは何回も目の前で敵を逃してしまい、情報機関内部から情報が漏れていることに気がつく。
爆破目標が要人も集う交流試合が開催されるスタジアムと突き止めるが、ここで衝撃の事実が発覚。
一体誰が裏切り者であるのか・・・。


寸評
僕は韓国映画はベッドシーンがない代わりに暴力描写はすさまじいというのが特徴だと感じている。
その韓国映画の面白さが前面に出た作品だ。
まず女性工作員イ・バンヒの訓練場面と特殊第8軍団の実戦シーンが描かれるが、その映像はすさまじい。
訓練の過酷さは当然としても、人を殺す訓練では血しぶきが飛び交い、そのむごすぎる状況に耐えられない者は特殊工作員に向かない者として味方によって射殺されてしまう。
こういう訓練を施された北朝鮮の工作員と我が自衛隊員は戦えるのだろうかと不安に思ってしまう。
訓練を終えたイ・バンヒは敬意をもって送り出されるが、潜入先は韓国であることは明白だ。
迎え撃つのは韓国の情報部員たちである。
情報部員ユ・ジョンウォンは自分の身分を恋人にも打ち明けることが出来ない。
韓国側に情報を提供する予定であった武器密売商がイ・バンヒによって射殺されるが、観客はイ・バンヒの姿を見るだけでその容姿は伏せられている。
そうなるとイ・バンヒとは・・・という興味が湧いてくるが、勘のいい観客ならその正体は早い段階で推測がつく。
しかし韓国情報部員と北朝鮮の特殊部隊の銃撃戦はなかなか迫力があって、邪推を飛び越えて観客をラブロマンスとスパイアクションの世界へと誘っていく。

内部から情報が洩れていることが分かって来て、一体誰が裏切り者かということに興味が行くが、それに主人公のユ・ジョンウォンが絡んでいそうなことは雰囲気からわかる。
しかしどのような絡み方をしているのかが分からないので観客の興味は尽きない。
まさかその手があったかという種明かしは面白い着想だ。

題名のシュリは朝鮮半島に生息する川魚で、 海と川を行き来する地味な魚らしいが、北朝鮮と韓国を自由に行き来できるようになりたいという、朝鮮の南北問題を象徴させているタイトルとなっている。
しかし、劇中のストーリー展開の中で重要な魚は、シュリではなくキッシンググラミーだ。
キッシンググラミーはペアの片方が死ぬともう一方も死んでしまうと説明されている。
まさに悲恋を象徴する魚だ。

北と南の緊張関係と南北統一問題が背景にあるのだが、南北統一を実現するための方策がアンチ・テーゼとなっているのだが、その叫びは一理あるもので興味深い。
50年間も南北統一がなされないのは両国の指導者にその意思がないからだと言うのだ。
実際、金王朝と呼ばれる一族の独裁支配が続く北朝鮮と、曲がりなりにも民主主義を標榜する韓国が話し合いで統一されるはずがない。
南が北の政治体制に同調するわけはなく、北の指導者たちも今享受している既得権を手放すはずがない。
さすればバク・ムヨンの言うような方法も考えられるのだが、それなら北に革命を起こした方が早いような気もする。
政治がらみのサスペンス映画でありながら痛快なアクション映画でもあり、悲恋も際立つラブロマンス映画でもあり、十分すぎるくらい韓国映画を堪能できる作品である。
その後の韓国映画に僕を引き付けた作品でもある。


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