おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

海を駆ける

2024-04-16 07:15:03 | 映画
「海を駆ける」 (2018) 日本/フランス/インドネシア


監督 深田晃司
出演 ディーン・フジオカ 太賀 阿部純子 鶴田真由
   アディパティ・ドルケン セカール・サリ

ストーリー
インドネシア、スマトラ島北端に位置するバンダ・アチェの海岸で男(ディーン・フジオカ)がひとり倒れている……。日本からアチェに移住し、NPO法人で地震災害復興支援の仕事をしている貴子(鶴田真由)は、大学生の息子・タカシ(太賀)と暮していた。
タカシの同級生クリス(アディパティ・ドルケン)、その幼馴染でジャーナリスト志望のイルマ(セカール・サリ)が、貴子の家で取材をしている最中、日本人らしき男(ディーン・フジオカ)が海岸で発見されたとの連絡が入る。
まもなく日本からやって来る親戚のサチコ(阿部純子)の出迎えをタカシに任せ、貴子は男の身元確認に向かう。
記憶喪失ではないかと診断された男は、しばらく貴子の家で預かることになり、海で発見されたことからインドネシア語で“海”を意味する“ラウ”と名付けられる。
だが彼に関する確かな手掛かりはなく、貴子と共にタカシやクリス、イルマ、サチコもラウの身元捜しを手伝うことに。
片言の日本語やインドネシア語は話せるようだが、いつもただ静かに微笑んでいるだけのラウ。
そんななか、彼の周りで不可思議な現象と奇跡が起こり始めるのだった…。


寸評
「歓待」「ほとりの朔子」「さようなら」「淵に立つ」と見てきた深田晃司なので大いに期待したが、今回の「海を駆ける」は少し期待を裏切られた。
得体のしれないラウだが超能力を持っているらしいので何が起きるのかと思って見ていたら、結局何も起こらなかったという印象。
海からやって来て海に帰っていった。
彼は命そのものの化身なのかもしれない。
軽トラの荷台に乗って貴子の家に向かう時、かれが叫び声をあげると死んでいたはずの魚が飛び跳ねる。
運転手は海辺に二人の人間を発見し急停車するが、死者をよみがえらせたのか、幻だったのか二人は消えていて他の誰もが見ていない。
しおれていた花を再び咲かせる。
少女の命を救ったかと思うと、サチコの病気を治したりする。
超能力で周りの人間に幸せをもたらすのかと思うと、そんな単純な人物ではない。
それなら足の悪いイルマの父親の足を直してやっても良いようなものだがそうはしていない。
子供の水死事件はその延長線上にある。
究極は貴子に行った行為だ。
彼は一体何者なのか?
ちょっとしたフラストレーションがたまる。

ラウと絡むようでいながら、それでいて素通りするように進むのが若者4人の話だ。
母親が日本人のタカシは日本語とインドネシア語を離すことが出来、国籍選択時にインドネシアを選んでいる。
インドネシア生まれのインドネシア育ちだから、タカシにとっては当然の選択だったのだろうが、サチコはどうして日本を選ばなかったのかと疑問に思う。
僕を含めた日本人からすれば自然な疑問だろうが、それは日本人の思い上がりだと言われているようでもあった。
インドネシア語を駆使し、その事を感じさせる太賀はいい演技しているなあと思わせた。
サチコの阿部純子もなかなか良くて、表情の変化に非凡なものを感じた。
登場人物としてのサチコは日本の大学を辞めているので精神的に何かあるのだろうが、一体彼女に何が起きていたのかは不明のままで、これも僕にフラストレーションを起こさせた。
4人は最後に海の上を駆けるが、奇跡は途絶えて突然海中に落ちる。
希望の誕生でもあり、苦難の出現でもある。
ファンタジーでありながら、淋しい思いを抱かせるのは「さようなら」と同じだと思った。
「月がとても綺麗ですね」と同様に、どうも深田晃司の真意が僕に伝わらなかった。


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