おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

2024-04-15 07:40:21 | 映画
「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」 2017年 イギリス


監督 ジョー・ライト
出演 ゲイリー・オールドマン クリスティン・スコット・トーマス
   リリー・ジェームズ スティーヴン・ディレイン
   ロナルド・ピックアップ ベン・メンデルソーン

ストーリー
1940年5月、ヒトラー率いるドイツは東ヨーロッパの大半を占領し、オランダ、ベルギー、フランスも制圧しようとしていた。
フランスの同盟国イギリスでは野党の労働党がチェンバレン首相の責任を問い、保守党と労働党との連立内閣と新首相を要求した。
保守党内部ではハリファックスがチェンバレンの後継としてふさわしいという意見が大半を占めていたが、チャーチルが首相就任の連絡を受けた。
国王ジョージ6世はチェンバレンになぜハリファックスでなくチャーチルなのかと問いただしたところ、チェンバレンは労働党がチャーチルを望むからと答えた。
ハリファックスは国王と会談しチャーチルを辞任させることを提案した。
ベルギーとオランダを占領し、フランスを攻撃するドイツ軍に対し、イギリスのフランスへの派遣部隊はダンケルクで孤立してしまった。
チャーチルはダンケルクからのイギリス派遣部隊の撤退作戦を計画したが、それは危険な作戦だった。
ドイツとの和平を提案するハリファックスにチャーチルは反対し、ハリファックスはドイツと和平交渉をしないなら辞任すると表明した。
国王はチャーチルと会談し、ドイツからの脅威と自らのカナダへの亡命の可能性を示唆しながらもチャーチルへの指示を表明する。


寸評
ウィンストン・チャーチルが良きにつけ悪しきにつけ強烈な個性を持った政治家だったことで、描かれる内容は必然的に万人の興味を引くものになるのだろうが、この作品ではそれを補完するがごとくにゲイリー・オールドマンがチャーチルを熱演している。
ゲイリー・オールドマンの一人舞台といったような内容だ。
ヨーロッパを席巻するヒトラー率いるナチスドイツと戦う道を選ぶか、和睦の道を探るか紛糾する戦争内閣の様子を描いているが、本質的に横たわっているのは権力争いだ。
描かれ方は単純で、チャーチルが善でハリファックスとチェンバレンは悪という図式である。
苦悩するチャーチルの27日間が描かれ、その間にはダンケルクからの脱出劇もあるが、戦争映画ではない本作はその劇的状況を描くことはせず、民間船が押し寄せるシーンだけを挿入している。
あくまでも作品は人間チャーチルに焦点を当てている。

チャーチルはそれまで波乱万丈の経歴を辿っているが、描かれた日々は彼にとって最後の賭けだったのかもしれない。
ヒトラーがダンケルクへの進撃を止める不思議な作戦に助けられてその賭けに勝ち、本土爆撃にも耐えて戦勝国となったイギリスのチャーチルは歴史に名を残すことになったのだろうが、しかしながら僕はチャーチルという政治家をあまり評価していない。
後年サウジアラビアの油田の採掘権をアメリカと争ったが、サウジのファイサル国王は、チャーチルは信用の置けない人物だと言って採掘権をアメリカに渡した。
僕もチャーチルにはファイサルと同じ思いを持っているのだが、非常時には彼のような人物が必要だったのだろうし、歴史を振り返れば、その時々に必要な人物を生み出しているように思われる。

内閣は紛糾しているがイギリス国民の士気は高いことを地下鉄のエピソードで示される。
庶民の意識が議会に届かないのは今の日本も同じだ。
庶民の意見を聞けと説いた国王は立派で、我が国の政治家たちにもそう言いたい。
ハリファックスはアメリカ大使に左遷されたとあるが、アメリカの援助なしには戦えなかったイギリスにとってアメリカ大使は重要なポストのはずで、はたしてそれが左遷と言えるかどうか。
貴族然とした彼はアメリカでの評判は良くなかったらしいが、英米のつなぎ役はこなしたようでチャーチルも彼を政治的に抹殺しなかったのではないか。
当時に比べると昨今の指導者は小者化しているように感じるし、我が国などはその最たるもので嘆かわしい。
独裁国家にとんでもない指導者がいることは大戦の教訓を思えば心配である。
最後にこの後に起きた結果が字幕で示される。
1.ダンケルクの撤退作戦が成功したこと。
2.チェンバレンは半年後に死去したこと。
3.ハリファックスはアメリカ大使に左遷されたこと。
4.イギリスは1945年にはドイツに勝利したこと。
歴史的事実である。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿