おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シング・ストリート 未来へのうた

2022-09-13 07:02:46 | 映画
「シング・ストリート 未来へのうた」    2015年 アイルランド / イギリス / アメリカ 

                 
監督 ジョン・カーニー                 
出演 フェルディア・ウォルシュ=ピーロ ルーシー・ボーイントン
   マリア・ドイル・ケネディ エイダン・ギレン
   ジャック・レイナー ケリー・ソーントン
   ベン・キャロラン マーク・マッケンナ ドン・ウィチャリー

ストーリー
1985年、大不況にあえぐアイルランドの首都ダブリン。
父親の失業で優秀な私立学校から荒れた公立学校への転校を余儀なくされた14歳のコナー。
両親はケンカが絶えず、学校でもさっそくイジメの標的に。
そんな彼にとって、音楽オタクの兄ブレンダンの解説を聞きながら、隣国ロンドンのミュージックビデオ番組をテレビで見ている時だけが幸せだった。
すっかりデュラン・デュランの虜になってしまったコナー。
ある日、自称モデルの美女ラフィーナと出会い、その大人びた美しさに一目で心を打ちぬかれ、「僕のバンドのPVに出ない?」と口走ってしまう。
慌ててメンバーを集め、即席バンドを結成して音楽マニアの兄のアドバイスを受けながら猛練習を開始するコナーだった。
無謀にもロンドンの音楽シーンを驚愕させるプライベートビデオを製作すると決意するこなーだったが・・・。


寸評
大不況により父親が失業する。
生活が苦しくなり少年のコナーは公立の学校へ転向させられるが、その学校は荒れた学校だった。
そこは掃きだめのような場所で、コナーはイジメの標的になる。
一方家庭では両親が不和で離婚間近。
その様な背景で始まるストーリー自体はありがちなものだが、これが見事な青春映画に仕上がっている。
青春映画においては登場する若者たちがキラキラと輝いた躍動感を持っていることが必須の条件だ。
ユニークなバンドメンバー達が最初はぎこちないながら次第に上達していき、やがてオリジナリティーを獲得していく様子が瑞々しい。
「シング・ストリート」というコナーのバンドのオリジナル曲がドラマの内容とシンクロしてきて感動を呼ぶ。
音楽マニアの兄ブレンダンが音楽プロデューサーかと思わせるアドバイスを与えるのだが、コナーが兄を慕う兄弟仲の良さを見せられると、一人っ子の僕は二人を羨ましく思える。
ところが兄は兄なりに鬱積したものを持っていたということが分かり、仲の良い兄弟としてだけでない一面を描いている。
このことで、最後に兄のブレンダンがコナーの旅立ちを自分のように喜ぶ姿がより印象的なものとなった。

練習風景やビデオの撮影風景などは正に青春だ。
僕も仲間と16ミリでの映画を撮っていた時期があったが、まさにこのような雰囲気だった。
バンド活動と並行して描かれるのがコナーの初恋物語で、ラフィーナに対するコナーの初々しくて切ない思いが描かれる。
1歳年上という設定だが、それにしてはラフィーナは大人びている。
ロンドンでのモデルとしての成功を夢見ていて、車を乗り回す彼氏もいることでコナーの恋が切なくなってくる。
イジメっ子や強圧的な校長などの存在もありきたりだけれど押し付け感はない。
彼等の処理の仕方も心得たものであった。

青春映画はそれを感じさせるシーンも有していなければならない。
学校の講堂の様な場所でビデオ撮影を行っている時、会場に来ないラフィーナを思いながらコナーが歌うシーンでは、コナーの目の前に空想の世界が広がる。
感動的なシーンだった。
同じく海岸でのビデオ撮影時に、泳げないラフィーナが海に飛び込んでしまうシーンも鮮烈で、まさしく青春映画を感じさせた。
クライマックスの学校でのライブシーンが感動的なのは言うまでもない。

僕はアイルランドと言う国をよく知らないが、彼等の旅立ちは、コナーとラフィーナの成長を物語ると同時に、閉塞感に包まれた当時のアイルランドの人々の思いを代弁したものだったのだろう。
そこにあるのは海を50キロ隔てて存在している二つの国の国力差なのかもしれない。
本来音楽映画が好きな僕だが、この作品においても曲を聞いているだけでウットリ出来るものがあり、音楽映画としても及第点だった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿