おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

オレゴン魂

2022-04-21 08:04:14 | 映画
「オレゴン魂」 1976年 アメリカ


監督 スチュアート・ミラー
出演 ジョン・ウェイン
   キャサリン・ヘプバーン
   ストローザー・マーティン
   リチャード・ジョーダン
   アンソニー・ザーブ
   ジョン・マッキンタイア

ストーリー
アーカンソー州西部地区保安官代理ルースター・コグバーンは、派手に人殺しをやりすぎるために、パーカー判事にバッジを取りあげられてしまった。
ところがある日、悪名高いホークをボスとする一味が、荷馬車一杯のニトログリセリンを運搬していた騎兵隊を皆殺しにするという事件が勃発した。
一味の中にはルースターのかつての友人のブリードも入っているという。
そこでパーカー判事はコグバーンに、ホーク一味の生捕りに賞金2000ドルと終身保安官の地位を与えることを条件にホーク一味追跡を申し出た。
翌日、コグバーンはホーク一味追撃の旅に出かけフォート・ルビーという町に着いたが、一足先にホーク一味がこの町で暴れまわり、教会の牧師のほか多数のインディアンを殺したことを知った。
そして、牧師の娘で婚期をはるかに過ぎたユーラとインディアンの少年ウルフが彼と一緒にホーク一味の後を追って仇討ちをすると言い出した。
コグバーンは、何とか彼女を思いとどまらそうとしたが、結局2人を連れて旅を続けることになった。
やがて、コグバーンたちは、ホーク一味が騎兵隊から奪った荷馬車の周囲でキャンプしているのに出くわした。
ホークとブリードは出かけていなかったが、コグバーンは巧妙な作戦で彼らを混乱させた。
だが一瞬気を抜いた彼を救ったのは、ユーラの見事な射撃の腕だった。
彼女は、少女時代、初恋の青年から射撃と乗馬を教わっていたのだった。
一方、荷馬車を奪われたことに気づいたホークたちは、3人を追った。
夜が明ける頃、大きな河の渡し場に到着した3人は、急流にイカダを漕ぎ出した。
一足ちがいで河岸に先着していたホーク一味のルークは河面にロープを張り渡し、イカダを止めようとした。


寸評
「勇気ある追跡」の主人公ルースター・コグバーンが再び登場するので内容的には「続・勇気ある追跡」と言っても良いが、出来栄えは前作の足元にも及ばない。
これでキャサリン・ヘップバーンが出演していなくて、ジョン・ウェインとの掛け合いがなければ全く面白くない作品になっていたであろう。
これは監督のヘンリー・ハサウェイとスチュアート・ミラーの力量の違いだったと思う。
スチュアート・ミラーはジョン・フランケンハイマーの「終身犯」や、アーサー・ペンの「小さな巨人」などの製作者でもあり、監督としてではなく、そちらの方で映画史に名を遺した人だと思う。

前作におけるキム・ダービーのマティに代わるのがユーラ(シスター)のキャサリン・ヘップバーンで、相手役としては少女からオバサンになっているが、冗長な流れの中にあってジョン・ウェイン共々老優二人のやり取りは文字にすると味わいが薄くなるが見応えがある。
二人の丁々発止のやり取りが場面の多くを占めているので尚更そう感じる。

コグバーンが保安官バッジを取り上げられる経緯では、助手を殺されたための仇討と言う側面を描き込んでおくべきだったと思う。
判事の前で遺族となった奥さんへ顔向けができたと述べているが、彼の犯人射殺がやむを得ず行われているという説明として必要だったのではないか。
キャサリン・ヘップバーンが開拓している村が襲われるが、彼女の去った後の村をだれに託したのかが分からないし、草むらに逃がした子供たちはどうなったのか。
全体にそのような細かい描写を省略しているために大雑把な感じを受ける作品となっている。
保安官になりたいと言っていたウルフも結局シスターと共に説明もなく村に帰って行った。

一番まずいのはホークを初めとする悪役に迫力がないことだ。
ホークは仲間を見捨てる非情な面を見せてはいるが、コグバーンと対等に戦う相手としては小者の感じがする。
実際ホークはコグバーンにやられっぱなしである。
コグバーンはニトログリセリンを運んでいるので、一味がなかなか銃撃できないという一面もある。
決着の付け方も断然「勇気ある追跡」におけるコグバーンの方がかっこよかった。
「オレゴン魂」は西部劇としての醍醐味は持っているのだが、やはりここぞという見せ場は有しておいてほしい。

見ながら僕はキャサリン・ヘップバーンが急流下りをやる映画があったなと思い出していたのだが、たぶんそれは「アフリカの女王」だったと思う。
ジョン・ウェインが最後に「あいつ、またいいところを持っていきやがった」とつぶやくが、僕はもしかするとこのセリフはジョン・ウェインのアドリブだったのかもしれないなと思っている。
映画はジョン・ウェインとキャサリン・ヘプバーンの共演作として存在しているような印象。