おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎

2022-04-02 08:49:44 | 映画
「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」 1981年 日本


監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 松坂慶子 下絛正巳
   三崎千恵子 前田吟 太宰久雄 佐藤蛾次郎
   吉岡秀隆 正司照江 正司花江 初音礼子
   マキノ佐代子 関敬六 斉藤洋介 笑福亭松鶴
   大村崑 芦屋雁之助 笠智衆

ストーリー
気ままな旅ぐらしを続ける寅次郎は、瀬戸内海の小さな島で、ふみという女に出会った。
大阪、新世界界隈。
例によって神社でバイに精を出す寅の前を三人の芸者が通りかかった。
その中の一人に、あの島で会ったふみがいた。
数日後、柴又のとらやに、手紙が届いた。
ふみとのこと、ニ人で毎日楽しく過ごしているとの内容に、とらやの一同は深いため息をつくばかり。
ある日、寅はふみから十何年も前に生き別れになった弟がいることを聞いた。
「会いたいけど、会ったって嫌な顔されるだけよ」と言うふみに、たった二人の姉弟じやないかと会いに行くことを勧める寅。
二人はかすかな便りをたどって、ふみの弟、英男の勤め先を探しあてた。
しかし、英男はつい先月、心臓病で他界していた。
英男の恋人、信子から思い出話を聞き、涙を流すふみを寅はなぐさめる言葉もない。
その晩、寅の宿に酒に酔ったふみがやって来た。
「寅さん、泣いていい?」と寅の膝に頭をのせ、泣きながら寝入ってしまうふみ。
寅は、そんなふみに、掛布団をそっとかけると、部屋から出た。
翌朝、ふみの姿はなく、「寅さん、迷惑なら言ってくれればいいのに。これからどうして生きていくか、一人で考えます」との置手紙があった。
数日後のとらやでは、家族を集めて、寅が大阪の思い出話をしていた。
そこへ、突然ふみがとらやを訪ねてきた。
ふみは芸者をやめ、結婚して故郷の島で暮らすことを報告に来たのだ。
「お前ならきっといいおかみさんになれるよ」と哀しみをこらえて、明るく励ます寅次郎だった。


寸評
サブタイトルが示すように今回の舞台は大阪で、大阪人の僕はそれだけで感情移入してしまう。
大阪の芸人が多数登場して浪花情緒を出している中にあって、松坂慶子の大阪弁のイントネーションには少し違和感があったが、それでも見慣れた場所が出てきて嬉しくなってしまう。
先ずは通天閣がある新世界で、寅さんは初音礼子が経営する新世界ホテルに居ついているのだが、そこの息子が芦屋雁之助で寅さんの友人である。
雁之助の喜介も寅さん同様、いい年をしていつまでも「お母ちゃん、お母ちゃん」と言っているダメ男だ。
友人をいいことに宿賃を払わずに居ついているのだが、二人の掛け合いは愉快だ。
そこの亭主なのか、入り口のソファーにいつもいるのが笑福亭松鶴である。
酒飲みの芸が得意だった落語家だけに、コップ酒を持つ姿は板についている。

今回のマドンナ、松坂慶子と再開するのは石切りの参道である。
石切り神社は毎年初詣に出かける神社で、参道の様子も見慣れたものである。
松坂慶子と共に登場するのが芸者仲間の正司照江、花江のかしまし娘の次女と三女である。
彼女たちの賑やかなやり取りはお手の物である。

寅さんと松坂慶子のふみが出かけるのが生駒の宝山寺で、僕はこの神社もお参りしたことがある。
ケーブルカーにも乗ったし、参道の階段も上り下りした。
彼等は生駒遊園の前にあるレストランで、持参したお弁当を食べていたが、さすがにその店では持ち込みは許していなかったと思うのだが、そこは映画なのでケチは付けないでおこう。
南の宗右衛門町も出てくるが、僕は素通りするだけで宗右衛門町で遊んだことがない。

松坂慶子がマドンナと言っても今回のからみは深くはない。
瀬戸内海の島で出会い、大阪で再会するのだが、ふみの生き別れの弟の件がかなりしんみりと描かれて笑うどころではない。
運送会社の配車係長として大村崑も登場するが、しんみりムードには適役で笑いはとらない。
弟は亡くなっていて、おまけにその恋人だった女性が登場してきてお涙頂戴である。
寅さんの片思いが匂わされるのは、所々でふみの旦那さんと呼ばれ、否定しながらもまんざらでもない姿だけだ。
そんな気分になる通天閣ホテルの一件も、ふみの置手紙であっさりとケリがついているのである。

ふみは結婚することになった相手を伴って寅さんを訪ねてくるが、その必然性がどこにあったのか?
結婚相手の男の故郷である対馬に行くのだが、途中で寄るならともかく、大阪からは対馬の正反対に当たる東京まで来ているのである。
わざわざ結婚報告をしに来るだけのものが、その前に十分描かれていないのだ。
いつもならマドンナがとらやに登場して寅の片思いのひと騒動が起きるのだが、今回は結婚報告なのでその騒動はなく、寅とマドンアがとらやで再会してすぐに別れとなってしまう。
何か物足りなさを感じた結末で、寅さんが対馬にふみ夫婦を訪ねるラストがせめてもの救いか・・・。
大阪が舞台でなかったら不満が残る内容ではあった。