おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

帰らざる河

2022-04-26 08:33:01 | 映画
「帰らざる河」 1954年 アメリカ


監督 オットー・プレミンジャー
出演 ロバート・ミッチャム
   マリリン・モンロー
   ロリー・カルフーン
   トミー・レティグ
   ダグラス・スペンサー

ストーリー
1875年、ゴールド・ラッシュのアメリカ北西部へマット・コールダー(ロバート・ミッチャム)という男が、今年16歳になる息子マーク(トミー・レッティグ )の行方を尋ねてやって来た。
マークは酒場の芸人ケイ(マリリン・モンロー)の世話になっていたが、マットは彼を引き取って新しく買った農場に落ち着いた。
ある日、マットは農場のはなれを流れている河で、筏に乗って漂流しているケイと夫ハリー(ロリー・カルホーン )を助けた。
賭博師のハリーはポーカーでとった砂金地の登記をするためケイと一緒にカウンシル・シティへ行く途中だった。
マットがこの河は危険だというと、ハリーは銃をつきつけてマットから馬と食糧を奪い、隙をみて銃を奪おうとするマットを殴り倒し、ハリーの態度にあきれるケイを残して一人で旅立った。
マットがケイに介抱されて気をとり戻したとき、農場はインディアンに襲撃されそうになっていた。
彼は直ちにケイとマークを連れて筏に乗り激流を下った。
マットはハリーに復讐しようと思っていたが、ケイは極力それを止めようとし、口論のはずみにかつてマットがある男を背後から射殺したのを暴露したことでマークは父を卑怯な人だと思いこんでしまった。
2日目の夜、マークが山猫に襲われそうになったが、通りがかりの二人の男に救われた。
二人はイカサマ賭博でハリーから砂金地をまき上げられた連中で、ケイに怪しい振る舞いをしかけたがマットに追い払われた。
マットら三人はインディアンの執拗な追跡を逃れ、ようやくカウンシル・シティに着いた。
ケイからマットに詫びるよう忠告されたハリーは、承知した風を装い、隙を見てマットめがけて滅茶撃ちをしかけた・・・。


寸評
主要登場人物は四人で、主演はロバート・ミッチャムとマリリン・モンローなのだが、この映画は間違いなくモンローの映画だ。
酒場で歌う女と、ジーンズをはいた気丈な女を演じているが、スタイルもいいし生歌を聞けるのもいい。
余り作品に恵まれてこなかった彼女自身がかぶさってくるケイという役柄だった。
伝説の女優になってしまったマリリン・モンローだが、その魅力は十分引き出されていると思う。

彼女の魅力は堪能できるのだが、ストーリーとしては稚拙で、これは脚本が悪いのかもしれない。
父親が留守の間に母親は亡くなっているのだが、その後のマークの暮らしぶりが分からない。
それが分からないからケイがマークを世話をしていた期間とか、どうのように世話していたのかは不明である。
ハリーは鉱山の権利書をギャンブルで勝って手に入れたようなのだが、その詳細が分からないことは許せても、鉱山の登記を終えても戻らなかった理由の説明がないのは不満である。
ハリーがマットを撃とうとした理由も不明だし、カウンターに置いていったはずの拳銃をなぜ持っていたのかの描写もない。
先住民のインディアンが執拗なまでにマットたちを追い続けている理由もよくわからない。
ハリーを追ってきた二人組もあっさり消えてしまって二度と登場しない。
マットに「生きてろよ、俺が殺してやる」と言い残して去ったはずなのにである。
そのように何かにつけて説明不足で、そのために全体的な盛り上がりに欠ける作品になってしまっている。

一方でマットとケイのラブ・ロマンスがあるのだが、マットが急にケイを襲う場面などがあって、徐々にマットとケイの間が縮まっているという雰囲気が描かれていない。
最後にマットがケイをかっさらうような形で農場へ戻っていくのだが、その劇的なシーンが唐突に思えてくる。
ラブ・ロマンスの描き方としては失敗していると思う。

川下りのアドベンチャー映画の側面も持っているのだが、制作年代からして仕方がないのかもしれないが、あからさまな合成はちょと興ざめしてしまう。
映画の中ではハリーとケイの関係、マットとハリーの関係、マットとケイの関係などが描写されるが、この映画を救っているのはマーク少年とケイの関係だ。
どのような経緯かは知らないが、二人は古くからの友達だと言っている。
ケイがマークに接するときは母性本能を見せて、実の母親以上なのである。
ラストシーンにおいても、馬車に乗ったマークを抱きしめるシーンがあって、この二人の関係は微笑ましいものがあって、僕がもうひとつしっくりこないものを感じていた三人の旅の中にあって安心できる描写になっていた。
息子への愛の間に割って入ることなどできないと思ったのか、ケイは元の酒場女に戻るのだが、「私はもう生活のための酒場女には戻らないわ」といった気持ちの表れの赤いヒールは印象的で、ずっとその靴が入った袋を持ち続けていたことだけは納得させられた。
これでもかとばかりにマリリン・モンローを引っ張り出しているし、悩ましい姿も披露させているので、まったくもってこれはマリリン・モンローのための映画であった。