おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

フィッシュストーリー

2021-10-21 08:13:46 | 映画
「フィッシュストーリー」 2009年 日本


監督 中村義洋
出演 伊藤淳史 高良健吾 多部未華子
   濱田岳 森山未來 大森南朋
   渋川清彦 大川内利充 眞島秀和
   江口のりこ 山中崇 波岡一喜

ストーリー
2012年。彗星が地球に激突するまであと5時間。
人々が方々へ避難し、静まり返った街で唯一つ営業を続けるレコード店があった。
そこにいるのは、店長(大森南朋)と不気味な車椅子の客、谷口(石丸謙二郎)。
“もうすぐ世界が終わる”と語る谷口に、店長は“正義の味方が世界を救う”と返す。
店内には、70年代に解散したマイナーなパンクバンドの曲“FISH STORY”が流れていた。
1982年。気の弱い大学生、雅史(濱田岳)は仲間と車で合コンに参加。
その最中、1人が“FISH STORY”という曲にまつわる不気味な噂を語り始める。
無音になる1分間の間奏の間に、女性の悲鳴が聞こえるという。
合コンの後、1人淋しく帰宅する途中、カーステレオから流れてきたのは“FISH STORY”。
その間奏で女性の悲鳴を耳にする雅史。
1999年。“ノストラダムスの大予言”で世界が終わるとされている7の月。
“明日、世界が終わる”という谷口の予言を信じて人々が集まるが、翌日も太陽は燦燦と輝いていた。
人々に責められた谷口は“2012年に、世界の終わりが来る!”と叫ぶ。
2009年。修学旅行の最中、フェリーに置いていかれた女子高生、麻美(多部未華子)。
泣きじゃくっていた彼女に優しく語り掛けてきたのは、正義の味方になりたかったと語るコック(森山未來)。
そのとき、フェリーがシージャックされる。
1975年。解散直前のパンクバンド“逆鱗”のメンバーはベースでリーダーの繁樹(伊藤淳史)、ボーカルの五郎(高良健吾)、ギターの亮二(大川内利充)で、彼らの最後のレコーディング曲は“FISH STORY”。
再び2012年。彗星の衝突が迫る中、正義の味方、売れなかったレコード、世界の終わり。
全く関連性のないように見えた出来事が、“FISH STORY”を通して一つにつながったとき、世界を救う…?


寸評
始まりは彗星が地球に激突するということで街はゴーストタウンと化しているから、これはSF作品かと思わせるが、そこから“FISH STORY”という曲を軸にして一見無関係な話が時代を前後して進んでいく。
映画的手法として無関係な話が最後には結びつくはずだと思って見ているのだが一向にその片鱗が見えない。
最初は1982年の気の弱い大学生の話。
彼は運命の女性との出会いを予言されるが、それがいったい誰なのか分からない。
やがて“FISH STORY”と共に運命の女性とはこの人だと判る展開。
しかしその話はそこで終わってしまい、時代は惑星直列が起こり世界が破滅するとされたノストラダムスの大予言の1999年に移る。
ここで冒頭の変な男が再登場し、世界が滅びるのは2012年だと叫ぶ。
なるほど…彗星が地球に衝突する2012年がこれでつながった。
続いて2009年のシージャック事件の話が展開される。
まったくもって関係のない話のように思える。
なんとなく”正義の味方”という言葉が頭の片隅に残る。

映画はここで中休み状態となって、1975年に戻って解散直前のパンクバンド“逆鱗”の活動が描かれる。
もちろん彼らの“FISH STORY”という曲がこの映画のキーになっているのだから、このシークエンスには注目せざるを得ない。
実際、重要なことが語られる。
一つは”フィッシュストーリー”という言葉の意味。
ああ、そういう意味だったのね…と少し知恵の輪がほぐれ始めた。
彼らは最後のレコーディングを行うが、そこでボーカルの五郎が途中でアドリブの言葉を発してしまう。
そこでの彼の発言が意味深長で物語全体をおぼろげに理解させる役割を担っていたと思う。
それまで描かれていた内容は、気弱な青年が決起する自分探しのドラマであり、地球滅亡を信じた愚かな人間たちのドラマであり、売れないバンドのキラキラする青春物語であり、シージャックをネタにしたヒーロー物語で、どれもが変な人間が登場する薄っぺらい物語の羅列だ。

上映時間も進んで、そろそろラストだと言うのに一向に話がつながらない。
と思いきや、最後の最後に一見無関係に思えたすべてのエピソードが、「フィッシュストーリー」という曲がかかる間に、一気につながってしまう。
う~ん、今までの話はそういうことだったのねという感動だ。
たまっていたモヤモヤが一気に吹っ飛ぶ。
この爽快感を得るために、一見くだらないと思えるようなエピソードにも付き合ってきたのだと分かる。
気弱な大学生雅史の濱田岳、レコード屋店長の大森南朋、正義の味方だった森山未來、修学旅行生麻美の多部未華子などの再登場に拍手。
中村義洋って面白い映画作るなあ…。