おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

病院へ行こう

2021-10-15 07:33:50 | 映画
「病院へ行こう」 1990年 日本


監督 滝田洋二郎
出演 真田広之 薬師丸ひろ子 大地康雄
   斉藤慶子 尾美としのり 螢雪次朗
   ベンガル 荒井注 嶋田久作 レオナルド熊

ストーリー
新谷公平(真田広之)は、広告代理店のコピーライターとして日夜仕事に励んでいたが、ある夜、倦怠期の妻春子(斉藤慶子)の不倫現場を発見、相手の如月十津夫(大地康雄)ともめて大騒ぎの末、マンションの階段から間男と共に転落してしまう。
そんな公平が運ばれた大学病院の新米研修医の吉川みどり(薬師丸ひろ子)は救急患者が大の苦手で、点滴針すら上手く刺せない始末だった。
その結果、公平は全治一ヵ月の大腿骨骨折で、安い大部屋の病室で入院生活を送ることになるが、隣のベッドには何と、例の間男如月十津夫がいたのだった。
それでなくともこの病室にはなかなか退院しない牛丸(ベンガル)などの変人が多く、公平のストレスはたまるばかりで、さらに翌日春子が公平に離婚届をつきつけるのだった。
ある夜、公平は血を吐いて内科の診察室にまわされた。
新谷は間男、妻の不倫・離婚、自分が抜けた仕事のことなどから胃潰瘍を併発するが、医師が胃癌であることを隠すために胃潰瘍と偽っているのではと思い悩む。
一方、如月は担当医になったみどりにほのかな想いを抱いているが行動に現わせない。
以外に純情なのだが、おかまバーに務める定(螢雪次朗)にみどりへの恋を後推しされる。
そして、公平はそんな如月にいつしか親しみを感じるようになる。
一方、新谷よりも軽傷だった如月の肺に影があり、肺癌なのか結核なのか判明せず、みどりも悩んでいた。
胸部外科の韮崎(伊原剛志)は切って病原を確かめようとする。
手術の前日、自分が癌であることを知った如月は騒ぎを起こすが、みどりが自ら丹念に調べた結果、如月の癌はシロだと判明したのだった。
何日かたち、退院することになった公平はみどりや如月に別れをつげて病院を去ったのだった。


寸評
病院あるある的な内容だが、同時に「そんな奴はおらんやろ」と言いたくなる患者たちが繰り広げる入院生活に、思わずクスリと笑ってしまうコメディである。
真田広之が調子のいい男を軽妙に演じ、大地康雄がいつもながらの軽妙な演技を見せて、この二人のデコボココンビの絡みはまるで漫才の名人芸を見ているようだ。
これに絡むのが薬師丸ひろ子で、二人に負けないトボケた味を出している。
彼女の役は注射も上手くできない研修医で、「大丈夫ですよお~」とハスキーボイスでつぶやくのだが、ちっとも大丈夫らしくなくて、看護婦さんたちに助けを求める姿に笑ってしまう。
僕が入院していた時の研修医は、僕が点鼻することになった珍しい薬を「僕も初めての薬なので・・・」と言って説明書を読み始めた。
「僕の前で説明書を読むのかよ」と思った事を思い出すと、案外ととぼけた研修医もいるのかもしれない。
あの若先生、薬師丸ひろ子と五十歩百歩だったのかもしれないな。
真面目な吉川先生は悩むが、人から意見されると「そおよねえ~」と言って表情が一変する。
その変わり身も面白く、居酒屋でのシーンには思わず噴き出してしまった。
もともと彼女にはトボケた味が備わっているのだと思う。

ベンガルは入院していると保険金もおりて、給料と合わせると収入が倍になると長期入院を決め込んでいて、10年も入院すれば家のローンが払えてしまうと妻と笑談している。
彼は院内を見学してまわっていて、重病患者を見ては健康のありがたさを語る男である。
如月は自慢のキムチを同室の患者に配って喜ばれているが、見舞いのミカンやお菓子を配っても、流石にキムチはないだろう。
公平は最初は大勢押しかけていた見舞客も、やがて誰も来なくなってきたとグチをこぼすが、これなどは病院あるあるだろう。
元気な(?)入院患者にとっては、病院はとても退屈な場所だ。
体は元気だった僕の入院時は、会社の友人からメールで送られてくる社員の不倫情報を楽しみにしていた。
二人は抜け出してどんちゃん騒ぎをやっているが、やってみたい行動だ。

公平が退院していく場面からの描き方がグッとくる。
退院していく公平が親しくなった入院患者たちに挨拶して退院していく。
「じゃあ」と軽く挨拶する人もいれば、まだ入院が続いている人に「ごゆっくり」と冗談ぽく声をかける人もいる。
吉川先生と別れの言葉を交わし、待合室にいる如月と出会う。
如月が「癌だったらいい話だったのにな」と言うと、公平は「哀れなくらい元気だな」と言葉を返す。
公平が代筆した吉川先生の手紙を如月が公平に渡し、その便箋を利用して手の神経が麻痺している如月は不自由な右手だけで折り紙の鶴を折りあげる。
必死で鶴を折る如月の真剣な表情は、それまでのひょうきんな如月とは別人である。
花火職人の仕事を失った如月だが、これからも強く生きていく決意が現れていた。
いいシーンだったと思う。