おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ファンシイダンス

2021-10-19 08:41:14 | 映画
いよいよ「ふ」です。
前回は2020/9/19の「ファーゴ」から、2020/3/15の「フレンチ・コネクション2」まででした。
今回も間口を広げて紹介します。

「ファンシイダンス」 1989年 日本


監督 周防正行
出演 本木雅弘 鈴木保奈美 大沢健
   彦摩呂 田口浩正 近田和正
   渡浩行 ポール・シルバーマン
   徳井優 竹中直人 河合美智子
   柄本明 岩松了 蛭子能収
   大杉漣 宮本信子

ストーリー
塩野陽平(本木雅弘)は、街の明るい大学4年生。
ロックバンドを組み、ライブハウスでリードボーカルとして翔んでる毎日を送っていた。
しかし、陽平には寺の跡取りという宿命があった。
恋人の真朱(鈴木保奈美)を残して、ド田舎の禅寺、明軽寺に弟の郁生(大沢健)と共に入った陽平たちを待っていたのは、つらく厳しい修行の毎日だった。
しかし、地獄の修行もしばらくすると、お寺の裏側が見えてくるようになってくる。
偉そうな顔した古参たちも裏に回れば何をやっているかわかったもんじゃないというのが現実だった。
そんなある日、たまたま会社の研修で参禅にやってきたバンド仲間のアツシ(みのすけ)から真朱が硫一(大槻ケンヂ)と付き合いだしたと聞かされた陽平は不安を隠せない状態に陥るが、そこへなんと真朱が明軽寺にやってきた。
久しぶりに愛を確かめ合おうと思ったものの、嫉妬深い寿流(菅野菜保之)に見付かってしまい、大目玉をくらってしまう。
そんなことで陽平は名物住職の南択然老師(村上冬樹)の行者となってしまった。
ところが、この老師はなんとも世話のやけるボケ老人。
しかし、なぜか陽平はそんな南老師のそばにいると気分が落ち着くのだった。
そして一年がたった。
真朱のもとに帰る日も近い!と浮かれていた陽平だったが、知らない間に山を降りる日を延期され、次の制中の首座に選ばれてしまった。
落ち込む陽平だったが南老師の言葉に奮起して修行に打ち込みだし、遂に法戦式の日が来た。
寿流らの妨害もあったが何とか無事に終ったのだった。


寸評
ピンク映画「変態家族 兄貴の嫁さん」で監督デビューした周防正行が一般映画に進出した第一作である。
3人組アイドル「シブがき隊」のメンバーでもあった本木雅弘がグループ解散後に主演した作品でもある。
修行僧が繰り広げるドタバタを描いたコメディだが、僕たちにとってはベールに包まれたお坊さんの世界が舞台だけに未知の事柄に対する興味も湧いてきて楽しめる。
ドタバタに終始せずそれぞれのエピソードをユーモアを交えながらきちんと描いていて、コメディ作品として水準を保った作品に仕上げている。
アイドルだった本木雅弘にとっても初の主演作品なのだが、役者としての才能を見せていて芸達者なわき役陣に後れを取っていない。

コメディだけにお坊さんを揶揄するようなエピソードがてんこ盛りで、よく寺院が撮影を許可したものだと思う。
陽平の父親(宮琢磨)はお寺の婿養子で、法事では檀家とカラオケに興じ、ゴルフも趣味のようで住職家業はお気楽なものだと言っているよう存在。
先輩修行僧の光輝(こうき・竹中直人)は先輩風を吹かせて厳しく指導にあたるが、自室で仲間と酒・タバコを自由にしていて、サラリーマンを装ってキャバクラに行くなどしている生臭坊主である。
晶慧(しょうえい・甲田益也子)は秩序を乱す者には厳しく対処する位の高い僧侶で郁生は彼女に憧れている。
彼女は肉、魚などの生臭い物が嫌いなことにかこつけて、光輝たちは寺の僧侶が留守にする夜にこっそり寿司の出前を取って内緒で食べている。
寿流(じゅりゅう・菅野菜保之)というくらいの高い僧侶は威厳のある人物に見えるが、それは表向きの顔で実は自室に家電製品を色々と所有したり下着はアニマルプリントのブリーフを着用するなど世俗的な考え方の持ち主で、ひっそりとビールで晩酌をやっている人物である。
そのようなお坊さんたちを見ていると、聖職の一つである僧侶も一皮むけば俗人と同様の人々なのだと思えるし、普段は聖人ぶっている分だけ偽善者の集まりの様に見えてしまう。
僧侶たちのひんしゅくを買いそうな描き方だが、夜の祇園や先斗町に行けば地方から出てきた僧侶がたむろしていると言うのはよく聞くので、あながち映画の世界の作りごととも思えない。

オープニングは本木雅弘がロックバンドのボーカリストとしてライブハウスで熱唱しているシーンなのだが、ロックバンドらしいヘアスタイルなのに振り返ると左半分がすでに坊主頭となっている。
アイドル本木雅弘君、よくぞやったという出だしで、コメディ映画としてツカミはOKという感じを受ける。
そしてラストシーンとなる法戦式で陽平を嫌う寿流から「修行中に女人と会っていたのはどういうつもりか」と問われた陽平は、堂々と「あるがままだ」と答える。
見事な禅問答で陽平の勝利を描き無事山を下りるかと思いきや、ここで真朱(まそほ・鈴木保奈美)が思わぬ行動をとりというのがオチとなっている。
お茶くみOLだった真朱が変身し仕事を指示する場面などはあるが、ペーソスや笑いの中にある主張は特段目立ったところがない。
しかし全体として結構まとまっていて、コメディ好きの僕は満足できた。