おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ひまわり

2021-10-08 07:01:37 | 映画
「ひまわり」 1970年 イタリア


監督 ヴィットリオ・デ・シーカ
出演 ソフィア・ローレン
   マルチェロ・マストロヤンニ
   リュドミラ・サベリーエワ
   アンナ・カレナ

ストーリー
貧しいお針子のジョバンナ(S・ローレン)と電気技師のアントニオ(M・マストロヤンニ)は、ベスビアス火山をあおぐ、美しいナポリの海岸で出逢い恋におちたが、その二人の上に、第二次大戦の暗い影がおちはじめた。
ナポリで結婚式をあげた二人は新婚旅行の計画を立てたが、アントニオの徴兵日まで14日間しか残されていなかったので、思いあまった末、アントニオは精神病を装い徴兵を逃れようとした。
しかしその夢は破ぶられ、そのために酷寒のソ連戦線に送られてしまった。
アントニオは死の一歩手前までいったが、ソ連娘マーシャ(L・サベーリエワ)に助けられた。
年月は過ぎ、一人イタリアに残され、アントニオの母(アンナ・カレーナ)と淋しく暮していたジョバンナのもとへ、夫の行方不明という通知が届いたが、これを信じきれない彼女は、最後にアントニオに会ったという復員兵(グラウコ・オノラト)の話を聞き、ソ連へ出かける決意を固めるのだった。
異国の地モスクワにおりたった彼女は、おそってくる不安にもめげす、アントニオを探しつづけた。
そして何日目かに、彼女はモスクワ郊外の住宅地で一人の清楚な女性に声をかけた。
この女性こそ今はアントニオと結婚し、子供までもうけたマーシャであった。
すべてを察したジョバンナは、引き裂かれるような衝撃を受けてひとり駅へ向った。
逃げるように汽車にとびのった彼女だったが、それを務めから戻ったアントニオが見てしまった。
ミラノに戻ったジョバンナは傷心の幾月かを過したが、ある嵐の夜にアントニオから電話を受けた。
彼もあの日以後、生活の中で苦しみぬき、いまマーシャのはからいでイタリアにやってきたとのことだった。
迷ったあげく、二人はついに再会したが、二人の感情のすれ違いはどうしようもなかった。
そして、ジョバンナに、現在の夫エトレ(ジェルマーノ・ロンゴ)の話と、二人の間に出来た赤ん坊(カルロ・ポンテイ・ジュニア)を見せられたアントニオは、別離の時が来たことを知るのだった。
翌日、モスクワ行の汽車にのるアントニオを、ジョバンナは見送りに来た。


寸評
映画が始まるとタイトルとなっている広大なひまわり畑が映し出される。
映画が進んでいくと車窓から再びそのひまわり畑が登場する。
降り注ぐ陽光を感じさせるひまわりだが、それはジョバンナが生存を信じてアントニオを探しにソ連を訪れる途中の光景だったことが判り、ひまわりの持つ明るいイメージとはかけ離れた光景だったことも判る。
そのひまわり畑の下には、無数のイタリア兵と捕虜のロシア兵の遺体が埋められているのだ。
ナチスドイツが深い穴を掘り、先ずは捕虜のロシア兵を埋めた。
まるでポーランドのカテインの森の虐殺を思わせるカットが挿入される。
やがてロシア戦線でソ連の反撃を受けたイタリア兵がそれに加わえられた。
共に戦争の犠牲者である。
戦争は生存者にも悲劇をもたらす。
その犠牲者がジョバンナとアントニオであり、またマーシャもその一人である。

ジョバンナはアフリカ戦線の兵役に就くアントニオと愛し合って結婚した。
14日間の休暇をもらえることもあったのだろうが、幸せなハネムーン期間が描かれる。
やがて気が狂ったようにジョバンナを追い回すアントニオが現れ、アントニオは精神病院に入れられてしまう。
これは兵役を逃れるための偽装行為だったのだが、当局もそんな男の存在を予期していて、面会室の壁の穴から二人の行為を監視されて、見破られたアントニオは懲罰として厳寒のロシア戦線へ送られる。
アフリカ戦線よりもロシア戦線の方が過酷だったということだろう。
ロシア戦線の過酷さは本題から外れるので描き方は通り一辺倒なものではある。
雪原でアントニオは倒れるが、ソ連の女性マーシャに助けられる。
その後どのような生活を送ったのかは描かれていないが、ジョバンナがアントニオの住まいを探し当てた時、マーシャと結婚し可愛い女の子がいることも判明する。
マーシャも訪ねてきた女性が誰なのかすぐに分かったようだ。
ジョバンナは言葉も交わさずイタリアに戻るのだが、一方のアントニオも傷心でいる。
しかし僕はそんなアントニオをイタリアに送り出すマーシャに気持ちは傾いていた。

僕はこの映画は甘いと思う。
確かに描かれたような悲劇は現実にもあったかもしれないが、アントニオは僕の目には身勝手に映ってしまう。
ジョバンナと再会したアントニオは何とか平静を保ってはいるものの、ジョバンナと新しい生活を送ろうと切り出しているのである。
ジョバンナが新しい男と結婚せず、子供も生まれていなかったらどうなっていたのか?
その時、モスクワに残したマーシャと子供はどうなるのか。
戦争が生み出した悲劇ではあるが、同時に愛し合っていた男女が引き起こした悲劇でもある。

繰り返し奏でられるヘンリー・マンシーニのメロディが作品を押し上げていた。
出征していくアントニオを見送ったホームで、再びジョバンナがアントニオを見送るラストシーンはよかった。