「ソロモンの偽証 後篇・裁判」 2015年 日本
監督 成島出
出演 藤野涼子 板垣瑞生 石井杏奈
清水尋也 富田望生 前田航基
望月歩 西村成忠 西畑澪花
佐々木蔵之介 夏川結衣 永作博美
小日向文世 黒木華 尾野真千子
ストーリー
クリスマスに謎の死を遂げた城東第三中学校の2年A組生徒・柏木卓也(望月歩)。
当初は自殺と思われたその死に対し、いじめグループを率いる問題児・大出俊次(清水尋也)による殺人という匿名の告発状がバラまかれ、事態は急展開を見せる。
殺人を告発する目撃者からの手紙、過熱報道、連鎖していく事件により学校は混乱していたが、大人たちは保身に走る一方だった。
そして2年A組のクラス委員・藤野涼子(藤野涼子)は、大人たちを排除し、中学生だけで真相究明の学校内裁判を開くことを提案する。
やがてそれは様々な困難を乗り越え、ついに実現することに。
こうして検事役には藤野涼子、一方の弁護人を他校の生徒・神原和彦(板垣瑞生)が務め、大出俊次を被告人とする学校内裁判が開廷する。
白熱した審理が進む中、争点は次第に事件当夜の被告人のアリバイに絞られていくが…。
学校内裁判は6日間にわたって行われ、生徒の保護者や関係者も傍聴できるようになっていた。
学校内裁判に現れたたくさんの証言者は、事件の謎を次々と証言していく。
大出俊次の不良仲間だった井口充(石川新太)や橋田祐太郎(加藤幹夫)、大出俊次のアリバイを証言した弁護士、告発文について証言した三宅樹里(石井杏奈)。
そしてついに、事件の真相を知っていた証言者が現れる。
そして、6日目、予定通り陪審員によって大出俊次の判決が下される。
果たして真実は、明らかになるのだろうか。
寸評
前篇は事件が起こりさまざまな謎が提示されたが、裁判を描く後篇は息詰まる法廷劇になっている。
脚本的に未成熟なところもあるように感じるが、それを補うように生徒役の子供たちが素晴らしい演技を見せる。
彼等の演技は未熟なところもあるが、その未熟さが返って等身大の若さをスクリーンにあふれさせていた。
前篇以上に子どもたちが中心のドラマになっていて、ほとんどが体育館での裁判シーン。
その校内裁判の描写は緊張感にあふれ見事なものだったと思う。
学校でのイジメ、大人や子供の嘘、親子愛、家庭環境、不条理がまかり通る現代社会への警鐘などといった問題も浮き彫りになってくる構成もいい。
事勿れ主義だった先生や、ワイドショー的に報じたマスコミへの糾弾はなく、死亡した柏木くんと神原君の特別な関係の説明不足等粗さも目立つが、子供たちの成長する姿を見ることは僕のような初老の者にとっては嬉しくなってくる。
物語を補足するエピソードが裁判劇の脇を固めるが、なかでも永作博美演じる母親の屈折した愛情は強烈だ。
母親は娘を溺愛しているが、ある時娘から「あんたがそこまでバカだったとは思わなかった」と意思表示される。
そんな母親を永作が狂気じみた表情で演じて、強烈な存在感を見せていた。
親たちは子供がどのような状況に置かれ、どのような悩みを抱えているか、何を考えているのかを知らない。
藤野の両親も娘の涼子から苦しんでいたことを聞かされ、もし涼子が柏木君や浅井さんのように突然亡くなったとしたら、そんな悩みを抱えていたことを知らなかったままなのだと漏らす。
大人になってしまうと、自分が子供の頃に持っていた子供なりの思いがあったことを忘れてしまっている。
物事をごまかし、自分を正当化するチエだけがついてしまっていると校長先生は自戒する。
裁判を生徒はもとより父兄たちも傍聴している。
事件に関係する生徒の親たちがそれぞれ傍聴していて、審理の進行に応じてその表情が挿入されるが、亡くなった柏木君の両親もそれらの保護者と同一線上だったのはどうなのだろう。
事件の真相が明らかになった時点で、一番大きなショックを受けたのは柏木君の両親だったのではないか。
警察において自殺と認定されていたが、両親としてはそうだとすればその原因を知りたかったはずだ。
皆と同様に柏木君の両親も真実を知ったわけで、その時の心情はどうだったのかとの疑問が脳裏をよぎった。
無理解、理不尽などが子供たちに降り注いでいるのだが、それを乗り越えて僕も大人になってきたし、子供たちも成長していく。
心の闇や苦悩を抱えながらも、それでも前に進もうとする強い意志をもつこと、どんなに傷ついても真実に向き合うことで、子供たちは成長するのだと思わされる。
三宅樹理が浅井松子の両親に謝り、両親が「松子が見守っているからね」と励ますシーンに胸打たれた。
人に対してはそんな寛容さと愛情を持ちたいものである。
オーディションで選ばれた子供たちに拍手を送りたい一篇である。
主演の藤野涼子にとっては、この先が楽しみと感じさせるデビュー作となったが、次回作でいい作品に巡り合えば性格俳優として成長していくのではないかと思った。
監督 成島出
出演 藤野涼子 板垣瑞生 石井杏奈
清水尋也 富田望生 前田航基
望月歩 西村成忠 西畑澪花
佐々木蔵之介 夏川結衣 永作博美
小日向文世 黒木華 尾野真千子
ストーリー
クリスマスに謎の死を遂げた城東第三中学校の2年A組生徒・柏木卓也(望月歩)。
当初は自殺と思われたその死に対し、いじめグループを率いる問題児・大出俊次(清水尋也)による殺人という匿名の告発状がバラまかれ、事態は急展開を見せる。
殺人を告発する目撃者からの手紙、過熱報道、連鎖していく事件により学校は混乱していたが、大人たちは保身に走る一方だった。
そして2年A組のクラス委員・藤野涼子(藤野涼子)は、大人たちを排除し、中学生だけで真相究明の学校内裁判を開くことを提案する。
やがてそれは様々な困難を乗り越え、ついに実現することに。
こうして検事役には藤野涼子、一方の弁護人を他校の生徒・神原和彦(板垣瑞生)が務め、大出俊次を被告人とする学校内裁判が開廷する。
白熱した審理が進む中、争点は次第に事件当夜の被告人のアリバイに絞られていくが…。
学校内裁判は6日間にわたって行われ、生徒の保護者や関係者も傍聴できるようになっていた。
学校内裁判に現れたたくさんの証言者は、事件の謎を次々と証言していく。
大出俊次の不良仲間だった井口充(石川新太)や橋田祐太郎(加藤幹夫)、大出俊次のアリバイを証言した弁護士、告発文について証言した三宅樹里(石井杏奈)。
そしてついに、事件の真相を知っていた証言者が現れる。
そして、6日目、予定通り陪審員によって大出俊次の判決が下される。
果たして真実は、明らかになるのだろうか。
寸評
前篇は事件が起こりさまざまな謎が提示されたが、裁判を描く後篇は息詰まる法廷劇になっている。
脚本的に未成熟なところもあるように感じるが、それを補うように生徒役の子供たちが素晴らしい演技を見せる。
彼等の演技は未熟なところもあるが、その未熟さが返って等身大の若さをスクリーンにあふれさせていた。
前篇以上に子どもたちが中心のドラマになっていて、ほとんどが体育館での裁判シーン。
その校内裁判の描写は緊張感にあふれ見事なものだったと思う。
学校でのイジメ、大人や子供の嘘、親子愛、家庭環境、不条理がまかり通る現代社会への警鐘などといった問題も浮き彫りになってくる構成もいい。
事勿れ主義だった先生や、ワイドショー的に報じたマスコミへの糾弾はなく、死亡した柏木くんと神原君の特別な関係の説明不足等粗さも目立つが、子供たちの成長する姿を見ることは僕のような初老の者にとっては嬉しくなってくる。
物語を補足するエピソードが裁判劇の脇を固めるが、なかでも永作博美演じる母親の屈折した愛情は強烈だ。
母親は娘を溺愛しているが、ある時娘から「あんたがそこまでバカだったとは思わなかった」と意思表示される。
そんな母親を永作が狂気じみた表情で演じて、強烈な存在感を見せていた。
親たちは子供がどのような状況に置かれ、どのような悩みを抱えているか、何を考えているのかを知らない。
藤野の両親も娘の涼子から苦しんでいたことを聞かされ、もし涼子が柏木君や浅井さんのように突然亡くなったとしたら、そんな悩みを抱えていたことを知らなかったままなのだと漏らす。
大人になってしまうと、自分が子供の頃に持っていた子供なりの思いがあったことを忘れてしまっている。
物事をごまかし、自分を正当化するチエだけがついてしまっていると校長先生は自戒する。
裁判を生徒はもとより父兄たちも傍聴している。
事件に関係する生徒の親たちがそれぞれ傍聴していて、審理の進行に応じてその表情が挿入されるが、亡くなった柏木君の両親もそれらの保護者と同一線上だったのはどうなのだろう。
事件の真相が明らかになった時点で、一番大きなショックを受けたのは柏木君の両親だったのではないか。
警察において自殺と認定されていたが、両親としてはそうだとすればその原因を知りたかったはずだ。
皆と同様に柏木君の両親も真実を知ったわけで、その時の心情はどうだったのかとの疑問が脳裏をよぎった。
無理解、理不尽などが子供たちに降り注いでいるのだが、それを乗り越えて僕も大人になってきたし、子供たちも成長していく。
心の闇や苦悩を抱えながらも、それでも前に進もうとする強い意志をもつこと、どんなに傷ついても真実に向き合うことで、子供たちは成長するのだと思わされる。
三宅樹理が浅井松子の両親に謝り、両親が「松子が見守っているからね」と励ますシーンに胸打たれた。
人に対してはそんな寛容さと愛情を持ちたいものである。
オーディションで選ばれた子供たちに拍手を送りたい一篇である。
主演の藤野涼子にとっては、この先が楽しみと感じさせるデビュー作となったが、次回作でいい作品に巡り合えば性格俳優として成長していくのではないかと思った。