おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シャレード

2019-07-28 13:26:43 | 映画
「シャレード」 1963年 アメリカ


監督 スタンリー・ドーネン
出演 オードリー・ヘプバーン
   ケイリー・グラント
   ウォルター・マッソー
   ジェームズ・コバーン
   ジョージ・ケネディ
   ネッド・グラス
   ドミニク・ミノット
   ジャック・マラン

ストーリー
スキー旅行先で、富豪の夫・チャールズとの離婚を決意したレジーナ・ランパート。
旅行からパリの自宅に戻ると、家財道具一切が部屋から持ち出されており、夫の姿も見えない。
そこへ、司法警察のグランピエール警部が現れ、チャールズの死を告げる。
警察署で、夫の遺品を受け取ったレジーナだが、小さなバッグに手帳、櫛、万年筆、レジーナに宛てた未投函の手紙などのほか、パスポートが4通もあったことが不信感を呼んだ。
家具を売り払われ、電気も止められて途方にくれるレジーナのところへ、スキー旅行先で知り合ったピーター・ジョシュアが現れ、「何か協力できることはないか」と申し出る。
チャールズの葬儀は寂しいもので、出席者はレジーナと、レジーナの親友でスキー旅行に同行したシルヴィ、そしてグランピエール警部だけであった。
途中でギデオン、テックス、スコビーという男たちが次々と現れて、チャールズの死亡を確認していく。
レジーナはアメリカ大使館のバーソロミューに呼び出され、チャールズの素性を知らされた。
証拠写真には、若い頃の夫・チャールズと、葬儀に現れた3人が一緒に写っていた。
一味は第二次世界大戦中に25万ドル相当の金塊輸送任務に当たっていたが、それを隠して終戦を迎え、チャールズが金塊をこっそり掘り返し、独り占めにして持ち去ったのだという。
チャールズが持ち去った25万ドルのありかは妻のレジーナが知っているに違いないと信じたギデオン、テックス、スコビーの3人がレジーナの前に現れ、「金をよこせ」と脅迫する。
3人の脅迫からレジーナを守ろうとするピーターに、レジーナは好意を持ち惹かれ始める。
しかしスコビーからの電話忠告により、レジーナの中には、ピーターも実は3人の仲間ではないかとの疑いが芽生え始めた。


寸評
始まってすぐに列車から死体が転げ落ちてサスペンスムードをだす。
そこからアナログ的ではあるがポップなタイトルバックとなり、ヘンリー・マンシー二の美しいテーマ曲が流れ出すと、サスペンスだけれどロマンチックな作品なんだろうなという気分になる。
作品全体の雰囲気を知らせるこのオープニングタイトルはいい。

ファーストシーンで雪山を背景にリゾートホテルのベランダでくつろいでいるレジーナ・ランパートのオードリー・ヘプバーンが登場する。
ジバンシーの衣装に身を包んだ彼女はたまらなくエレガンスである。
彼女を狙ってピストルが突き出て、早くも事件発生かと思わせるが、実はレジ-ナの友人シルヴィの息子の水鉄砲によるイタズラだったというコミカルな出来事だった。
この一件でこの作品のもう一つの特徴であるコミックのイメージが湧き上がる。
同時にこの少年を通じて重要な伏線が張られる。

この後はドンデン返しに次ぐドンデン返しで、ストーリ展開の妙がうかがえる。
家具も売り払われ電気も止められてしまった自宅で途方にくれるレジーナのもとへ、スキー旅行先で知り合ったピーターが現れ、更にもう一つの特徴のロマンチック・ムードが匂いだす。
一転するのがその後に行われた葬儀の場面で、そこではギデオン、テックス、スコビーという謎の男たちが突然現れチャールズの死亡を確認し去っていく。
そのミステリーシーンでもグランピエール警部に爪を切らせて笑いを取り、コミカルさを忘れていない。

持っている自身のキャラクターからも、それまでの様子からも明らかに健全な紳士に見える ケイリー・グラントが実はという展開がドンデン返しの始まり。
そこからは犯人たちと亡夫との関係や、ピーターは一体何者なのかという疑問を投げかけながら、話がテンポよく進んでいく。
緊迫したムードを出していってもいいはずなのに、グランピエール警部ののんびりとした対応や、オードリー・ヘプバーンとケ―リー・グラントが繰り広げる恋模様が、サスペンスよりもロマンチック・ムードを出していって、観客をうっとりさせるので、ハラハラドキドキするよりも、ホンワカした雰囲気に浸れるのがこの作品のいいところだ。

三人組がものすごい凶悪犯という風には見えないし、子供を人質にとっても危害を加えるわけでもなく優しいものなことも犯罪ドラマの要素を薄めている。
しかし三人組の一人が殺される辺りからサスペンスムードが一気に走り出す。
観客にとっても抱き続けた疑問と同時に、「もしかしたら犯人は…」の気持ちが湧いてきて、物語が終盤に差し掛かっていることを実感する。
追い込みも一気で、あることが判明して観客はすべてを理解する。
そしてラストシーンのコミカルさとホンワカムードにとどめを刺される。
スタンリー・ドーネンが、洒落たセンスを活かして作り上げたミステリー・コメディの傑作と言える。