おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シャイニング

2019-07-22 08:14:28 | 映画
「シャイニング」 1980年 アメリカ


監督 スタンリー・キューブリック
出演 ジャック・ニコルソン
   シェリー・デュヴァル
   ダニー・ロイド
   スキャットマン・クローザース
   バリー・ネルソン
   フィリップ・ストーン

ストーリー
ジャックは、オーバー・ルック・ホテルで支配人と会い、そこに管理人として住み込む話を進めていた。
その頃、ジャックの家では、息子ダニーが母親ウェンディと食事をしながら浮かない顔をしていた。
友だちのいない彼は、自分の中にトニーというもう一人の人間を育てており、そのトニーがホテルに行く事に賛成していないのであった。
その時、ダニーの目の前で幻想ともつかぬ恐ろしい光景がよぎる。
それはエレベーターの扉から滝のように流れ出るおびただしい量の血と、その前に立ちつくす双児の少女の不気味な姿だった。
やがて、一家三人は大自然の中に建てられたオーバー・ルック・ホテルに到着し、一家三人だけの孤独な生活がはじまった。
ジャックの頭の中には、支配人が語ったある惨劇のことがちらついていた。
それは、ジャックの前任者の管理人グレイディという男のことで、彼は、この生活のあまりの孤独のために気が狂い、妻と二人の娘を斧で殺し、自分も自殺したということだった。
ホテルが閉鎖される日、黒人の料理人ハロランと二人になった時、ダニーは“シャイニング”という、幻視超能力の話をハロランから聞き、何げなく237号室のことを訊くが、彼は驚きの表情を見せるだけだった。
一方、ジャックは、作家という仕事柄、静かなホテルの一室で書けることはこの上なく好都合だったが、いざ始めてみると苛立つばかりで進まない。
妻のウェンディは、そんなジャックの様子を見て不安になった。
そして、三人の緊張に満ちた不安定な生活が遂に惨事を生むまでにいたる。


寸評
僕は原作を知らない。
謎めいたホラー映画で時々難解な場面もあるが、僕はラストシーンの写真を見て「ジャックは生まれ変わりだったのだ」と自分なりの理解を得ることが出来た。
では一体誰の生まれ変わりだったのか。
それはジャック自身の生まれ変わりであり、グイレディの生まれ変わりでもあったのだ。
もっと言えば、ジャックはグレイディその人でもあったのだと思う。
ジャックはかつて家族を惨殺し自殺したグレイディと出会うが、グレイディはジャックに「あなたこそ、このホテルの管理人です。ずっと昔から」と語っている。
個々でのショットが独特なもので、僕にはジャック=グレイディを想像させるものだった。
一方で、グレイディ自身もホテルの支配人からはチャールズ・グレイディと説明されていたのに、ジャックと会話するときにはデルバート・グレイディと名前を変えている。
ジャック≠グレイディだったとしても、グレイディも輪廻を繰り返しているのかもしれない。
支配人によって、管理人だったグレイディという男は、ここでの生活があまりにも孤独なために気が狂い、妻と二人の娘を斧で殺し自分も自殺したと語られている。
その呪いがこのホテルに取り付いていると思われるし、実はむごたらしい惨殺事件はずっと繰り返されてきたのだと想像させる。

ジャックの息子である幼いダニーは超能力を有していて、言葉を発せずに会話できるし、未来を予見する能力があり、トニーというもう一人の人間を自分の中に育てているのだが、このトニーが未来を予見していると思われる。
ダニーはトニーの声でホテルに行きたくないと言い、「パパはママや僕にひどいことをしないよね」と未来を予見したようなことを言っている。
ダニーと同じような超能力を得ているのが料理人のハロランだが、このハロランの存在はいささか影が薄い。
237号室のことを伝えたり、ダニーたちを救出に向かうがあっけない結末を迎える。
シャイニングを得ているハロランならば、もっと活躍する場面があっても良さそうだし、あるいは呪いの力をもっと示す存在になっても良かったと思うのだが・・・。

今では当たり前になっている手振れのないカメラ=ステディカムだが、普及させたのはこの作品からといわれていて、そのステディカムが効果的に使われている。
ダニーが三輪車でホテルの廊下を走り回っている姿を追うカメラは、従来だとレールの上の台車に乗って移動していたが、ここではステディカムがダニーの全身を捉えながらブレることなく追いかけている。
同じことが雪の迷路でジャックがダニーを追いかける場面でも行われている。
当時は実に新鮮に感じたシーンだった。
その迷路をジャックは抜け出すことが出来ず凍死してしまっているが、おそらくジャックは再び蘇ってくるのではないかと思うし、それを思わせるラストシーンである。
そしてジャックを閉じ込めた迷路を象徴として、冬の間だけ管理人だけを住まわせるこのホテルそのものが人々を喰いつくしているようにも思えてくる奥深い作品だ。