「あゝ、荒野 後篇」 2017年 日本
監督 岸善幸
菅田将暉 ヤン・イクチュン でんでん
木村多江 ユースケ・サンタマリア
木下あかり モロ師岡 高橋和也
今野杏南 山田裕貴
ストーリー
2022年の東京・新宿。
新次(菅田将暉)が憎む相手・山本裕二(山田裕貴)に人気が出始めていた。
世間では社会奉仕プログラムの是非が取り沙汰されており、反対のデモも続いていた。
高齢化も進み、結婚式場が葬儀場に変わっていた。
ある日、建二は書店でお腹の大きな女性・恵子(今野杏南)が不正出血する場に居合わせ助ける。
病院へ連れて行った建二は、恵子は無事だったが赤ん坊は駄目だったと聞かされ、やるせない思いを抱く。
恵子の腹の子の父は、公開自殺した川崎敬三(前原滉)だった。
再会した新次の母・京子(木村多江)がやってくると、『帰還兵たちの闇』という本を置いていった。
新次の父は帰国後に自殺したのだが、その時の上司が建二の父・建夫(モロ師岡)だった。
新次と親しくなった芳子(木下あかり)は東日本大震災で母と共に生き残ったものの、親戚も知り合いも津波で亡くし、故郷に母を置いて家を飛び出している。
新次とライバルの山本裕二(山田裕貴)との対決が決まった。
その矢先、ジムに宮木社長(高橋和也)が「二代目」石井(川口覚)を連れてきた。
石井は『海洋(オーシャン)拳闘ボクシングジム』のスポンサーである会長の息子だった。
新次は裕二との試合に勝利したものの、嬉しく感じられなかった。
新次と戦いたくなって山寺ジムに移籍した建二(ヤン・イクチュン)は目標ができて、それまでの悩みをふっ切ったように連勝を続けた。
建二が二代目に頼みこみ、新次との対戦が決まった。
今や建二の方が有名になっていた。
戦いは熾烈で、新次は第1ラウンドから重い拳を腹に受けた。
寸評
後半に入り物語は面白みを増していき、まず新次の父親の上官が建二の父親だったことが判明する。
部隊が攻撃を受け、新次の父は恐怖のあまり逃亡したので建二の父親から懲罰を受けていた。
今のところ自衛隊は訓練だけで実戦を経験していない。
海外派兵を受けた人が帰国後に精神的に異常をきたしたという話が漏れ伝わってきている。
事の真偽は分からないが、戦闘に参加していればそのような人はもっと出るのかもしれない。
実戦経験を積んでいない自衛隊の実力がどの程度のものか不明だが、自衛隊が専守防衛に徹することが出来ていることは自衛隊員にとっても日本国にとっても幸せなことだと思う。
バラバラだった人たちが吸い寄せられるように関係を結んでいく。
新次は宮本の秘書を務める母と打ち解けはしないが出会うことが多くなっている。
芳子の母は芳子を探して新宿に出てきていて、片目が馴染みにしているBar『楕円』に従業員として勤めだす。
自殺した川崎の子を宿した恵子は破水したところを建二に助けられる。
新たに登場した二代目の石井という男は、もしかすると彼も淋しい男で、建二にホモセクシャルな感情を抱いているのかもしれない描き方で、建二とのペアは摩訶不思議な雰囲気を出して作品的に面白さを生み出している。
新次と建二のボクシングを取り巻く環境も進展を見せてくる。
新次と宿命のライバル裕二との試合が実現するが、この試合はあの「ロッキー」とはまた違った迫力でもって描かれている。
二人のボクシングは因縁も絡んでボクシングに形を借りた喧嘩の様であり、菅田将暉の表情もスゴイ。
反則も繰り出しながら死闘を繰り返すシーンは臨場感もありなかなかいい。
試合が終わり、顔が滅茶苦茶に腫れあがった裕二が車椅子に座った劉輝に頭を下げるシーンには自然と感動が湧き上がってきた。
建二は新次が裕二という男を憎しみと言う感情ながらも、裕二と同じ空間にいる事を羨ましく思っている。
自分と係わりのある人がいる事、自分が必要とされていること、自分がいる場所があることは生きていくための支えであり、建二は海洋ジムと新次にそれを見出していたのだろう。
建二は新次から「俺は俺、兄貴は兄貴。違う道、走ってるんだ」と言われ、絶望感と共に新次と繋がっていたいと思う気持ちが無性に湧いてきたに違いない。
その気持ちの昇華が見られるのが彼等の対戦シーンだ。
建二がダウンしそうな新次を倒れないように抱きかかえるのは、まだまだ戦っていたい気持ちの表れだ。
彼らがつながった瞬間だが、言葉で表すとその気持ちは新次の母が叫ぶように「殺せ!」となる。
登場人物たちは皆、新宿という街の底辺で生きている人々なのだ。
建二は新次から受ける拳の数をかぞえはじめ、立ったまま防御もせずただパンチを受けるだけとなる。
見かねた二代目がタオルを投げるが、リングを鳴らす槌を宮木社長が奪って「、最後まで戦わせろ」と叫ぶ。
最後まで戦った建二の結末により、建二のことが永遠に新次の心に刻み込まれることになったと思う。
日本映画におけるボクシング映画としては間違いなく上位にランクされる作品だと思うが、この内容を描くのにこれだけの時間が必要だったのだろうかの疑問は残った。
監督 岸善幸
菅田将暉 ヤン・イクチュン でんでん
木村多江 ユースケ・サンタマリア
木下あかり モロ師岡 高橋和也
今野杏南 山田裕貴
ストーリー
2022年の東京・新宿。
新次(菅田将暉)が憎む相手・山本裕二(山田裕貴)に人気が出始めていた。
世間では社会奉仕プログラムの是非が取り沙汰されており、反対のデモも続いていた。
高齢化も進み、結婚式場が葬儀場に変わっていた。
ある日、建二は書店でお腹の大きな女性・恵子(今野杏南)が不正出血する場に居合わせ助ける。
病院へ連れて行った建二は、恵子は無事だったが赤ん坊は駄目だったと聞かされ、やるせない思いを抱く。
恵子の腹の子の父は、公開自殺した川崎敬三(前原滉)だった。
再会した新次の母・京子(木村多江)がやってくると、『帰還兵たちの闇』という本を置いていった。
新次の父は帰国後に自殺したのだが、その時の上司が建二の父・建夫(モロ師岡)だった。
新次と親しくなった芳子(木下あかり)は東日本大震災で母と共に生き残ったものの、親戚も知り合いも津波で亡くし、故郷に母を置いて家を飛び出している。
新次とライバルの山本裕二(山田裕貴)との対決が決まった。
その矢先、ジムに宮木社長(高橋和也)が「二代目」石井(川口覚)を連れてきた。
石井は『海洋(オーシャン)拳闘ボクシングジム』のスポンサーである会長の息子だった。
新次は裕二との試合に勝利したものの、嬉しく感じられなかった。
新次と戦いたくなって山寺ジムに移籍した建二(ヤン・イクチュン)は目標ができて、それまでの悩みをふっ切ったように連勝を続けた。
建二が二代目に頼みこみ、新次との対戦が決まった。
今や建二の方が有名になっていた。
戦いは熾烈で、新次は第1ラウンドから重い拳を腹に受けた。
寸評
後半に入り物語は面白みを増していき、まず新次の父親の上官が建二の父親だったことが判明する。
部隊が攻撃を受け、新次の父は恐怖のあまり逃亡したので建二の父親から懲罰を受けていた。
今のところ自衛隊は訓練だけで実戦を経験していない。
海外派兵を受けた人が帰国後に精神的に異常をきたしたという話が漏れ伝わってきている。
事の真偽は分からないが、戦闘に参加していればそのような人はもっと出るのかもしれない。
実戦経験を積んでいない自衛隊の実力がどの程度のものか不明だが、自衛隊が専守防衛に徹することが出来ていることは自衛隊員にとっても日本国にとっても幸せなことだと思う。
バラバラだった人たちが吸い寄せられるように関係を結んでいく。
新次は宮本の秘書を務める母と打ち解けはしないが出会うことが多くなっている。
芳子の母は芳子を探して新宿に出てきていて、片目が馴染みにしているBar『楕円』に従業員として勤めだす。
自殺した川崎の子を宿した恵子は破水したところを建二に助けられる。
新たに登場した二代目の石井という男は、もしかすると彼も淋しい男で、建二にホモセクシャルな感情を抱いているのかもしれない描き方で、建二とのペアは摩訶不思議な雰囲気を出して作品的に面白さを生み出している。
新次と建二のボクシングを取り巻く環境も進展を見せてくる。
新次と宿命のライバル裕二との試合が実現するが、この試合はあの「ロッキー」とはまた違った迫力でもって描かれている。
二人のボクシングは因縁も絡んでボクシングに形を借りた喧嘩の様であり、菅田将暉の表情もスゴイ。
反則も繰り出しながら死闘を繰り返すシーンは臨場感もありなかなかいい。
試合が終わり、顔が滅茶苦茶に腫れあがった裕二が車椅子に座った劉輝に頭を下げるシーンには自然と感動が湧き上がってきた。
建二は新次が裕二という男を憎しみと言う感情ながらも、裕二と同じ空間にいる事を羨ましく思っている。
自分と係わりのある人がいる事、自分が必要とされていること、自分がいる場所があることは生きていくための支えであり、建二は海洋ジムと新次にそれを見出していたのだろう。
建二は新次から「俺は俺、兄貴は兄貴。違う道、走ってるんだ」と言われ、絶望感と共に新次と繋がっていたいと思う気持ちが無性に湧いてきたに違いない。
その気持ちの昇華が見られるのが彼等の対戦シーンだ。
建二がダウンしそうな新次を倒れないように抱きかかえるのは、まだまだ戦っていたい気持ちの表れだ。
彼らがつながった瞬間だが、言葉で表すとその気持ちは新次の母が叫ぶように「殺せ!」となる。
登場人物たちは皆、新宿という街の底辺で生きている人々なのだ。
建二は新次から受ける拳の数をかぞえはじめ、立ったまま防御もせずただパンチを受けるだけとなる。
見かねた二代目がタオルを投げるが、リングを鳴らす槌を宮木社長が奪って「、最後まで戦わせろ」と叫ぶ。
最後まで戦った建二の結末により、建二のことが永遠に新次の心に刻み込まれることになったと思う。
日本映画におけるボクシング映画としては間違いなく上位にランクされる作品だと思うが、この内容を描くのにこれだけの時間が必要だったのだろうかの疑問は残った。