「結局、俺エライ病のオトコの末路って感じですね。上から目線オトコって、結局、こうなっちゃうんですよね」
と、貴島くんがミント・ジュレップを飲みながら、言葉にする。
「まあね。舛添さんは、政治家になろうとしてたけど、途中から「どういう理由をつければ、政治資金を上手く使えるか」を」
「求めちゃって・・・なんでも政治資金にしちゃう方法を見つける事に終始しちゃったからね」
と、僕。
「だいたい、政治家として、その本文である「政治」・・・コメ農家相手にやさしい言葉を出す方法を忘れて」
「自分の事ばっか考えちゃったからね・・・そりゃあ、総スカンを食うよ」
と、僕。
「結局、名古屋の河村たかし市長に言われてたけど、「政治家はルイ16世になったら、あかん。税金を入れてくれる身になって」」
「「考えねば、ただのエラそうな人間になるだけだ」ってね」
と、御島さん。
「政治家なんて、ひとつもエラクはないのよ。日本って、そういう国でしょ。自分でエライと言ってはダメなの」
「むしろ、周囲の人間にこそ、「あの人はエライよ」と密かに思われたりすることで、その人の価値が出るんだもの」
「そっちこそ、「主」なのにね。本末転倒しているわ、あのひと・・・」
と、御島さん。カシスオレンジを飲んでいる。
「そこが難しい所なのよね。「信なくば立たず」って言うけど、「信」って結局、ベクトルで言えば、一般の人々から出たベクトルで」
「そのベクトルの先に人が立っていれば、「信」になるの。そのベクトルの先の人こそ、「政治家」と呼ばれるのよ」
「「政治家」は何も出せないの」
と、御島さん。
「でも、今回はひどかったですね。メディアに対する対応の仕方が・・・対人間のやり方じゃない」
「結局、舛添氏は、自分は限りなくエライと思っていて、一般の庶民には限りなく冷たくして、お金は政治資金としてつけ回せば」
「いいと考えている。人は良く物を見ている・・・って事、忘れちゃったのかな」
と、貴島くん。
「政治資金の説明の仕方もどうにいったものだったわね」
「①小さな事は、自分が間違えたと正直に謝る」
「②言い逃れ出来そうなら「それは野球がオリンピックの種目になりそうだから」のように理由をつけて逃げ延びる。もちろん、招待相手は口を閉ざす」
「③ヤバイ内容に触れそうになったら、「政治的な機微に触れる」として口を閉ざす」
「④絶対的にヤバイとなると「記憶にございません」で逃げる」
「・・・おおまか、この四種のタイプに分けて、うまく答えていたわ」
と、御島さん。
「結局、そういう言い訳をすれば、逃げられると思ったんでしょうね。つまり、一般市民をどこまでも馬鹿にして、政治の相手を一切明かさない」
「・・・これが彼の真理の羊蹄でしょうね。どこまで馬鹿にしても、一般市民はわからないと踏んでたんでしょう」
と、僕。
「わたしは彼は・・・一般市民を二種類いると踏んでたと思うんです。頭のいい一般市民とそうでない一般市民」
「彼は基本的に頭のいい一般市民を相手に言葉を出してたと思うんです。でも、それは中くらいの頭って事で、彼の頭の中では頭のいい一般市民は騙せたと信じていた」
「政治の内容や、招待相手、政治的機微・・・すべて口にしなかったですからね。さらに彼は常に上から教えてやるぞ・・・の精神でしょう?」
「だから、どんな質問にも誠心誠意答えた・・・無論、教えてやるぞの精神で、端から騙すつもりだったから・・・それこそ、懇切丁寧に、ね・・・」
と、辛辣姫。
「結局、そういうカラクリがすべてだったのね。お金は政治資金としてつけ回せばいい・・・これを悟られぬように、説明するのがすべてだったから・・・と言ってもわかるはずは」
「なかった・・・なにしろ、小さい時から秀才で、俺エライ病に浸りきっている人間だから、まさか、自分が追い込まれるとはつゆとも思わなかったからね」
と、御島さん。
「なるほど。じゃあ、彼は3種類の一般市民がいると考えていたんだ。つまり、3種類目の人間こそ、彼と対等にしゃべれる人間って、「政治家」と名のついた人間だと思っていた」
「だから、「同じ穴のムジナ」だからこそ、普段のお金を政治資金として、付け回している「政治家」だけが、対等にしゃべれる人間だったんだ」
と、僕。
「そういう事。彼はそこで大きな間違いを起こしているわ。大事な事は「舛添氏ほどの脳みその持ち主なんて、ざらにいる」って言う事ね」
「だいたい、俺エライ病になった時点で、この世では終わっているもの」
と、御島さん。
「さすがに鋭いなあ、御島さんは。ちょっと頭のいい人間は政治家になるって言われていますからね」
と、貴島くんが舌を巻いている。
「ま、そいう事」
と、御島さんは舌を出している。
「彼の場合、自民党を出て、新党改革を作った時点で終わりだったね。自民党にいる時が絶頂期だった。わざわざマスコミを呼んで、親孝行なゴミ出しオヤジのパフォーマンスまで」
「行っている。実際はそうじゃないのに、あの時の舛添氏を最近まで彼の本当の姿だと信じていた人間も多いけど、あれは単なるマスコミと共闘したパフォーマンスに過ぎないよ」
と、僕。
「彼は自民党時代、次期党首としての期待もあったんですよね」
と、貴島くん。
「ああ。東大出の「俺エライ病」風情が、「頭がいい」だの「エリート」だの吹きこまれて、参院選に出てみれば、たくさんの票をとって、当選だろ」
「それで「次期党首」だなんて言われたら、舞い上がるのもいいところだよ。結局、自民党が下野した所で、「自分で風を吹かしたる」ってんで、その受け皿ともいうべき」
「新党改革を作って、恩義こそありはすれ、自分を盛り上げてくれた「自民党」に後ろ足で砂をかけて出て行ったんだからね。その行為こそ彼の本質だよ」
「自分に利害をくれる人間以外には、冷たいんだよ。義理も人情も無視するし、ね。日本人として、政治家として、一番やっちゃいけない事だ・・・」
と、僕。
「新党改革づくりが彼を勘違いさせたんでしょうね」
と、貴島くん。
「ああ。そういう事だ。この頃から、彼は普段のお金を政治資金としてツケ回し始めている。「自分はそれが許される人間だ」と思い始めたんだろうね」
と、僕。
「その瞬間から、終わりは見えていたのね。お金絡みで東京都知事を辞めた前知事のおかげでくすぶっていた彼に大いなる野心を増上させたからね・・・」
と、御島さん。
「そこからは、見ての通り。結局、彼は自分の給金にまで手を付け、無給とまで言ったのに、誰も相手にしてくれなかった」
「ま、泣き落としや自分の家族の話などは、何のプラスにもならなかったからね。ま、最後のあり方を見れば、ただのけつの穴の小さい、口の臭いおっさん・・・それだけだよ」
と、僕。
「結局、ただのけちか。けちにすれば、無給って言うのは、最大限のサービスだもんね」
と、御島さん。
「そういう事。最大限の譲歩も・・・無給と言う・・・通用しなかったから、そこで初めて慌てたのかもね」
と、僕。
「けち・・・なにしろ、誰にも何一つおごらなかったじゃない。最悪ね・・・」
と、辛辣姫。
「結局、この舛添って人、なんだったのかしら。突然、都知事と言う、大きなお金を使える事になって狂喜乱舞しちゃった・・・俺エライ病のただのけち?」
と、御島さん。
「そうだね。だから、俺エライ病は、怖いんだよ・・・」
と、僕は言うと、のんびりとジントニックを飲み干した。
(つづく)