「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「由美ちゃん物語」(50)

2010年05月25日 | 過去の物語
「○○くん、新聞記者が来たようだ。今、玄関で足止めしているから、家元を連れて行くよ。そしたら、こちらへ通すから」

と水島社長が部屋に入ってくるなり、早口で捲くし立てます。

「わかりました。じゃあ、佳乃さん、くれぐれも顔をお出しにならないように。あなたの存在もできれば勘づかれたくない」

と、僕が言うと、佳乃さんは、

「わかりました。わたしもそこはしっかりと対応するつもりよ。心配しないで」

と、胸を張ります。

「じゃあ、お願いします。水島社長。新聞記者をここで応対します」

と僕が言うと、水島社長は、目を合わせながら、

「くれぐれも用心してな。撃退してくれ、とは言っても、危険なことにならんようにな」

と、真顔で言ってくれます。こちらの身を心配しての言葉だということが、だだわかりです。

「大丈夫ですよ。危険なことはしませんから。それに、相手も人間だ。全ては、まず、話しあってみてからです」

と、僕が言うと、水島社長は、

「そうだな。それが一番いい。それでこそ、安心して頼めるということだ」

と、ほっとしながら、ほほえみます。

「期待しているよ」

と、水島社長は、付け加えると、佳乃さんを伴って部屋を出ていきます。

「がんばって!」

と佳乃さんが、エールをくれます。

僕らはそれににこやかな笑顔で返すと、由美ちゃんと二人、目を合わせてうなずきあいます。

「やるぜ!」「うん!」

と言いあうと、早速戦闘開始です。

「こちらです」

と、お手伝いさんに案内された青年が入ってきます。

身長は180センチ程度でしょうか。20代後半くらいの、顔の小さい色白で細身のイケメン青年がこちらを見て少しおどおどします。

「あ、あのう。水島社長は?」

と、尋ねるとポカンとした顔で僕らを見つめます。

「水島社長から頼まれまして、代理人として、あなたに会うように頼まれた者です」

と、僕が自己紹介をすると、イケメン青年は、とりあえず、自己紹介をします。

「新系新聞社の記者、御幸真一です。水島社長自らお話を伺いたかったのですが・・・」

と少し落胆するような感じで、話しています。

「僕らは別に取材の妨害活動のためにいるわけではありません。ただ、何をどのように取材したいのか、それをまず聞きたいだけですから」

と、僕が真意を相手に話します。御幸は、僕ら二人を眺めると、由美ちゃんを見て

「あなたも、そのように頼まれているのですか?」

と質問します。

「ええ。二人で、あなたの話を聞くように、と。女性の感性も大切ですからね」

とにこりとほほえむ由美ちゃんです。御幸は、そのほほえみに、どきりとしたようで、その意味するところを理解したようです。

なかなか、洞察力の鋭い記者ということになりますね。

「えーと、まず、お二人に、お名前をお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか」

と、態勢を立て直した記者は、早速取材するつもりのようです。

「○○です」「由美です」

と、僕らが名を名乗ると、

「で、お二人と水島社長の関係は?」

と、取材攻勢をかけてくる御幸記者です。

「友人関係です」

と、僕が言うと、御幸記者は、

「ほう。若い友人がいたものですね。あなた方二人の関係は?」

と、立て板に水を流すように、流れるような質問ぶりです。

「恋人同士です。愛し合っているんです」

と、これは由美ちゃんが答えます。

「ほう。それは、うらやましい。こんなお美しい方に一度でも愛されてみたいものですね」

と、お愛想というわけでもなく、本気で思っているような口ぶりの御幸記者です。

「お互いの紹介はそれくらいでいいだろう。さ、取材意図を教えてもらおうか」

と、僕が口を開くと、急に強い目で睨み返してくる御幸記者です。

「取材意図を話せば、水島社長に会わせてもらえるんですよね」

と、取引をしかけてくる御幸記者です。

「そんなことは、約束できねえな。だいたい取材意図を明かす義務は記者にあるはずだろ?」

と、相手の取引を却下し、義務の履行を迫る僕です。

「それに、会わせないと言っているわけでもない。要は、お互いが納得するような事実を引き寄せればいいんだろ?あんた」

と僕がさらに続けると、彼は不承不承、納得します。

「まあ、そうですが・・・。ほんとうに、納得させて、もらえるんでしょうね?」

と、疑り深い様子を示す御幸記者です。

「このひとは一度約束したら、絶対に違えることはないわ。それは、私からも保証します」

と、由美ちゃんがその疑いを解いています。

「わかりました。そこまで、言われるのなら、あなた方を信じましょう。疑うばかりが能ではありませんからね」

と、打って変わってにこやかなほほえみを見せる御幸記者です。案外、さっぱりとした気性のようです。

「このところ最近になって、難事件と言われ迷宮入りしていた事件が急に解決をみているでしょう?知っていますよね!」

と、御幸は、話し始めます。

「ええ。話題になっていますからね。承知しています」

と、僕が言うと、由美ちゃんも、

「あれ、なぜ、急にそうなりはじめたのかなあって、私も思っていました」

と同意しています。

「僕も何か背後にあるんじゃないか、と思って調べ始めたんです。例えば事件関係者が情報をリークしているとか」

と、御幸は、彼なりの推理を僕らに話しています。

「そこで、いろいろ調べるうちに、怪しい便利屋が浮上してきたんです」

と、御幸は、少し興奮気味に調査結果を僕らに伝えています。

「はやっていそうもないし、お客の出入なんて皆無。しかし、営業を続けているようで、ますます怪しい」

と、御幸は、自分の推理経過を、楽しそうに話します。

「調べてみると、どうも社員はひとり。まあ、社長謙社員みたいな感じなんですね。仕事も持ち込まれてない様子なのに、何やら遅くまで仕事をしている感じなんですよ!」

と、御幸は、調査結果を楽しく話しています。

「そこに、ひとりの紳士が現れた。それが、水島社長だった、というわけです。だから、何の用事で訪れたのか、知りたくなって、こうやってお邪魔しているわけです」

と、御幸は一気にしゃべります。理路整然。よくわかる話です。この御幸記者は、話を整理して話すのがうまいようです。

「糸の先が、水島社長につながっていた。だから、その先を見たくて、こうやって、足を運んでいるわけです」

と、御幸は、説明を終えると、にこやかに僕らを見ます。そして、

「おわかりになったでしょう。僕の取材意図が」

と、御幸は話し、満足感一杯の顔で僕らに同意を求めます。

「なるほど、よーくわかりました。確かに水島社長に会いたくなるわけだ」

と、僕が言うと、御幸は、

「さて、どう対応してもらえますか?今日、会わしてもらえますか?それとも、明日?」

と、回答を要求します。

「まず、この件で、私たちが水島社長と話します。それから、ということになるので、明日、また、ということで、よろしいでしょうか」

と、僕が言うと、御幸は、

「わかりました。まあ、それがベストでしょうね。明日の同じ時刻に、来させてもらいます」

と、あっさりと言います。

「もし、何かあったら、この番号に。携帯ですから、すぐでます」

と、名刺を渡す御幸記者です。そして、ちょっとほほえむと、

「あなたがたで、よかった。話がすいすい進みそうで」

と、にこやかな表情を見せる御幸です。

「それじゃあ、僕はこれで。水島社長によろしく!」

と、御幸はさわやかに言い放つと、部屋を出ていきます。

「ふー」

と息を吐く僕です。すると由美ちゃんが、

「今度は私たちが水島社長に取材する番ね」

と言います。

「そうだな。どういうことなんだろう」

と、僕は訝しげに話します。

「何か秘密がある、ということかしら」

と、由美ちゃんも訝しげです。

「どうやら、水島社長には、俺ひとりで会うほうが、良さそうだな」

と、僕が言うと、由美ちゃんは、

「女性の私はいないほうが、いい、ということ?」

と察しのいいところを見せます。

「まあ、同じ男性同士だけのほうが、話しやすい、ということもあるからね」

と、配慮を見せる僕です。

「そうね。それじゃあ、それは、お任せします」

と、頭を下げて見せる由美ちゃんです。

と、そこへ、水島社長と佳乃さんが入ってきます。

「どうだったね」

と聞く水島社長です。

「撃退できた?」

と聞くのは、佳乃さんです。

「とにかく、今日のところは、帰って頂きました。また、明日来ることになってます」

と僕は、事実を説明すると、

「水島社長、僕と話をする時間をくれませんか。早ければ早い方がいい」

と、水島社長に告げる僕です。

水島社長は、僕の真剣な表情から、何か大事なことを話そうとしている、と察すると、

「わかった。早速、時間をとろう。この場所で、いいかね」

と、言います。

「佳乃さん、由美ちゃんを連れて、また、別室へこもっていてくれませんか。申し訳ないですけど」

と、僕が言うと、佳乃さんは、何かを察し、何も言わずに由美ちゃんを連れて出ていきます。

水島社長は、二人が出ていったのを確認し、ソファーに座り込みます。

「さて、なんだね」

二人の対決が、今、始まろうとしていました。

(つづく)

最新の画像もっと見る