「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(35)(最終回)

2013年12月25日 | 今の物語
「月夜野」では、年末年始もあっという間に終り、時間だけが、光速で過ぎていきました。

「朝日ヘルパー」

の年始の初出勤は、1月4日・・・その日、ミウとヨウコは同僚たちの前に立ち、神妙な顔をしていました。


所長の竹島が皆に向かって話します。

「えー、ということで、二人は目出度く結婚退職ということになりました。今まで、いろいろありがとう。二人は特に美しかったから、喜んでくれたご老人の方々も」

「たくさんいたから・・・二人がいなくなると、寂しがる方々も増えるだろうが・・・ま、結婚ということですから、二人共しあわせになってくださいね」

「わたしからは、以上です。これ、少ないけど、退職金代わりだと思って・・・はい」

と、二人に封筒を渡す竹島所長でした。


「所長さん」「所長さん」


と、ミウとヨウコは少し涙ぐみながら、竹島を見る。

「いいかい。もうこの街には戻ってきてはいけないよ。二人共東京で立派に暮らしていけるんだから・・・しあわせになりなさい。ね」

と、竹島は鷹揚なところを見せて、笑顔で二人に言葉にする。


と、同僚仲間からは、テルコが代表して、ミウとヨウコに言葉を出す。


「最初はどうなるかと思ったけれど、二人は仲良くなったし、素敵な笑顔も増えて・・・今じゃあ、二人共美しい大人の女性だが・・・綺麗になっただが、二人共」


と、テルコは言葉にした。


「「月夜野」さ、卒業だが、おめえら」


とテルコが万感の思いを持って、そんな風に二人に言葉にした。


と、ヨウコがその言葉を受けて、言葉を出します。


「えー。俺がこの街に流れてきたのは、俺を知ってるいろいろな男たちから逃げたかったからです。でも、もうその必要はなくなった」

「俺を愛して、見つめてくれるオトコが出来たから・・・。だから俺はそのオトコの為だけにこれからは生きていく。筋を通しながら。それが俺のこれからの人生です」

「同僚の皆さんにはいつも笑顔を貰って、本当にありがたかったです。こんな俺に笑顔をくれるひとなんて・・・今までの人生の中で、いなかったから・・・」

「だから、すげー、ありがたかったです。これらかは、みなさんがくれた笑顔を糧に、日々をしあわせに生きていこうと思います。皆さん本当にありがとうございました」


と、ヨウコは言葉にすると、神妙な顔で深く深く、お辞儀をしました。

皆は一斉に拍手・・・というより、いつもより断然に綺麗になったヨウコのやわらかい笑顔に、皆、しあわせな表情になっていました。


と、ミウがそのヨウコの後を受けて、言葉を出します。


「皆さん、いろいろありがとうございました。わたしも最初にこの「月夜野」の街に来た時は・・・ほんといろいろなモノから逃げていて、身を隠すためでした」

「いろいろな辛い過去から逃げたかったし、わたしもヨウコと同じで・・・わたしを知っている女性や男性達から逃げたかった・・・」

「言わば、人生をリセットするつもりで、逃げてきたんです。でも・・・人生逃げてばかりではいけないということに気づけて・・・改めて一歩を踏み出してみたら」

「いい出会いがあって・・・紆余曲折があったけど・・・なんとか、今につながりました」

と、言った時、ミウの頬をポロポロと涙がこぼれ落ちました。


ミウは万感の思いになり、言葉になりません。


「姫ちゃんがんばるだが!」「そうだ姫ちゃんがんばれ!」「姫ちゃん!」「姫ちゃん!」

と、いつしか、皆、「姫ちゃん」コールになっていました。


「すいません。いろいろ思い出したら、泣けちゃって・・・」

と、ミウは言葉を出します。


ミウは、少し泣いたことで、少し落ち着いたようです。


「皆さんの暖かさ、絶対忘れません。わたしは今日から生まれ変わって絶対にしあわせになります。わたしはわたしの為に強く生きていく」

「そして、わたしを愛してくれる人の為に強く、強く生きていきたいと思います。わたしが笑顔になれていれば、わたしっを愛してくれる人たちも絶対笑顔になってくれるし」

「わたし、これから、ずっと笑顔で生きていきます。今日は本当にありがとうございました」

と、ミウはやわらかな笑顔でお辞儀をすると、皆、万雷の拍手になった。


ヨウコも涙を流しながら、ミウへ拍手をしていた・・・。

そのヨウコをミウはやわらかい笑顔で・・・また、涙を流しながら見つめ、目で頷く・・・それを見たヨウコも頷く。


二人はたくさんの涙を流しながら、近づき、最期には、お互い抱きしめあっていた。


お互いのつらかった胸の内と今のしあわせを誰よりもわかりあっている二人だった。


二人を祝福する万雷の拍手はいつまでも止まなかった。


「姫ちゃん、ヨウコ・・・二人共おめでとうだが」

と、豊島テルコが二人を抱き寄せる。

「二人共東京に行って、しあわせになるだが・・・」

と、テルコは少し感激気味に言葉にする。

「テルさん、ありがとう」「テルさん、ありがとな」

と、二人は少し感激気味に言葉にした。

「それから・・・俺の娘だが・・・来月帰ってくることになっただが・・・」

と、テルコは少し照れるように話す。

「え、どうしたんですか?娘さん・・・確か、ユキさん・・・」

と、ミウが言葉にする。

「ユキの旦那がボストンで日本蕎麦の美味しさに目覚めて・・・脱サラして、日本蕎麦の修行してたんだと、俺達に黙って・・・」

と、テルコは言葉にする。

「で、「月夜野」のそば粉が一番だって言い出して・・・ここ「月夜野」で日本蕎麦屋を開くんだと・・・ユキに親孝行させたいって、言ってくれたんだと、旦那さんが」

と、テルコは言葉にする。

「よかったじゃないですか・・・お孫さんもいるんだし・・・夢が叶いましたね」「そうだよ、テルさん、よかったじゃん」

と、ミウもヨウコも言葉にする。

「ああ、そうだが・・・爺ちゃんがことさら喜んで、ここんとこ毎日ニコニコして上機嫌だが・・・俺にはそれが一番嬉しいだが」

と、テルコは言葉にする。

「人生でこいつだと思った男に尽くしていると、時にいいこともあるんだが」

と、テルコは言葉にすると、少し照れるように笑った・・・。


ミウとヨウコは帰る準備を終え、静かに「朝日ヘルパー」を立ち去ろうとしていた。


その横を通りすぎる一人の若い女性・・・。

「あのー、すいません・・・」

という言葉が聞こえ、所長の竹島に細身の若い女性が大きな荷物を背負って話しかけている。

少し疲れた感じのする、20代後半の女性の姿がそこにあった。


ミウとヨウコは顔を見合わせると、

「この街も変わらねえな」

と、ヨウコが言葉にした。

「ううん、少し前の私達ね」

と、ミウが言葉にする。

「ま、そういうこった」

と、ヨウコが言葉にし、二人は笑顔で「朝日ヘルパー」を後にした。


その日の午前11時過ぎ・・・綺麗な服を着たヨウコの姿が「月夜野」駅のコンコース内にあった。


そのヨウコをミウが見送りに来たのだ。


ヨウコは少しだけ電車の時間を待ちながら、ミウに言葉にする。

「テルさん・・・あの年で、未だに普通に夫婦生活があるんだと・・・」

と、ヨウコは言う。

「俺、最初信じられなかったんだけど「月夜野」で生活していくうちに・・・最もしあわせな夫婦は、テルさんところだって、確信するようになってよ」

と、ヨウコは言う。

「何歳になっても、テルさんは旦那の笑顔が一番嬉しいことだし、多分旦那もテルさんの笑顔が一番嬉しいことなんだよ・・・そういう夫婦になりてえって、俺今思ってる」

と、ヨウコが言う。

「素敵な夫婦だとは、思わねえか、なあ、ミウ」

と、ヨウコが言葉にする。

「うん。わたしも本当にそう思う・・・わたしもテルさん夫婦みたいになるわ、絶対に・・・」

と、ミウは強く口調で言葉にしていた。


と、その時は、来た・・・。


「ミウ・・・今回はいろいろありがとよ」

と、ヨウコは言葉にした。

「ううん・・・わたしは実質何もしてないもの・・・」

と、ミウ。

「まあ、そりゃ、そうだけどよ・・・サトルとタケルさんに俺が随分感謝してたって伝えてくれよ」

と、ヨウコはミウの目を真面目に見て、そう言う。

「わかったわ。それから・・・メールするね。東京でも会いたいし」

と、ミウは言う。

「ああ、そうだな。東京の暮らしでも、お互いこころのケアを、しあおうぜ。そういう間柄だ、俺達は」

と、ヨウコは言う。

「うん。親友だもん。ヨウコは・・・」

と、ミウが言葉にする。

「親友か・・・ありがたいもんだな、親友ってもんは、よ・・・」

と、ヨウコは言葉にすると、

「じゃ、そろそろ行くぜ、俺・・・東京で住む所、決まったら連絡くれよな」

と、ヨウコは言い・・・、

「じゃ、ありがとな・・・俺、行くわ」

という言葉を残すと素敵なやわらかな笑顔になって、ヨウコは、改めて、ミウにお辞儀をすると、振り返らずに改札の向こうに消えていった。


ミウはいつまでも、ヨウコの消えたあたりを見つめていた。


それから、5年の月日が経っていた。


ミウとサトルは、鎌倉の和風カフェ「深吉野」のランチを食べ終わると店から出てくる。


「月夜野純愛物語」でデビューしたサトルは本がベストセラーとなり、それ以後も順調にキャリアアップしてきてた。

「月夜野純愛物語」は映画化もされ、全国的に大ヒットして、サトルの名声はさらに上がっていった。


ミウはフリーの編集者として、活動し、サトル専属のエディターとして、サトルの本の装丁から何から何までサポートに廻り、アイデァを出し、

サトルを素敵な作家にすることに、全力を注いだ。結果、それはサトルのさらなる飛躍につながっていった。


二人は文字通り二人三脚で、この5年間を歩いてきたのだった。


サトルとミウは湘南の風景に魅せられ、高台の素敵な場所に事務所兼自宅を作り、そこに移り住んでいた。

だから、平日のランチは、二人で、のんびりと鎌倉辺りで楽しむことが多くなっていた。


「ミウ・・・江ノ電に乗って、江ノ島の西浜へ行こう。あそこは二人にとって、大事な場所だから」

と、鈴木サトルは相変わらず若々しい表情で、ミウに言った。

「うん。いいわよ。二人にとって大事な場所だったら、なおさら、行かなきゃ駄目よね?」

と、ミウもしあわせそうな笑顔だ。


平日、昼下がりの江ノ電は、それほど混むこともなく平和な風景そのものだ。


「綺麗な海・・・ほんと、相模湾って、綺麗ねー。素敵な場所だわー」

と、ミウは海に見入っている。

「僕的にはまた、湘南で自転車が出来て嬉しいよ。カズキさん夫妻とも仲良く出来てるし、最高だね。湘南での生活は」

と、サトルも言葉にする。

「この間、ミカさんとお茶しちゃった・・・カズキさんとミカさん夫妻の自転車屋さん、カフェも併設してておしゃれだし・・・」

と、ミカは言葉にする。

「カズキさんも脱サラして、今や、自転車屋兼自転車チームの監督だからね。夢叶えちゃうんだから、すごいよ」

と、サトルも楽しそうに話す。

「ミカさんはサトルの事なーんでも知ってるのよね」

と、ミウは海を見つめたまま、そんな風に言葉にする。

「ま、古い知り合いだしね。彼女は・・・」

と、サトルも言葉にする。

「死んだ元カノの双子の姉だもんね」

と、ミウは笑顔で言う。

「まあね。でも、そういう経験があったから、僕はミウを受け止められたんだよ」

と、サトルは涼しい顔して言う。

「あの時、ミウが自分の過去を話してくれて・・・その時、特になんということも無くミウの人生を受け止められたのは・・・ミクのおかげさ。僕はそう思っている」

と、サトルは言う。

「だから、そのありがとうを言いにこれから、西浜に行くのさ」

と、サトルは言う。


ミウはなんとなくやわらかい表情で、そんなサトルを見つめていた。


江ノ島は西浜・・・目の前に江ノ島が見える・・・風はそれほど無く・・・ほんの少しの風が気持ちよく感じられる二人だった。


「ミウが僕としゃべり始める、きっかけになった月の写真・・・それを撮った場所がここだったのさ」

と、サトルは江ノ島を見ながら、説明する。


「だからこの場所は僕達にとっても、大切な場所なんだ。記念の場所なんだよ・・・」

と、サトルは言葉にする。

「だから、僕はそれを君に伝えると共に・・・僕を見守っていてくれたてはずの・・・ミクに言いたかったんだ。ここは僕とミクにとっても大雪な場所だったから」

と、サトルは言葉にする。

「ミクはきっと僕の近くを漂って僕を見守ってくれていたと思う。だけど、今、ここではっきりさせるんだ」

と、サトルは笑顔になる。

「ミク!僕はもう大丈夫だ。完全に元の・・・いや、成長した作家、鈴木サトルになれた。それもこれも、君と・・・そして今の僕のパートナーであるミウのおかけだ」

と、サトルは大きな声で誰かに叫ぶようにしゃべっている。

「だから、ミク。もう俺を置いて、光の国へ行ってくれ。僕には今、このミウがいる。これからは、ミウが僕を全力で守ってくれる。だから、もう、大丈夫なんだ!」

と、サトルはミウの肩を抱き、自分の元に引き寄せる。

「さよなら、元気でな、ミク」

と、叫んだサトルは、遠くを見つめ・・・やがて、視線をミウに戻し・・・ミウの唇にキスをする・・・。


甘い時間が流れる・・・湘南の風景がそんな二人を見守っていてくれる・・・。


「ありがとう、サトル・・・」

口吻が終わると、なぜか、ミウはそんな風に言葉にしてしまう。

「気がかりだったんだよ。ちょっとだけね・・・筋は通さなきゃいけないだろ?」

と、サトルは言葉にする。

「なんだか、ヨウコみたいな事言ってるわ。ヨウコの口癖が伝染ったのね」

と、笑うミウ。

「だって、ヨウコさんの東京の店に頻繁に連れて行くから・・・ミウ」

と、サトルは口を尖らせる。

「でも、ヨウコも店の女将として、もう、普通に出来ているものね・・・」

と、ミウはそんな風に口にする。

「あそこも、いつまでもラブラブだもんね。しかし、あの穏やかで美しいヨウコさんが、昔レディースのヘッドやってたとは・・・今じゃ考えられないよなー」

と、サトルは言葉にする。


二人はベンチに座り、海と江ノ島を眺めている。


「・・・と、そろそろのはずなんだけどな・・・遅れてるのかな?」

と、時計を見ながら、そんな風に言葉にするサトルだった。

「え、どうしたの?何か待ってるの?」

と、ミウが不思議そうな表情をする。


・・・と。

「お、来た来た、あれ、あのリムジン、覚えてる、ミウ?5年前の今日・・・つまり、クリスマスイブの夜の出来事を・・・」

と、サトルは笑顔でミウに言う。

「あ・・・あのリムジンって・・・5年前のイブの夜の・・・タケルさんとアイリさんのリムジンじゃない!」

と、ミウは運転席で機嫌良さそうにしている、タケルとアイリの夫婦の姿を見つける。


「よー、ごめんごめん。君のところのお荷物をピックアップするのに、少し手間取っちゃってさ」

と、タケルはリムジンを停車させ、運転席から出てくると、二人に会釈しながら、そんな風に言葉にする。


と、その刹那、アイリによって、開けられたリムジンのドアから・・・二人の幼子と一人の若く美しい女性が出てくる。


「パパ、ママ!!!」「ママー、パパー」


と走ってくるのは、二人の娘、ナツミ(4)二人の息子、ユウキ(3)だった。

そして、その後ろをお手伝いさんの、水島スズネ(22)が走ってくる。


子供たちは両親に抱きつき、その後ろからズズネが走ってきた。

「サトルさん・・・こういう話は前もって言っておいて頂かないと・・・はい・・・」

と、スズネはサトルに、わかりやすいクレームを入れている。

「あー、ごめんごめん。スズネちゃん、フォローするの、すっかり忘れてて」

と、頭を掻くサトル。

「いやあ、サトルがスズネさんに何も言って無かったから・・・彼女慌てて身支度整える必要があったんで、少し時間がかかっちゃったんだよー」

と、タケルはサトルにわかりやすいクレームをいれている。

「鈴木一族はそういうところをしっかりやらないとダメなんだからね。まあ、大事にはならなかったから、よかったけどさ」

と、タケルは笑顔で言う。


「あのー・・・タケルさん、これはどういう・・・」

と、ミウがタケルとサトルを見ながら、どちらともなく尋ねている。

「これから、箱根の温泉に行こうと思ってさ。明日休みだし、タケルさん夫婦とも温泉に行ければ、楽しいだろ。それに、スズネちゃんにも、温泉旅行させてあげたいし」

と、サトルは今後のことについて説明してくれる。

「えーと、箱根の温泉旅館は「月見野」さんを予約しておいたから・・・サトルの依頼通りに、ね」

と、タケルはニヤリと笑う。

「月は二人にとってのラッキーアイテムなんだってな。ねえ、ミウちゃん?」

と、タケルはミウに聞いてくる。

「ええ、そうなんです。まさしくラッキーアイテムなんです。月が・・・」

と、ミウは笑顔で言う。

「月が二人をここまで、導いてくれたんです」

と、笑顔のミウは誇らしげに言った。


「ま、そういうことらしいので・・・また、ラッキーな場所に行きましょか」

と、タケルが言葉にする。

「さ、クリスマスイブの昼間から、温泉旅行としゃれこもうぜ。さ、皆乗って乗って」

と、タケルは皆を促します。

「ま、俺も久しぶりにアイリと温泉旅行に行けるから、すっごく嬉しいんだけどね」

と、ひとりつぶやく鈴木タケルです。

「クリスマスイブはさ、好きな男と過ごしたいのが女性だもんな」

と、鈴木タケルはニヤリとしました。


「それから、サトル・・・」

と、タケルは言葉にする。


サトル以外の皆は、アイリが笑顔で、開けているドアから、リムジンに乗って行く・・・。


「頼まれていたモノはすべてシートの横のボックスに用意しておいたから・・・うまくやれよ。」

と、タケルは言うと、やわらかな笑顔を残し、リムジンの運転席に消えた。

「発車しまーす」

と、運転席のタケルが言うと、タケルは運転席後部の隔壁を閉めてしまった。


サトルはワイワイ騒いでいる子供たちとその相手になっているスズネとミウを見る。


そして、笑顔になると、サトルはシート脇のボックスから花束を取り出す。


「ミウ、いつもありがとう。今日はそういうわけだから、僕らの新しい記念日になった。名づけて・・・「僕らの新たな旅立ちの記念日」だ」


と、サトルは言うと、驚くミウに花束を贈る。


「あ、ありがとう。今日がそんな日になるとは・・・思ってなかったから、わたし、とっても嬉しい・・・サトル」


と、少し目を潤ませるミウだった。


「それと、これ」


と、サトルが出した皿の上には、少し大きめのハート型のクッキーが3つ置かれてあった。


「女性は自分の人生を選びとっていくものだろう。この3つのクッキーの中から、ひとつを選んで・・・それでミウの運命が決まるから」


と、サトルは目の笑ういい笑顔でミウを見ている。


「って、これ、フォーチュン・クッキー?」


と、ミウは驚いて言葉にする。


「さあ、ミウ、自分の運の良さを信じるんだ」


と、サトルは笑顔で言う。


ミウは迷っていたが、ど真ん中に置いてあったハート型のフォーチュン・クッキーを取り、砕いてみる。


・・・と、中から「C」と書かれた小さな紙が出てくる。


「ほう、「C」はこれだ・・・」


と、サトルは言いながら、青いジュエリーボックスをミウへ渡す。


そのボックスには確かに「C」の付箋紙が貼られていた。


ミウは恐る恐る、その青いジュエリーボックスを開ける・・・そこには、大きめのダイヤモンドの指輪が入っていた。


「お互い忙しくて、これまで、結婚式も披露宴も開けなかったじゃないか。だから5月の新緑の季節にやろう。これは贈れていなかった、エンゲージリング!」


と、サトルは笑顔で言った。


そして、サトルはそのダイヤモンドのエンゲージリングをミウの左手の薬指にはめてくれる。


ミウはそのエンゲージリングのはめられた左手を見て、思わず涙した・・・。


今までの、すべての事が報われた瞬間だった。


「き、綺麗だわ。このダイヤモンドのエンゲージリング・・・」


と、涙ながらにミウは言葉にする。


「綺麗なのは、君の方さ・・・今の君の笑顔はダイヤモンドより、美しい」


と、サトルが言うと、ミウは嬉しさのあまり、サトルの頬に思わずキスをしていた。


その様子を見ていた、子供たちも、スズネもわいわい囃してくれた。


サトルもやわらかい笑顔で、ミウを見ていてくれる。


ミウは、今が最高にしあわせだった。


(おしまい)


→もちろん、エンディングはこれでしょう!


→主要登場人物へ

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→物語の初回へ

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