おはようございます。
紅葉の綺麗な季節・・・自然って、美しいですねー。
この季節を存分に楽しまないと、いけませんねー。
さて、その時、僕らは、紅葉の見どころになった奥日光に御島さん(31)の車とユキちゃん(28)の車でやってきていました。
お昼のランチは、中禅寺湖畔の日本料理屋で、ランチを楽しんでいました。
「しっかし、見頃な紅葉だねえ。すっかり秋本番だよねー」
と、僕。
「日光って湯葉が名物だったのね。知らなかったわ」
と、美味しそうに料理を食べる御島さんです。
メンバーは、御島号にイケメン貴島くん(29)と池澤くん(24)、
ユキちゃん号に、僕とミユウちゃん(25)と言う並びでした。
「今日は鬼怒川温泉で泊まりだし、結構、のんびり出来そうですね」
と、ミユウちゃんがはしゃいでいる。
「なんか、こうやって皆でお泊りに来るのって、すごく久しぶりな感じね」
と、ユキちゃん。
「僕、今日、トランプ持ってきたんすよ。ほら、少し酔っ払ってやるババ抜きとか異常に盛り上がるじゃないですか!」
「浴衣姿で、ババ抜きとか、大貧民とか・・・そういう世界、僕、好きなんす」
と、池澤くん。
「なんか、それって、修学旅行の世界ね。ま、わたしも嫌いじゃないけど」
と、御島さん。
「天気、良くなってきましたね。午後、戦場ヶ原、少し歩きます?」
「雲も取れて、太陽が顔を出しそうだし・・・」
と、スマホで、午後の天気をチェックしているユキちゃんです。
「そうね。秋の日光を身体全体で楽しみましょう。少し歩くのもいいわよね」
「秋の匂いがしていそう・・・」
と、御島さん。上機嫌である。
「わたしね・・・このところ、林芙美子について、ちょっと調べたりしていたの」
「まあ、彼女と言えば「放浪記」だけど・・・その舞台がこれだけ長く続いて・・・日本の女性に愛されていると言う事は」
「「放浪記」あるいは、林芙美子の人生に、女性に愛される何かがあるって思って・・・それで、ね・・・」
と、御島さん。
「林芙美子・・・何人もの男性を愛して放浪した・・・そういう女性でしたね。愛人を日本に置いて、パリに滞在している時も」
「その愛人に内緒で、恋人を追い求め・・・と同時に、愛人に熱烈なラブレターも送っている・・・そういう認識でしたけど」
「恋多き女性・・・そんなイメージですね」
と、辛辣姫。
「うーん、女性からすると・・・ちょっとそういう生き方もいいですね」
と、ミユウちゃん。
「僕は以前、仕事の関係で、その「放浪記」・・・本で読んだ事があるんですけど・・・彼女は、若い女流作家に」
「編集者に渡してほしいと頼まれた原稿を、渡さず、そのまま、自分の本棚に埋もれさせたり・・・そういう自分の」
「ネガティブな部分をドンドン描くんですね。自分のダメな所、弱い所、嫌いな所・・・むしろ、そういう描写が多くて」
「そういう苦労した自分の経験がドンドン描かれていて・・・だからこそ、彼女の文章が新聞に載った時」
「彼女は嬉しくて、でんぐり返し・・・となるカタルシスが気持ちいい・・・そんな風に捉えましたけどね」
と、貴島くん。
「僕も大学時代、勉強で、「放浪記」を読みましたけど・・・貧乏だからこそ、男性との同棲を繰り返しているのかなって」
「思っていました。作家の女性って、やっぱり、話していて面白いって言うか、それが魅力って言うか」
「・・・中身の何にも無い女性では、次から次へと男性と同棲なんて出来ないからこそ、林芙美子である理由が」
「そこにはあるのかなって、思っていましたね。この理解、間違っています?」
と、池澤くん。
「まあ、そういう見方は間違っていないと思うわ。確かに、林芙美子の写真を見ても、絶対的な美人ではないけれど」
「なんとなく、気さくに話していたい、一緒にお酒が飲みたい感じの雰囲気を持っている女性よね」
と、御島さん。
「彼女の著作って、まあ、初期の頃は、貧乏をテーマに描いているのよね」
「でも、それは彼女がそういう階層の出身だった事もあるし、世の中全体が当時、貧乏だったのよ」
「今からでは、想像出来ないくらいに、ね・・・その日の食にさえ、事欠くのが普通の時代・・・」
「ちょっと今からでは考えられないでしょう?でも、そういう時代だったからこそ、彼女は貧乏をテーマに文章を書いたし」
「それが多くの共感を生んだのよ」
と、御島さん。
「作家とは、どういう人か?と質問されれば・・・要はおしゃべりのうまい人なのよ」
「他人が興味を持つ事をさらりと話してくれて・・・他人が最も喜ぶのは「人の悪口、蜜の味」と言う言葉からもわかるように」
「自分のダメな部分、いやらしい部分、笑われる部分、オッチョコチョイな自分、恥ずかしい部分を」
「ひけらかす事なの。おしゃべりの上手い人は、相手を上手くアゲておいて、自分を下げる事で、ドンドン周囲を乗せていく」
「・・・そうね、そんな中で、皆を気持ちよくさせて、笑わせる事が出来るようになったら、一人前のおしゃべリスト」
「・・・って事になるんじゃないかしら。だから、作家には魅力的な男女が多いんじゃない?」
と、御島さん。
「へー。わたしは、どちらかと言うと、気難しい、一人の世界に閉じこもって、文章を書く・・・自分の世界観の中に」
「没頭して、虚構の物語をつくり上げる・・・ある意味、職人みたいな人こそ・・・作家かなと思っていましたけど」
と、辛辣姫。
「そういう作家もいるわね、確かに・・・。ま、わたしは、林芙美子さん系なおしゃべリストな女性が好きだけど・・・」
と、御島さん。
「林芙美子さんは、おしゃべリストだったから、男性にもモテた・・・そういう話ですか?」
と、池澤くん。
「ええ。わたしはそう思っている・・・自分のダメな部分をさらけ出すって言うのは、なかなか出来ない話だと思うの」
「でも、わたしは知ってる。それって蜜の味なのよ。他人は、そういう自分のダメなところを見て、安心するわ」
「「こいつはわたしより下だわ」って皆、思わせるの。でも、実は違うの。そういうダメな部分を普通にさらけ出せる」
「そういう強さを持っている自分こそ、上・・・と言う意識が、林芙美子さんには、あったはずなのよ」
「それこそが、気持ちいい・・・作家は気持ちよくなりたいから、文章を書くのよ」
と、御島さん。
「じゃあ、林芙美子さんが、恋に生きたのは、何故なんですか?」
と、僕。
「そうね。彼女は、素敵な事を追求していただけだと思うわ。女性にとって、恋こそ、至上の素敵な事だもの」
「彼女は、どうすれば、男性を恋に落とせるか、知っていたのよ。だって、それを何度も繰り返して」
「・・・もちろん、最初は失敗もしたでしょう?でも、いつもゆるちょくんが言ってる通り、「失敗こそ、成功の母」だもの」
「何度も失敗するうちに、いいやり方に気づくのよ。そして、そのやり方をドンドン重ねていくうちに、プロ級になっていった」
「そうやって、男性を落とすプロになっていったのが、林芙美子さんじゃない?」
「それって女性からすれば、羨ましい限りだわ・・・」
と、御島さん。
「その能力が、作家・林芙美子を作り上げた?」
と、僕。
「ええ。その通りだわ」
と、御島さん。
「作家にとって、恋は楽しいし、書く事も楽しいの。一般の人は、書くことを仕事として捉えるから」
「苦として捉えるけど・・・わたしに言わせれば、仕事を苦として捉えているようじゃダメだと思うわ」
と、御島さん。
「え、それってどういう事ですか?」
と、池澤くん。
「だって、一般の人の顔を見ればわかるじゃない。自分の好きな事を仕事にしていて・・・それを追求する毎日を過ごしていて」
「その仕事を追求する為に毎日トレーニングして、日々成長するような時間を過ごしている男女は」
「皆、いい顔をしているじゃない?仕事をする事が楽しくて仕方ないの。だからこそ、そういう男女はいい結果を残せるし」
「日々、ドンドン成長していく事が出来るのよ。それもすべて、仕事が楽しいからよ・・・」
と、御島さん。
「その逆に、仕事が苦と言う人は・・・仕事をする事がストレスで・・・仕事をすればするほど、自分を死に近づけているような」
「ものじゃない?だって、人間、したくない事を強要されるくらい、嫌な事はないんじゃない?」
「ま、そういう男女は早死にしちゃうじゃない。それは毎日の仕事が苦だから・・・そういう人に林芙美子さんの」
「心情は理解出来ないんじゃないかしら」
と、御島さん。
「だいたい、昔って、貧乏な事が普通だったのよ。皆貧乏だったんですもの」
「例えば・・・わたしの両親の世代より上の人の場合・・・子供にお弁当を持たせられない家庭って非常に多かったらしいの」
「だから、給食制度が出来たんでしょう?でも、それが普通だったのよ、当時は」
と、御島さん。
「だから、今の時代・・・子供が喜ぶからキャラ弁を毎日用意する・・・そんな時代とは、比較にもならないじゃない」
「だから、林芙美子さんからすれば・・・今の時代は、華やかで、裕福な時代と捉えられるでしょうね」
と、御島さん。
「でも、わたしからすると、今の時代って、あまりしあわせじゃないのかなって、気がする」
「子供はキャラ弁じゃないと、嫌だと言う。父親は、一生懸命働いて、マンションを用意し、家族を食べさせ」
「自分はワンコイン亭主に甘んじ・・・それでも、家庭での居場所が無くなっている・・・」
「なんか、満足のハードルをドンドン押し上げているのは、家庭の主婦だったり、子供達だったりするでしょう?」
「それが単純に不幸を呼び込んでいるように感じるわ。どこまで行っても満足感を感じられない人間は、一生不幸だもの」
と、御島さん。
「そういう現状を見て、よくお年寄りが、「分を知らない」と言う言い方をしていますね」
と、ユキちゃん。
「そんな事を言っても、後の祭りだわ。それにもう、お年寄りの言う事を聞く人なんて・・・稀だもの」
「お年寄り世代も、おかしくなってるでしょ?80代の年寄りが、20代の女性にラブレターで、本気で、結婚を申し込む時代よ」
「現実が見えていないって言うか、単なる色ボケオヤジでしょ、それって・・・」
と、御島さん。
「自分の事しか考えられなくなった、ダメおやじの成れの果ての姿でしょうね、それって」
と、辛辣姫。
「この日本では何よりも自分を俯瞰で眺める事が出来なくては、すぐに不幸になっちゃうわ」
「なにより、社会が自分を見て、価値をつける・・・それこそが、「分」でしょ」
「その「分」をわきまえるからこそ、社会は自分を応援してくれるし、ハッピーにもしてくれる」
「そこを理解していなくては、この日本では、しあわせにはなれないわ」
と、御島さん。
「さらに、言えば、常に自分は相手の立場に立って考えるようにしなくては、これも簡単に不幸になってしまう」
「相手の立場に立って、相手が笑顔になるように、自分の言動も考える。控える事も大事だわ」
「そうやって、社会と上手く連携しながら、皆でしあわせになっていくのがこの日本」
「自分の事だけ、家族の事だけ、考えて生きていたら、すぐに、社会から相手にされなくなるもの・・・」
「そこを理解しておかなければ、ね・・・」
と、御島さん。
「なるほど・・・80代のお爺さんも、20代の女性の立場に立って考えてみれば・・・そんな手紙受け取れるわけがないって事に気づいたはずなのに・・・」
と、辛辣姫。
「マンションも買ってくれて、毎日家族の為に働いてくれているお父さんの立場に立ってモノを考える事が出来れば」
「家族がお父さんに感謝しなければ、いけない事にも気づけたでしょうね」
と、ミユウちゃん。
「自分がしあわせになる事しか考えられなくなっているから、他人の立ち場に立って考えられなくなって」
「父親への感謝の気持ちすら、忘れている、「分」をわきまえない、ダメな男女になっている・・・その状況が散見されているのが・・・現代って事ですかね」
と、池澤くん。
「そんな感じじゃない?・・・結局、いろいろな規律が緩みまくっているって、感じかしら。今の時代は・・・」
「だから、自分で自分たちを律する以外、手は無いって感じがするわね・・・」
と、御島さん。
「今の時代の人は・・・感謝する事をすっかり、忘れてしまったみたいね・・・」
と、御島さん。
「そうか。それですよ・・・林芙美子の「放浪記」が未だに好まれる理由は!」
と、僕。
「え?どういう事?」
と、御島さん。
「感謝を忘れた今の時代の人々も・・・林芙美子と同じ人間です。だから、皆、林芙美子の弁舌に乗せられたいんですよ」
と、僕。
「は?どういう事ですか?」
と、貴島くん。
「林芙美子さんの貧乏話や、ダメな部分、いやらしい部分、笑われる部分、オッチョコチョイな自分、恥ずかしい部分を」
「ひけらかす話を楽しんで・・・そして、今の自分がいかにしあわせかを再確認する・・・それが人々が「放浪記」を見る理由だ」
「・・・そういう事をゆるちょさんは言いたいんですね」
と、辛辣姫。
「そういう事。少なくとも彼女の貧乏話を聞けば・・・今の自分がどれくらい恵まれているか、再確認出来るでしょう?」
「それは自分自身のしあわせを感じる事でもある。それを一般の人達は、したいからこそ、「放浪記」の舞台を見に来るんですよ」
と、僕。
「そっか。そういうい事か・・・確かに、そうかもしれないわね・・・」
「・・・となると、今の時代こそ、林芙美子さんは、必要って事になるかしらね」
と、御島さん。
「仲間由紀恵さんでの、「放浪記」舞台の再演が始まった意味も・・・そのあたりにありそうですね」
「皆、今の自分のしあわせを感じたいから・・・」
と、貴島くんが、結論のように言葉にした。
「でも、なんだか、トランプとか楽しめるって・・・夜が楽しみになりそうね」
と、御島さん。
「枕投げ、やりましょうか」
と、ユキちゃん。
「やりましょう、やりましょう。学生時代にタイムスリップして、楽しみましょう。今の時間を」
と、ミユウちゃんが言うと、皆、嬉しそうに笑顔になった。
(おしまい)
紅葉の綺麗な季節・・・自然って、美しいですねー。
この季節を存分に楽しまないと、いけませんねー。
さて、その時、僕らは、紅葉の見どころになった奥日光に御島さん(31)の車とユキちゃん(28)の車でやってきていました。
お昼のランチは、中禅寺湖畔の日本料理屋で、ランチを楽しんでいました。
「しっかし、見頃な紅葉だねえ。すっかり秋本番だよねー」
と、僕。
「日光って湯葉が名物だったのね。知らなかったわ」
と、美味しそうに料理を食べる御島さんです。
メンバーは、御島号にイケメン貴島くん(29)と池澤くん(24)、
ユキちゃん号に、僕とミユウちゃん(25)と言う並びでした。
「今日は鬼怒川温泉で泊まりだし、結構、のんびり出来そうですね」
と、ミユウちゃんがはしゃいでいる。
「なんか、こうやって皆でお泊りに来るのって、すごく久しぶりな感じね」
と、ユキちゃん。
「僕、今日、トランプ持ってきたんすよ。ほら、少し酔っ払ってやるババ抜きとか異常に盛り上がるじゃないですか!」
「浴衣姿で、ババ抜きとか、大貧民とか・・・そういう世界、僕、好きなんす」
と、池澤くん。
「なんか、それって、修学旅行の世界ね。ま、わたしも嫌いじゃないけど」
と、御島さん。
「天気、良くなってきましたね。午後、戦場ヶ原、少し歩きます?」
「雲も取れて、太陽が顔を出しそうだし・・・」
と、スマホで、午後の天気をチェックしているユキちゃんです。
「そうね。秋の日光を身体全体で楽しみましょう。少し歩くのもいいわよね」
「秋の匂いがしていそう・・・」
と、御島さん。上機嫌である。
「わたしね・・・このところ、林芙美子について、ちょっと調べたりしていたの」
「まあ、彼女と言えば「放浪記」だけど・・・その舞台がこれだけ長く続いて・・・日本の女性に愛されていると言う事は」
「「放浪記」あるいは、林芙美子の人生に、女性に愛される何かがあるって思って・・・それで、ね・・・」
と、御島さん。
「林芙美子・・・何人もの男性を愛して放浪した・・・そういう女性でしたね。愛人を日本に置いて、パリに滞在している時も」
「その愛人に内緒で、恋人を追い求め・・・と同時に、愛人に熱烈なラブレターも送っている・・・そういう認識でしたけど」
「恋多き女性・・・そんなイメージですね」
と、辛辣姫。
「うーん、女性からすると・・・ちょっとそういう生き方もいいですね」
と、ミユウちゃん。
「僕は以前、仕事の関係で、その「放浪記」・・・本で読んだ事があるんですけど・・・彼女は、若い女流作家に」
「編集者に渡してほしいと頼まれた原稿を、渡さず、そのまま、自分の本棚に埋もれさせたり・・・そういう自分の」
「ネガティブな部分をドンドン描くんですね。自分のダメな所、弱い所、嫌いな所・・・むしろ、そういう描写が多くて」
「そういう苦労した自分の経験がドンドン描かれていて・・・だからこそ、彼女の文章が新聞に載った時」
「彼女は嬉しくて、でんぐり返し・・・となるカタルシスが気持ちいい・・・そんな風に捉えましたけどね」
と、貴島くん。
「僕も大学時代、勉強で、「放浪記」を読みましたけど・・・貧乏だからこそ、男性との同棲を繰り返しているのかなって」
「思っていました。作家の女性って、やっぱり、話していて面白いって言うか、それが魅力って言うか」
「・・・中身の何にも無い女性では、次から次へと男性と同棲なんて出来ないからこそ、林芙美子である理由が」
「そこにはあるのかなって、思っていましたね。この理解、間違っています?」
と、池澤くん。
「まあ、そういう見方は間違っていないと思うわ。確かに、林芙美子の写真を見ても、絶対的な美人ではないけれど」
「なんとなく、気さくに話していたい、一緒にお酒が飲みたい感じの雰囲気を持っている女性よね」
と、御島さん。
「彼女の著作って、まあ、初期の頃は、貧乏をテーマに描いているのよね」
「でも、それは彼女がそういう階層の出身だった事もあるし、世の中全体が当時、貧乏だったのよ」
「今からでは、想像出来ないくらいに、ね・・・その日の食にさえ、事欠くのが普通の時代・・・」
「ちょっと今からでは考えられないでしょう?でも、そういう時代だったからこそ、彼女は貧乏をテーマに文章を書いたし」
「それが多くの共感を生んだのよ」
と、御島さん。
「作家とは、どういう人か?と質問されれば・・・要はおしゃべりのうまい人なのよ」
「他人が興味を持つ事をさらりと話してくれて・・・他人が最も喜ぶのは「人の悪口、蜜の味」と言う言葉からもわかるように」
「自分のダメな部分、いやらしい部分、笑われる部分、オッチョコチョイな自分、恥ずかしい部分を」
「ひけらかす事なの。おしゃべりの上手い人は、相手を上手くアゲておいて、自分を下げる事で、ドンドン周囲を乗せていく」
「・・・そうね、そんな中で、皆を気持ちよくさせて、笑わせる事が出来るようになったら、一人前のおしゃべリスト」
「・・・って事になるんじゃないかしら。だから、作家には魅力的な男女が多いんじゃない?」
と、御島さん。
「へー。わたしは、どちらかと言うと、気難しい、一人の世界に閉じこもって、文章を書く・・・自分の世界観の中に」
「没頭して、虚構の物語をつくり上げる・・・ある意味、職人みたいな人こそ・・・作家かなと思っていましたけど」
と、辛辣姫。
「そういう作家もいるわね、確かに・・・。ま、わたしは、林芙美子さん系なおしゃべリストな女性が好きだけど・・・」
と、御島さん。
「林芙美子さんは、おしゃべリストだったから、男性にもモテた・・・そういう話ですか?」
と、池澤くん。
「ええ。わたしはそう思っている・・・自分のダメな部分をさらけ出すって言うのは、なかなか出来ない話だと思うの」
「でも、わたしは知ってる。それって蜜の味なのよ。他人は、そういう自分のダメなところを見て、安心するわ」
「「こいつはわたしより下だわ」って皆、思わせるの。でも、実は違うの。そういうダメな部分を普通にさらけ出せる」
「そういう強さを持っている自分こそ、上・・・と言う意識が、林芙美子さんには、あったはずなのよ」
「それこそが、気持ちいい・・・作家は気持ちよくなりたいから、文章を書くのよ」
と、御島さん。
「じゃあ、林芙美子さんが、恋に生きたのは、何故なんですか?」
と、僕。
「そうね。彼女は、素敵な事を追求していただけだと思うわ。女性にとって、恋こそ、至上の素敵な事だもの」
「彼女は、どうすれば、男性を恋に落とせるか、知っていたのよ。だって、それを何度も繰り返して」
「・・・もちろん、最初は失敗もしたでしょう?でも、いつもゆるちょくんが言ってる通り、「失敗こそ、成功の母」だもの」
「何度も失敗するうちに、いいやり方に気づくのよ。そして、そのやり方をドンドン重ねていくうちに、プロ級になっていった」
「そうやって、男性を落とすプロになっていったのが、林芙美子さんじゃない?」
「それって女性からすれば、羨ましい限りだわ・・・」
と、御島さん。
「その能力が、作家・林芙美子を作り上げた?」
と、僕。
「ええ。その通りだわ」
と、御島さん。
「作家にとって、恋は楽しいし、書く事も楽しいの。一般の人は、書くことを仕事として捉えるから」
「苦として捉えるけど・・・わたしに言わせれば、仕事を苦として捉えているようじゃダメだと思うわ」
と、御島さん。
「え、それってどういう事ですか?」
と、池澤くん。
「だって、一般の人の顔を見ればわかるじゃない。自分の好きな事を仕事にしていて・・・それを追求する毎日を過ごしていて」
「その仕事を追求する為に毎日トレーニングして、日々成長するような時間を過ごしている男女は」
「皆、いい顔をしているじゃない?仕事をする事が楽しくて仕方ないの。だからこそ、そういう男女はいい結果を残せるし」
「日々、ドンドン成長していく事が出来るのよ。それもすべて、仕事が楽しいからよ・・・」
と、御島さん。
「その逆に、仕事が苦と言う人は・・・仕事をする事がストレスで・・・仕事をすればするほど、自分を死に近づけているような」
「ものじゃない?だって、人間、したくない事を強要されるくらい、嫌な事はないんじゃない?」
「ま、そういう男女は早死にしちゃうじゃない。それは毎日の仕事が苦だから・・・そういう人に林芙美子さんの」
「心情は理解出来ないんじゃないかしら」
と、御島さん。
「だいたい、昔って、貧乏な事が普通だったのよ。皆貧乏だったんですもの」
「例えば・・・わたしの両親の世代より上の人の場合・・・子供にお弁当を持たせられない家庭って非常に多かったらしいの」
「だから、給食制度が出来たんでしょう?でも、それが普通だったのよ、当時は」
と、御島さん。
「だから、今の時代・・・子供が喜ぶからキャラ弁を毎日用意する・・・そんな時代とは、比較にもならないじゃない」
「だから、林芙美子さんからすれば・・・今の時代は、華やかで、裕福な時代と捉えられるでしょうね」
と、御島さん。
「でも、わたしからすると、今の時代って、あまりしあわせじゃないのかなって、気がする」
「子供はキャラ弁じゃないと、嫌だと言う。父親は、一生懸命働いて、マンションを用意し、家族を食べさせ」
「自分はワンコイン亭主に甘んじ・・・それでも、家庭での居場所が無くなっている・・・」
「なんか、満足のハードルをドンドン押し上げているのは、家庭の主婦だったり、子供達だったりするでしょう?」
「それが単純に不幸を呼び込んでいるように感じるわ。どこまで行っても満足感を感じられない人間は、一生不幸だもの」
と、御島さん。
「そういう現状を見て、よくお年寄りが、「分を知らない」と言う言い方をしていますね」
と、ユキちゃん。
「そんな事を言っても、後の祭りだわ。それにもう、お年寄りの言う事を聞く人なんて・・・稀だもの」
「お年寄り世代も、おかしくなってるでしょ?80代の年寄りが、20代の女性にラブレターで、本気で、結婚を申し込む時代よ」
「現実が見えていないって言うか、単なる色ボケオヤジでしょ、それって・・・」
と、御島さん。
「自分の事しか考えられなくなった、ダメおやじの成れの果ての姿でしょうね、それって」
と、辛辣姫。
「この日本では何よりも自分を俯瞰で眺める事が出来なくては、すぐに不幸になっちゃうわ」
「なにより、社会が自分を見て、価値をつける・・・それこそが、「分」でしょ」
「その「分」をわきまえるからこそ、社会は自分を応援してくれるし、ハッピーにもしてくれる」
「そこを理解していなくては、この日本では、しあわせにはなれないわ」
と、御島さん。
「さらに、言えば、常に自分は相手の立場に立って考えるようにしなくては、これも簡単に不幸になってしまう」
「相手の立場に立って、相手が笑顔になるように、自分の言動も考える。控える事も大事だわ」
「そうやって、社会と上手く連携しながら、皆でしあわせになっていくのがこの日本」
「自分の事だけ、家族の事だけ、考えて生きていたら、すぐに、社会から相手にされなくなるもの・・・」
「そこを理解しておかなければ、ね・・・」
と、御島さん。
「なるほど・・・80代のお爺さんも、20代の女性の立場に立って考えてみれば・・・そんな手紙受け取れるわけがないって事に気づいたはずなのに・・・」
と、辛辣姫。
「マンションも買ってくれて、毎日家族の為に働いてくれているお父さんの立場に立ってモノを考える事が出来れば」
「家族がお父さんに感謝しなければ、いけない事にも気づけたでしょうね」
と、ミユウちゃん。
「自分がしあわせになる事しか考えられなくなっているから、他人の立ち場に立って考えられなくなって」
「父親への感謝の気持ちすら、忘れている、「分」をわきまえない、ダメな男女になっている・・・その状況が散見されているのが・・・現代って事ですかね」
と、池澤くん。
「そんな感じじゃない?・・・結局、いろいろな規律が緩みまくっているって、感じかしら。今の時代は・・・」
「だから、自分で自分たちを律する以外、手は無いって感じがするわね・・・」
と、御島さん。
「今の時代の人は・・・感謝する事をすっかり、忘れてしまったみたいね・・・」
と、御島さん。
「そうか。それですよ・・・林芙美子の「放浪記」が未だに好まれる理由は!」
と、僕。
「え?どういう事?」
と、御島さん。
「感謝を忘れた今の時代の人々も・・・林芙美子と同じ人間です。だから、皆、林芙美子の弁舌に乗せられたいんですよ」
と、僕。
「は?どういう事ですか?」
と、貴島くん。
「林芙美子さんの貧乏話や、ダメな部分、いやらしい部分、笑われる部分、オッチョコチョイな自分、恥ずかしい部分を」
「ひけらかす話を楽しんで・・・そして、今の自分がいかにしあわせかを再確認する・・・それが人々が「放浪記」を見る理由だ」
「・・・そういう事をゆるちょさんは言いたいんですね」
と、辛辣姫。
「そういう事。少なくとも彼女の貧乏話を聞けば・・・今の自分がどれくらい恵まれているか、再確認出来るでしょう?」
「それは自分自身のしあわせを感じる事でもある。それを一般の人達は、したいからこそ、「放浪記」の舞台を見に来るんですよ」
と、僕。
「そっか。そういうい事か・・・確かに、そうかもしれないわね・・・」
「・・・となると、今の時代こそ、林芙美子さんは、必要って事になるかしらね」
と、御島さん。
「仲間由紀恵さんでの、「放浪記」舞台の再演が始まった意味も・・・そのあたりにありそうですね」
「皆、今の自分のしあわせを感じたいから・・・」
と、貴島くんが、結論のように言葉にした。
「でも、なんだか、トランプとか楽しめるって・・・夜が楽しみになりそうね」
と、御島さん。
「枕投げ、やりましょうか」
と、ユキちゃん。
「やりましょう、やりましょう。学生時代にタイムスリップして、楽しみましょう。今の時間を」
と、ミユウちゃんが言うと、皆、嬉しそうに笑顔になった。
(おしまい)