「さて、そんじゃ、行きましょうか!」
と僕が言うと、佳乃さんと由美ちゃんはシックなパンツスーツ姿で、うなずきます。
僕らはあれから、それぞれの家に戻り(僕は由美ちゃん家だけど)、一晩を過ごすと
新たな気持ちで、佳乃さんの家に集まったのです。
僕らはタクシーで、水島社長の家に移動すると、いつものように、お手伝いさんに
案内され、広い応接室に通されます。
「さて、御幸記者待ちだね」
と僕が言うと、二人とも少し緊張した面持ちです。
「私たち、連れて行ってもらえるかしら?」
と佳乃さんは心配顔です。
「まあ、○○さんのことですもの、大丈夫ですよ」
と、まったく心配していないのは、我らが由美ちゃんです。
「うん。まあ、大丈夫だと思うよ。まあ、成り行きを静かに見守っていてください」
と、僕が言うと、満足顔の由美ちゃんです。
「ね。言ったとおりでしょう」
と、自分のことのように、自慢する由美ちゃんです。
「うん。わかったわ。大船に乗ったつもりでいましょう」
と、佳乃さんも安心顔です。
そこへ、水島社長が、顔を出します。
「そろそろ、例の記者が来る頃だ。準備は大丈夫かね?」
と、水島社長は、少しうろたえています。
「ああ。いつでも、大丈夫です。もう、準備は万端ですから」
と、僕が言うと、水島社長は、
「うん。大丈夫そうだな。彼が来たら、こちらへ通すから」
と、言い、鷹揚な態度で、部屋を出ていきます。
「なんだか、緊張しちゃう」
と言っているのは、由美ちゃんです。
「○○くんは、全然へーきそうね。こういうの」
と佳乃さんが不思議そうに質問します。
「うーん、ま、だいたい事態は見えていますからね。それより、どんなことになるかの方が、楽しみですよ」
と、僕はにこやかな笑顔を見せて、言います。
「頼もしいわね。やはり、男性は、そうでなくては、いけないわ」
と、佳乃さんは、僕のももの上に手を置きながら、話しています。
「がんばってね」
と、佳乃さんは、若干頬を染めながら僕に言います。
「はい。大丈夫ですよ」
と、僕はにこやかに笑うと、静かに時を待ちます。
「記者の方が、おみえになりました」
とお手伝いさんが、伝えてくれたので、僕らは居住まいを正して、彼を待ちます。
「どうも!少し遅れました!」
と元気よく入ってくるのは御幸記者です。
彼はひとり女性が増えていることに少しびっくりしますが、表情にはださずに、ソファーに座ります。
「さて、今日は水島社長に会わせてくれるんですよね!」
と、元気に言う御幸記者です。
「あなたは、水島社長があの場に現れた理由が知りたかったんですよね」
と、僕が言うと、彼はすぐに反応し、
「ええ。まあ、それがわかれば、別に水島社長に会う必要はありませんけどね」
と言います。
「昨日、僕が水島社長から、そのことについて、直接、お聞きしました」
と、僕が言うと、御幸記者は、前のめりになって、
「で、どういう理由でした?」
と聞いてきます。
「それを話す前に、ひとつ約束してほしいことがあるんです」
と僕が切り出すと彼は少し構えます。
「な、何ですか?今度はあなたが、取引を要求ですか?」
と、彼は言うと、少し不審そうな顔をします。
「そんな構えないでください。いや、ちょっとこの御方が、新聞記者という人間に興味を持っていまして・・・」
と、僕が佳乃さんをだしに使うと、御幸記者は、目をむきます。
「え、僕に興味がある、と?」
と勝手に都合のいい解釈をする御幸記者です。
「彼女は、地域密着型ラジオのアナウンサーで、それで、取材活動に興味があるようで・・・それで」
と、僕が言うと、佳乃さんもうまく合わせて、
「佳乃と申します。新聞記者さんの取材方法って、どのようなものか、非常に興味がありまして、私も同行させて頂きたいのですが・・お頼みできないでしょうか?」
と、にこやかな笑顔を振りまきながら、御幸記者に頼みます。
「ああ、アナウンサーさんでいらっしゃる・・・どうりで、綺麗な方だと思いました。ああ、いいですよ。同行取材くらい、慣れていますから」
と、美人には鷹揚なところを見せる御幸記者です。
「あの、このお二人にも同行して頂きたいんですけど、よろしいですわよね」
と佳乃さんは、さらりと頼むと、御幸記者は、
「ああ。お二人も付いてくるんですか・・・まあ、いいでしょう」
と、二人きりで、行くことを期待していた御幸記者は、少し残念そうに、話します。
「よかった!楽しい時間が過ごせそうですわ!」
と、佳乃さんがほほえむと、御幸記者もつられて、
「いや、美人な方に、そうやって、喜んでもらうと、僕もうれしいです」
と、なにか勘違いしている御幸記者です。
「あいつ、何か、カン違いしているようだぜ」
と、僕が小声で由美ちゃんに言うと、
「でも、うまくいったわね」
と、笑う由美ちゃんです。
「さて、それじゃ、水島社長が、彼とどういう関係だったか、話してくれませんか」
と、改めて居住まいを正した御幸記者が、僕に聞いてきます。
僕は鷹揚に構えると、一気に説明します。
「その便利屋の人間とは、飲み屋で出会ったそうです。そして、意気投合して、彼がお金に困っているようだったので、援助してあげた、と」
その言葉を聞くと、彼は少し考え込みます。
そして、顔を上げると、言葉を出します。
「そうですか。まあ、つじつまは合いますが、糸が切れちゃった感じですね」
と、ちょっと残念そうな表情をします。
「でも、その話、本当かどうか、確認する必要があるんじゃないですか?」
と、由美ちゃんが聞くと御幸記者は、当然とばかりに話します。
「ええ、もちろん、例の便利屋に会って、裏を取る必要があります」
と御幸記者が言うと、佳乃さんがにこにこして、
「じゃ、私たちも一緒に、ね」
と言います。御幸記者は、先程の約束があるので、不承不承、
「わかりました。くれぐれも、邪魔だけはしないでくださいね」
と、彼なりの防御線を張っています。
「よし、話は決まった。じゃ、今から、その便利屋とやらに、会おうじゃないか」
と、僕が言うと、御幸記者は、
「なんだか、うまく乗せられたような気がするなあ・・・」
と、つぶやきながら、僕らと一緒に水島邸を辞去するのでした。
「チンクエチェントって、かわいい車なのね」
と、御幸記者の車に同乗しながら、由美ちゃんが言います。
「まあ、これでも、イタ車ですからね。小回りもきいて、いい車なんですよ」
と、自分の車に愛情たっぷりの御幸記者です。
由美ちゃんと僕は後部座席に座り、御幸記者が運転し、その横に佳乃さんが座っています。
「御幸さんって、玉木宏さんに似ていますね」
と佳乃さんが、言うと、少し照れる御幸記者です。
「いやあ、たまに言われるんですが、あんなにカッコよくありませんよ」
と、そう言うわりには、まんざらでもなさそうな、御幸記者です。
「ああ。そうだ、これ名刺です。何かあったら、いつでもご連絡ください」
と、どうやら佳乃さんに興味がありそうな御幸記者です。
「御幸真一さん。なかなか、いいお名前ね」
と、佳乃さんは、どうやら、持ち上げ大作戦で、取材を楽しもうとしているようです。
「そうですか?いやあ、そんなこと言われたの、初めてだなあ!」
と、御幸記者も、おだてられて天にも登るような気持ちのようです。
「佳乃さんって、おだてるのが上手なのよ。もう、男性のこころなんて、軽くころがしてしまうんだから」
と、由美ちゃんが僕に小さな声で、佳乃さんのすごいところを話しています。
「何、あれは、いつものことなの?」
と、僕がびっくりしたように由美ちゃんに聞くと、
「まあ、ね。だって、アイドルですもの。男性のこころの中なんて、すべてお見通しなんだから!」
と、彼女のすごさを知っている由美ちゃんです。
「いやいや、女性は、こわいね」
と、僕も白旗をあげながら、佳乃さんと御幸記者の二人を見守っています。
「なんだか、今日はものすごく、楽しいなあ!」
と、うれしそうにチンクエチェントを運転する御幸記者でした。
(つづく)
と僕が言うと、佳乃さんと由美ちゃんはシックなパンツスーツ姿で、うなずきます。
僕らはあれから、それぞれの家に戻り(僕は由美ちゃん家だけど)、一晩を過ごすと
新たな気持ちで、佳乃さんの家に集まったのです。
僕らはタクシーで、水島社長の家に移動すると、いつものように、お手伝いさんに
案内され、広い応接室に通されます。
「さて、御幸記者待ちだね」
と僕が言うと、二人とも少し緊張した面持ちです。
「私たち、連れて行ってもらえるかしら?」
と佳乃さんは心配顔です。
「まあ、○○さんのことですもの、大丈夫ですよ」
と、まったく心配していないのは、我らが由美ちゃんです。
「うん。まあ、大丈夫だと思うよ。まあ、成り行きを静かに見守っていてください」
と、僕が言うと、満足顔の由美ちゃんです。
「ね。言ったとおりでしょう」
と、自分のことのように、自慢する由美ちゃんです。
「うん。わかったわ。大船に乗ったつもりでいましょう」
と、佳乃さんも安心顔です。
そこへ、水島社長が、顔を出します。
「そろそろ、例の記者が来る頃だ。準備は大丈夫かね?」
と、水島社長は、少しうろたえています。
「ああ。いつでも、大丈夫です。もう、準備は万端ですから」
と、僕が言うと、水島社長は、
「うん。大丈夫そうだな。彼が来たら、こちらへ通すから」
と、言い、鷹揚な態度で、部屋を出ていきます。
「なんだか、緊張しちゃう」
と言っているのは、由美ちゃんです。
「○○くんは、全然へーきそうね。こういうの」
と佳乃さんが不思議そうに質問します。
「うーん、ま、だいたい事態は見えていますからね。それより、どんなことになるかの方が、楽しみですよ」
と、僕はにこやかな笑顔を見せて、言います。
「頼もしいわね。やはり、男性は、そうでなくては、いけないわ」
と、佳乃さんは、僕のももの上に手を置きながら、話しています。
「がんばってね」
と、佳乃さんは、若干頬を染めながら僕に言います。
「はい。大丈夫ですよ」
と、僕はにこやかに笑うと、静かに時を待ちます。
「記者の方が、おみえになりました」
とお手伝いさんが、伝えてくれたので、僕らは居住まいを正して、彼を待ちます。
「どうも!少し遅れました!」
と元気よく入ってくるのは御幸記者です。
彼はひとり女性が増えていることに少しびっくりしますが、表情にはださずに、ソファーに座ります。
「さて、今日は水島社長に会わせてくれるんですよね!」
と、元気に言う御幸記者です。
「あなたは、水島社長があの場に現れた理由が知りたかったんですよね」
と、僕が言うと、彼はすぐに反応し、
「ええ。まあ、それがわかれば、別に水島社長に会う必要はありませんけどね」
と言います。
「昨日、僕が水島社長から、そのことについて、直接、お聞きしました」
と、僕が言うと、御幸記者は、前のめりになって、
「で、どういう理由でした?」
と聞いてきます。
「それを話す前に、ひとつ約束してほしいことがあるんです」
と僕が切り出すと彼は少し構えます。
「な、何ですか?今度はあなたが、取引を要求ですか?」
と、彼は言うと、少し不審そうな顔をします。
「そんな構えないでください。いや、ちょっとこの御方が、新聞記者という人間に興味を持っていまして・・・」
と、僕が佳乃さんをだしに使うと、御幸記者は、目をむきます。
「え、僕に興味がある、と?」
と勝手に都合のいい解釈をする御幸記者です。
「彼女は、地域密着型ラジオのアナウンサーで、それで、取材活動に興味があるようで・・・それで」
と、僕が言うと、佳乃さんもうまく合わせて、
「佳乃と申します。新聞記者さんの取材方法って、どのようなものか、非常に興味がありまして、私も同行させて頂きたいのですが・・お頼みできないでしょうか?」
と、にこやかな笑顔を振りまきながら、御幸記者に頼みます。
「ああ、アナウンサーさんでいらっしゃる・・・どうりで、綺麗な方だと思いました。ああ、いいですよ。同行取材くらい、慣れていますから」
と、美人には鷹揚なところを見せる御幸記者です。
「あの、このお二人にも同行して頂きたいんですけど、よろしいですわよね」
と佳乃さんは、さらりと頼むと、御幸記者は、
「ああ。お二人も付いてくるんですか・・・まあ、いいでしょう」
と、二人きりで、行くことを期待していた御幸記者は、少し残念そうに、話します。
「よかった!楽しい時間が過ごせそうですわ!」
と、佳乃さんがほほえむと、御幸記者もつられて、
「いや、美人な方に、そうやって、喜んでもらうと、僕もうれしいです」
と、なにか勘違いしている御幸記者です。
「あいつ、何か、カン違いしているようだぜ」
と、僕が小声で由美ちゃんに言うと、
「でも、うまくいったわね」
と、笑う由美ちゃんです。
「さて、それじゃ、水島社長が、彼とどういう関係だったか、話してくれませんか」
と、改めて居住まいを正した御幸記者が、僕に聞いてきます。
僕は鷹揚に構えると、一気に説明します。
「その便利屋の人間とは、飲み屋で出会ったそうです。そして、意気投合して、彼がお金に困っているようだったので、援助してあげた、と」
その言葉を聞くと、彼は少し考え込みます。
そして、顔を上げると、言葉を出します。
「そうですか。まあ、つじつまは合いますが、糸が切れちゃった感じですね」
と、ちょっと残念そうな表情をします。
「でも、その話、本当かどうか、確認する必要があるんじゃないですか?」
と、由美ちゃんが聞くと御幸記者は、当然とばかりに話します。
「ええ、もちろん、例の便利屋に会って、裏を取る必要があります」
と御幸記者が言うと、佳乃さんがにこにこして、
「じゃ、私たちも一緒に、ね」
と言います。御幸記者は、先程の約束があるので、不承不承、
「わかりました。くれぐれも、邪魔だけはしないでくださいね」
と、彼なりの防御線を張っています。
「よし、話は決まった。じゃ、今から、その便利屋とやらに、会おうじゃないか」
と、僕が言うと、御幸記者は、
「なんだか、うまく乗せられたような気がするなあ・・・」
と、つぶやきながら、僕らと一緒に水島邸を辞去するのでした。
「チンクエチェントって、かわいい車なのね」
と、御幸記者の車に同乗しながら、由美ちゃんが言います。
「まあ、これでも、イタ車ですからね。小回りもきいて、いい車なんですよ」
と、自分の車に愛情たっぷりの御幸記者です。
由美ちゃんと僕は後部座席に座り、御幸記者が運転し、その横に佳乃さんが座っています。
「御幸さんって、玉木宏さんに似ていますね」
と佳乃さんが、言うと、少し照れる御幸記者です。
「いやあ、たまに言われるんですが、あんなにカッコよくありませんよ」
と、そう言うわりには、まんざらでもなさそうな、御幸記者です。
「ああ。そうだ、これ名刺です。何かあったら、いつでもご連絡ください」
と、どうやら佳乃さんに興味がありそうな御幸記者です。
「御幸真一さん。なかなか、いいお名前ね」
と、佳乃さんは、どうやら、持ち上げ大作戦で、取材を楽しもうとしているようです。
「そうですか?いやあ、そんなこと言われたの、初めてだなあ!」
と、御幸記者も、おだてられて天にも登るような気持ちのようです。
「佳乃さんって、おだてるのが上手なのよ。もう、男性のこころなんて、軽くころがしてしまうんだから」
と、由美ちゃんが僕に小さな声で、佳乃さんのすごいところを話しています。
「何、あれは、いつものことなの?」
と、僕がびっくりしたように由美ちゃんに聞くと、
「まあ、ね。だって、アイドルですもの。男性のこころの中なんて、すべてお見通しなんだから!」
と、彼女のすごさを知っている由美ちゃんです。
「いやいや、女性は、こわいね」
と、僕も白旗をあげながら、佳乃さんと御幸記者の二人を見守っています。
「なんだか、今日はものすごく、楽しいなあ!」
と、うれしそうにチンクエチェントを運転する御幸記者でした。
(つづく)