趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『夜また夜の深い夜』 桐野夏生

2015年02月18日 | 
図書館で桐野さんの作品を見ると、無条件で予約ボタンを押してしまいます。
ですから、どんな内容なのかは知らずに手に取りました。



表紙の絵がステキです。
読み進めていくと、この表紙の絵が何を表しているのか分かるのです。
分かってからじっくり見る方がいい気がします。

  私は何者?
  私の居場所は、どこかにあるの?
  どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。
  整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。
  魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説。 (帯より)

舞台はイタリア、ナポリ。
身を隠して生きる母と、各国を転々としてして生きて来たが、
19歳になったマイコは、次第に出自に疑問を抱く年頃となった・・・。

この国籍もない主人公の少女マイコの手紙の告白によって
物語は進んでいくのです。

手紙の宛先は、七海という女性なのですが、
読んでいくうちに、‘重信房子’という名前が浮かんできました。

そして、何年か前に重信房子という人の娘だという若い女性の記事を、
読んだ事を思い出しました。

世間を大きく騒がせた事件の陰には、当事者以外にも、
家族や関係のあった周辺の人々などと少なくない人間たちの存在があるのです。
そして、そうした事件によって巻き込まれていく理不尽な運命に、
なす術も無く、立ち尽くす人々に向けられる目は、あまりに冷たい。

その理不尽さと云ったら、国内のみならず、
海外の紛争地域での過酷さに、思わず言葉を失うのだ・・・。

それでも懸命に生き抜いて、生き延びようと駆け抜けていく少女たち。
その疾走感がたまらなく、物語に一気に引き込み読ませてしまう筆致はさすがです。

面白かったです。。