趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

「潤一」井上荒野

2009年01月30日 | 
井上ワールド、続いています。

この本は、一人の26歳の男‘潤一’と関わる
9人の、14歳から62歳までの女性との連作短編集です。

それぞれの女性たちと
それぞれの形で出会い、関わっていく様は
まさに‘それぞれの’なのです。

とても面白かったです。

読んでいて思ったことは
井上さんは、日常生活で身近に起こることや
その時の感情の流れのようなものを
すくい取るのが上手だな、ということです。

夫婦や恋人といった密な関係の中にひそむ
隠れた、あるいは隠された思いというものに
光をあてる、というような。

その作業が面白い、と感じてしまいました。
あ、こんな時こう思うよな、とか
そうか、こんな風に感じていたのかもしれないな、とか
改めて共感する部分が多いので
自分自身でもやってみたくなるのです。

かつて出会った人たちとの
出会いはどんな感じだったろうか
どこを見て、何を感じていたのだろか
時間が経つ事で
それはどんな風にかわっていったのだろうか
どんな風に進み、どんな風に離れていったのだろうか、
というような。

本の最後は、『潤一』の章。
この章がいいです。
直木賞受賞作「切羽へ」の対極にあると思いました。

井上ワールド、どっぷり!!