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自 縄 自 縛

2009-07-11 08:22:58 | Weblog
流動性の罠について

ここで 改めてその実態を眺めておいた方がよさそうだ

真相を正しく知ることができれば 有効な対策を誰もが引き出せる

結果からその原因を探ろうとすることは

問題の所在を知るための最初の 一歩


ドル資本と呼ばれるグループのやっていることは

米政府とFRBがマネーサプライを公開できないほどまでに

過剰発行したドルを

世界の市場から回収する機能と

それを再配分するための投資活動を行うことによって

ドル通貨に固有の価値を保ったまま

通貨の濫発に伴うインフレを回避しつつ

基軸通貨の新規発行を可能な状態にするための

民間企業による経済活動という体裁になっている


イラク戦争で必要となった膨大な戦費を

増税せずに調達しようとしたために

石油の価格を五年以上に亘って引き上げつづけ

その決済を行うための通貨であるドルの大量発行を促していた

そんな事実を 記録に見ることができる


ドルの発行権を最大化したその果てに待っていたのは 

百年に一度という世界同時不況であった

単独行動主義と言われながらイラク戦争から抜け出せなくなったために

大量の米軍を中東に派兵しておくための費用を捻出する必要に迫られたのだ

その調達手段として

制御可能な市場となっていた WTI へ資本を誘導することによって

原油相場を長期間高騰状態へと貼り付けさせていたのである


あらゆる地域でドルが余るという状況が生み出されたのだったが

それを回収する機関として ドル資本に積極的な投資活動を行わせ

ダブついたドルをアメリカ以外のローカル市場へと押しつけることによって

合法的とみえる投資活動を公然と行いながら

ドルに固有の属性となった過剰流動性を消し去っただけでなく

FRBにドルの新規発行を可能にするという状態をもたらして

ドルそのものが大量に余るという結果を生み出すこととなったのだった

大量のドルが このようにして

米国の株式市場だけでなく

住宅金融市場へも流れ込んでいったのである

サブプライムローンの失敗は 

過剰投資によるリターンの回収を急いだということにある


世界規模の金融危機は 

これまでの経過が示す事実にみるごとく

明らかな原因があって 必然的に生み出されてきたものなのだ

その背景に盤踞しているものが形となって見えてくると

それがファンダメンタルズの結果などではなく

ドル安政策に基づいた誘導の結果であったということが

誰の目にもすぐ解るようになるだろう


ドル通貨を特定の国へ過剰に供給するという行為を

ドル安政策という

ドル資本と呼ばれる一群が こぞって

市場でダブついているドルを速やかに回収し

経済成長著しい国の通貨とそれを交換してきた

富の偏在という現象を生み出したものは 基軸通貨の発行権に他ならない

この通貨交換を行うための市場が 為替相場 FX 

ドル以外の通貨交換は公平に行われており また平等ではあるのだが

基軸通貨であるドルについてだけは

決して公平でも

また平等でもない交換システムとなっている

この事実が先進各国に見えていなかったということが

アメリカにドルの濫発を許し 

世界同時不況の原因とさせたのだ

ドルを供給する側のすべてにとって 

まことに有利となる条件が

このようにして予め設定されていたということなのだ


対日本では 円高ドル安という状態が

ドル資本の都合で勝手に顕在化するような状態になっている

理由のわからない突然の円高が

連綿と続いているというこれまでの経過に学ぶべきであろう

仕掛けられた円高は 

ドル資本による集中的な投資活動の結果であった


その力に恃んだ投資行為が活発に行われるようになると

政府日銀は為替市場へと隠密裏に介入しなければならなくなる

円の価値を中央銀行自らが引き下げる という一連の経過が

87年以降頻繁に繰り返し観測されている


円を売って得たドルは

遊ばせておくわけにはいかない

そこで

最も安全で利回りの高いもので運用する

という枠組みが作られた

買ったドルの90%が

アメリカの公債になっている

残りはドル建ての金塊とドル預金という構成である

これら国がもっている在外資産を総称して

外貨準備高と呼ぶ


ドル資本がドルの過剰流動性を消すために

特定の国に対して投資活動を仕掛けると

ドルを買わざるを得なくなったその国の中央銀行は

米国債を保有するような仕儀へと陥るのである

これが ドル安政策が担っている主要な機能であった

その目的は 過剰流動性を消し去るということと

売りつけた米国債などの償還を先送りさせること


海外からやってきた資本が米国外へ流出しないようにした上で

その間にドルの通貨価値を下落させ

債務負担そのものを軽減させる という明確な目的が秘められている


そんな不合理極まりない通貨システムが

プラザ合意以降世界市場で成り立つようになっていたのだった

このシステムを機能せしめる全体プログラムのことを

ドル経済圏構想という

FTAとWTOとが それぞれの手段と目的になっている

この問題を改めるためには 第三通貨の創設が必要なのだ


ドル資本が人民元を大量に買うことによって

国際市場でダブついているドルを投資目的で処分する効果が得られる

中国政府と人民銀行では

大量に売りつけられたドルに対抗するために

急速に下がったドルの価値を

人民元の通貨価値を引き下げるという方法で

元の水準へと戻さなければならなくなっていたのだった


中国の外貨準備高は

この三年で日本のそれを急追し

昨年あっという間に追い抜いた

現在世界一の水準に達して尚伸び続けている

いまや

世界最大のドル資産を保有する債権国となった中国は

アメリカに対して

経済的に最大の優越性を保持する国となったのである


ドル資本が投資を集中させる所謂投機状態となっていながらも

中国の経済成長率は ドル資本の調達金利以上の水準を保っていた

ドル資本がやってきた国は確実に貧しくなるのだが

経済成長率が十分に高い状態にあるのなら

ドル資本は中国市場で得た利益を そこに再投資する

この場合 資本の流出はおきない

利益率が高い投資市場は 資本をそこに引きとめる力をもっている

ところが

経済成長率が低くなっている国で投資活動をした場合には

ローカル市場で獲得した資本を

そこに再投資することができない

金利差を埋めるだけの投資効果が見込めないケースでは

再投資は起きない

そこで

ローカル市場が生みだした収益の総てを

三か月以内に回収する

という行動が恒常化していくこととなったのである

ドル資本の決算が四半期ごとになっているからであった

外資を呼び込むと一時的に流動性が増加するにしても

それは永く滞留しない資本に過ぎない

海外からの投資が活発になって 流動性が潤沢になるのは事実だが

その国の経済成長率が

ドルの調達金利より高くなければ

国内市場で回るべき流動性はそれ以上増えようとはしない

却って市場全体を枯らしてしまうこととなる


日本の労働市場が短期間で急激に劣化してしまったのは

ドル資本による収益の本国への還流がおきても

国内に再投資するという行動がまったくおきなかったからだった

為替差を利用した資本の入れ替えだけがおきていたため

日本のマーケットは枯れてゆく運命へと陥らざるを得なかったのだ

未曾有の低金利状態が長期間続いていたのだから

この顛末は寧ろ当然のことであった


資本が資本を生む展開を生み出せなくなった市場は

確実に衰える

いざなぎ景気を超える経済成長を記録しておきながら

その実感が国民にまったくなかったというのは

利潤が再投資へではなく

ドル資本と総称される国際金融組織などの手によって

投資家への配当を実施するために悉く回収されていたからであった


日本という国の劣化は

経済実態の裏に潜むからくりを知らずにいたノー天気な為政者が

米政府の慫慂を容れて

外資導入を政策として国に実行させてしまったということにある

日本の金利は当時

世界最低の水準にあったが

ドルの公定歩合は当時 5%台に達していた

金利の高いドルを調達して

日本の土地や企業を買収していたのだったから

日本市場に再投資することは効率において劣っていたのである

これでは螺旋形の経済成長が

国内市場に再び生まれでるはずはなかった

その影響を最初に受けることとなったのが

日本を底辺で支えていた健全で温和な労働者たちだった

出生率の緩慢な低下と失業率の増加が続く状態とは

決して無関係ではない


政府が行った判断の誤りがもつその意味を知らなければ

現実に起きている事態のもつ意味を察することはできない

問題の所在を知れば

有効な対策はすぐに引き出せる

何が問題なのかということが見えてこないうちは

国全体が衰弱を続けていかなければならないのだ


ドル安政策は

世界中に売りつけたドル建ての債券価額を

相対的に引き下げるという絶大なる効果を生みだした

外貨の方が高くなっている限り

ドル建ての資産を処分することはどの国にもできない

損失がその時点で発生してしまうからである

ドル安政策で大量のドルを売りつけられた国は

売るに売れないドル資産の保有国となる以外に

残された道はない

自己の投資行為そのものが

在外資産の回収を阻むという拙い結果を生みだすのだ


自分で自分の体に巻きつけた縄は 

自らの努力で振りほどかなければならない

そのための努力を怠っていたということが 

健全な国民をいま 大いに苦しめている

国のありようを変えるきっかけは

国を成り立たせている国民全体の意志によって

粛々と 

だが

敢然とした行動をとることによってのみ

与えられる 
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