こ と の 端

散文でロジックを
環境 経済 エネルギー 電気 教育 などの "E" に関するちょっと気になったこと

因 果 関 係 ②

2012-06-17 07:56:16 | Weblog
40年ほど前に

金本位制から一方的に離脱していたアメリカは

独自の通貨であるドルを

石油の代金を決済するための通貨と定めたことにより

ドルの通貨価値を裏付けるための担保となる根拠を

金から石油へと切り替えることに

もののみごとに

成功した


同時に為替市場を固定相場制から

変動相場制へと変更させたことにより

産油国との関係をもたないすべての石油消費国は

地下資源を輸入するために

ドルを買って代金を決裁しなければならなくなった


自国通貨を売ってドルを買うのだから

ドル高ローカル通貨安になったのは

当然の帰結

ドルの価値がこの変更をきっかけにして

高まっていったことにより

アメリカはドルを主軸とする資本主義体制

即ち

ドル経済圏を確立させ

更にそれを大きく拡大させたことにより

国際経済の姿を

現在のような磐石なものへと仕上げていった


産油国は獲得したドルの価値が高まり

石油の売却益と

為替差益との二種類の恩恵を

市場から

十分に受けとる身分となったのだった


金本位制からの一方的離脱は1971夏のこと

だがその直後ともいえる73年秋に

第一次石油ショックが発生し

原油相場が急騰する事態へと陥った


石油消費国には

地下資源を確保するという義務があった

それにはアメリカの通貨であるドルを買って

石油を輸入してこなければならない

ドルの需要が高まれば高まるほど

その通貨価値は急速に上昇する

ローカル通貨の価値が下がり

ドルの価値が上がるのだから

石油消費国の経済は縮む

並行してアメリカ製の武器を買っていた南側に位置する

アフリカ大陸にある独裁国家の一群は

財政状態を急速に悪化させることとなった

その結果として

南北問題が70年代半ば頃から

国際社会の関心をひきつけるようになっている


二度目のオイルショックが79年冬におき

石油の価格は更に高騰することとなった

ドルの需要は一層膨らみ

市場にはアメリカが発行したドルが

行き場を求めて流出圧力を強めていた

その後

ドルの価値が上がりすぎてしまったことから

アメリカはG5を召集して

ドル売りの強調介入を実施した

この決定を下した場所の名前をとって

プラザ合意とその後呼ばれるようになっている

1985年秋のことである

この時からドル安政策が闊歩するようになり

ドルを過剰流動性と呼ぶ機会が次第に増えていった

アメリカが発行しすぎて余らせたドルは

速やかに市場から回収しておかなければならない

ダブついた紙幣はドルの通貨価値を希釈させる原因となる

FRBは公定歩合を引き上げて

回収したドルを米銀へと集約させた

これにより過剰発行に伴うインフレを回避したのだったが

過剰に供給したドルの活用法を結果として誤った


米銀は回収したドルを海外投資へと向けさせ

高められた金利以上の収益を確保するよう

市場から迫られた

そこで脚光を浴びるようになったのがドル資本

組織的な投資行為を連綿と行うことを通じて

ドルの過剰流動性を世界市場へと分散させ

獲得したドルの運用益で

高いリターンを投資家に保証することで

一般からの資本を引き出すことに成功し

それを組織的に

効率よく運用することにより

多大な利益を獲得する

という現在の経済基盤が

アメリカの戦略により作られた


その投資先として

当時最初に指定されたのが

他ならぬ日本市場だったのである

土地神話に基づくバブル経済は

アメリカが過剰発行したドルを市場から消しながら

ドルの更なる追加発行を可能ならしめただけでなく

ドル経済圏そのものを拡大させる

絶大な効果を発揮するものとなったのだった


過剰に流通している余った大量のドルを

速やかに回収して

有利な運用ができる日本市場を狙って

ドル資本が大挙して押し寄せてきた

ドルで円を買うのだから

ドル安円高になったのは当然の経過


ドル資本は有力議員を通じて

邦銀にノンバンクを設立させ

ドルを還流させる枠組みを日本国内に作り出した

日本の不動産取引で獲得した収益を

ドルへと戻して投資家へとそれを還元するとき

円が高くなっている方が為替差益を獲得できる

少ない円で

値の下がったドルを

より多く取り戻すことが

効率よくできたからである


円高が生まれている状況を

国内の経済人は

このとき 誰一人理解しようとしなかった

理由のない円高として

訝しむことしかできなかった時代が

今もなお続いている


国会が誤った判断を下したことによって

アメリカ全土を買うほどの勢いのあった日本経済は

バブルを潰して

失われた20年という

不名誉な時代を

更に長びかせることを今 

強いられている

経済メカニズムに関心のなかったすべての経済通が

同じ陥穽へと一斉にはまり込んでいた

バブル崩壊後も執拗につづく円高は

日本市場が

ドルの捨て場になったことを告げていた


バブルの崩壊は90年4月

それ以降

過剰流動性の大部分は中国市場へと向かい

中国人を世界一豊かな民へと仕立て上げたのだった

それには2001年の9.11を基点とする

アメリカによる報復を名目とする

イラクの独裁体制打破と

それによる地下資源の利権確保とが

主な目的となっていた

イラク戦争が続いていた間

ドルのマネーサプライさえ公表できないほどのドルを

遍く素早く供給し

高騰させておいた原油相場を

世界全体に受け入れさせた

ドルの発行益があったからこそ

増税抜きで長期化したイラク戦争に

大量の米軍を展開させることができていた

それを可能ならしめたのは

原油相場を決める市場であるWTIを

国内に擁するアメリカの意思が反映されていたからだった


ドルの過剰流動性を

自国の経済発展のために活用することになった中国は

大量のドルを吸収するために

人民元の価値を高めざるを得なかった

高くなりすぎた元は

中国経済にとって輸出を困難なものにする


人民銀行は元の通貨価値を引き下げる必要に迫られ

ドルの価値を

自らの通貨で高める道を選びとらざるを得なかった

このとき中国が買ったドルの巨大さというものが

中国をして世界最大の債権国へと押し上げさせた

ドル建ての公債を大量に買うということは

敵に塩を送る行為に等しい

中国を仮想敵と日本に思わせてきたのは

他ならぬそのアメリカだった


この現実の拙さに漸く気づいた中国政府は

元売りドル買いで獲得したドルを

米国債を買うことにではなく

自国の軍事力増強へと振り向けたのだ

劣っていた海軍力の充実を急ぐようになり

空母の建設を最優先にし

防衛線の拡大強化を図っている

このことが米軍の太平洋に於ける配置割合を

50%から60%へと変更させた


これら一連の変化は

もともと

アメリカが金本位制から離脱した時に胚胎させた原因が

巡り巡って

いま

双葉から巨木を育て

日当たりのよい部分を

アメリカから中国へと

独り占めさせることを促すように働いている

まことに皮肉な経過であろう


アメリカの判断が健全なものであったのなら

サブプライムローンの債務不履行による金融危機は起きておらず

またユーロ危機へとそれが発展することもなかったのだし

ギリシャ危機が

イタリアからスペインへと飛び火することもなかった

アフリカの南北問題もおきていなければ

温暖化現象もより緩やかなものになっていた

日本経済がバブル化することもなければ

円高に苦しむようなことにもなってはいなかった


経済ダイナミックスとそのメカズムの実態を

誰も調査してこなかったということが

環境危機と経済危機とを

いま

同時に生み出させている


日本の貧困化は

紛れもなく国会の不明が導いたもの

その事実にさえ一向に気づかない

停止していた原発の一部再稼働は

判断が適切であれば

決して起き得なかった経過なのだ

この国の不幸は

不健全な循環から

抜け出そうとしなかった政治の現場が

判断を誤り続けてきたその果てに

生み出したもの


原発が100%停止していても

電力危機など一度も起きていなかった

その理由とメカニズムを調べた事実さえ

皆無

交流送電を成り立たせているその方法を調査すれば

電力業界が秘密主義を貫かざるを得なかったその理由が

わかる

国が劣化したのは当然の帰結

思考力を養わない教育制度のあり方が

盲目的に従順な国民を作り上げるようになっていた


もの分りのよい指導者の一群は

国を却ってダメにする

利益を得ていたはずのアメリカは

行き詰まった資本の論理の行く末に

既にオノノイテいる

不利益を得たものだけが

残される

今日17日(日本時間の明日)に予定されている

ギリシャの再選挙の結果をみれば

経過のもつ意味の行方が見えてくる


真実を知ったものは

行動を躊躇わない

その方法は多様であってよい

だが

思考力を失った者は

変化の渦にただ巻き込まれてゆくのみとなる
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