こ と の 端

散文でロジックを
環境 経済 エネルギー 電気 教育 などの "E" に関するちょっと気になったこと

世 迷 い 事 ①

2011-04-10 08:26:50 | Weblog
巨大地震によって生じた未曾有の津波が

東日本沿岸の原子力発電所すべてを襲い

それまで

円滑且つ正常に運転されていた

核分裂によって得た熱による

蒸気発電システムを

一瞬で

役に立たない無価値なものに

してしまった


津波が襲ったこのときを境にして

管理体制に課題を抱えていた原発では

冷却するための熱の制御が事実上不可能になり

崩壊熱の増長を

職員たちはただ扼腕するのみで

呆然と眺めていることしかできなかった


経緯は省くが

結果として水素爆発がおき

頑丈この上なく作られた原子炉建屋の多くが

一瞬で粉々に吹き飛んだ

映像資料はまことに雄弁であった


そもそもの原因は

冷却水を汲み上げるためのポンプに

電力を供給していたディーゼル発電機へ

燃料である軽油を届けられなくなったことにある

津波が

タンクを設置していた場所から

移動させてしまったからだった

瑣末な変化が

厳重に管理されていた原発を

あれよあれよという間に

破壊させてしまったという

想定外の経過が

放射能汚染の発端になっている

まさに

千慮の一失というべきできごとが

国と電力会社の浅慮のほどを

もののみごとに浮き彫りにした


関係者の一部は

ことの重大性を当初より悟っていたようだが 

なす術がなかった

その初期段階から

放射能を拡散させる漏洩事故がおきるまで

さして多くの時間はかからなかった


その後になっても管理する側の不首尾はつづき

進捗よりは停滞

という状況がしばらくの間

維持されていた

報道各社は

その事実を克明に伝えている


原子炉の内部でおきるであろう

諸種の反応形態の変化が検討され

当座

水素爆発を遅らせるための措置として

不活性ガスである窒素N2を封入することにより

可燃性ガスである水素H2の比率を引き下げる

という方法がとられた


水素爆発をおこすための水素ガスの濃度は

4乃至5%から75%の範囲

とされている

窒素ガスの封入は

水素ガスの濃度を

5%以下に引き下げるための

便宜的な措置

水素ガスの濃度が今後上がれば上がるほど

窒素ガスによる内圧の増加が

際立っておきる


原子炉容器の内圧がより高まれば

どこかでガス抜きを行って

安全を確保しなければならない

炉外排気を強行すれば

放射性を帯びた窒素ガスが

大気中へと撒き散らされる


水素ガスを発生させたそのメカニズムを

管理する側が理解できていないと

対策の有効性は失われる

窒素ガスで水素ガスの濃度割合を変えることができたとしても

時の経過とともに

水素ガスが更に増えていくのであれば

爆発の危険性は

常に生じていることになる


やるべきことは水素を生成させた原因を特定し

容器内の水素濃度を

速やかに減らす

ということでなければならない

それを可能な状態にすることができれば

窒素ガスを関与させる必要性は消える


問題が見えていないときには

対症療法に活路を見出そうとするものなのだ

応急措置で小康を得ることができたとしても

それで問題が解決した

ということはできない

設計者が見逃していた

水素を生成させたその理由を

いま 

突き止めておかなければ

根本的な解決を図ることは

で き な い


窒素ガスを封入したからと言って

安心していられる場合ではない

それは

何の解決策にも

なっていないからである
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