「還らざる人」 自分が参加したTV番組をもう一度見直してみようシリーズ第10回
金曜女のドラマスペシャル
放送日:1985年12月20日 オンエアー
出演:長山藍子、田中邦衛、山本 亘、山口美也子、
監督:井上昭
制作:大映映像・CX
2年前「「霖雨の時計台」の頃から、なにかと目にかけてくれた井上昭監督の作品にまたもや参加出来ました。記憶をなくした田中邦衛さんを、妻の長山藍子さんが5年ぶりに見つけ出したものの、山口美也子さんという恋人と同棲していた。そして、その山口さんは邦衛さんの子供を妊娠しているという設定です。今、見直してもすばらしい作品で、ドラマ構成、カメラワーク、すべてにわたって井上昭監督の息がかかっている作品です。
なんども踏切が出てきて、井上監督は踏切が好きなんだなぁと思うし、ナイトロケが美しく、技術スタッフも優秀でした。見直して驚いたのは、同棲していた古いアパートの2階外階段から、山口美也子さんが転げ落ちるスタントは、すごい。怖い。スタントマンはよくやったなぁと思います。真後ろに倒れて落ちるんですから、命がけです。こんなシーンをあまり覚えていませんでした。セカンド助監督って、俳優さんのキュー出しで、意外とカメラ側にいなかったり、次の段取りで頭は先に回転していたりしていて、俳優さんの芝居をしっかり見ていなかったりします。それではダメですよね。でも、フリーランスの助監督に求められる事は、滞りなく現場を進行させる事なんです。そのあたりが、大手の社員助監督さんより、シビアに求められたのです。予算がなかったからですね。それと、大手の社員助監督さん達は、次期監督候補生として、スタッフからしっかり一目おかれていたように思います。助監督だけど、監督修行をしている人達という認識。我らフリーランス助監督は、ともかく現場を進行させる段取り屋でした。でも、この番組の井上昭監督とそのスタッフは、ちゃんと監督候補生と見てくれていたように思います。すばらしいスタッフ達でした。みなさん、大映や日活など出身の方々だったので、その雰囲気が残っていたように思います。たんなる段取り屋として成長するのではなく、井上監督の演出術を、もう少ししっかり見ておかねばなりませんでした。あの時、長山藍子さんと田中邦衛さんの、気持ちを吐露しあう最高のシーンを、しっかり心に刻まずに、段取りばっかり考えて現場にいた事を、強く後悔しています。
この番組の中で、段取り的にやっぱり失敗をやらかしているのを、発見してしまいました。上野駅で撮影をした時のことです。電車の中に、長山藍子さん。ホームに彼女を見送る田中邦衛さんというシーンです。カメラは電車の中から、長山藍子さん越しに田中邦衛さんを撮影しています。カメラも監督も電車の中です。私が、田中邦衛さんの側の柱の陰に隠れています。ホームのスタッフは、セカンド助監督の私一人です。トランシーバで連絡し合ったかどうかは忘れましたが、ドアが閉まる前からカメラは回す予定でした。ドアが閉まって、電車が動き出したら、もうカメラは回っています。監督の「よーい、スタート」の声もなく本番です。緊張しました。失敗すると、もう一度上野駅に戻ってくるという、面倒な事になります。
私は、柱の陰に隠れていました。邦衛さんが芝居をしている声が聞こえます。本番いってるなと心の中で思いました。そしてとっさに気がつきました。電車が動くと同時に、柱の陰に待機している私が、だんだんとカメラに映ってくる角度になって・・・はっとして、私はカメラに映らないよう回り込んで、しゃがみました。映ってないよなぁ、御願いしますと心の中で祈りました。放送分を見ると。なんとかOKでした。しかし、回り込んだ私のおしりが、ちょっと映り込んでいました(笑)危ない危ない(汗) サードの頃なら、気がつかないまま、ぼーっと柱の陰に立っていたでしょう。撮影中、カメラに映っている映像を頭に浮かべる事が、出来るようになっていたんです。ぎりぎり成長の跡があったんですね(笑) 自慢出来る話ではないのですが(笑) おそらく編集の方から、後ろで動いているあの黒い物は何だ?と指摘されたかと思います。使えるぎりぎりのところで編集していただいたと思っています。本当に、すみませんでした・・・
金曜女のドラマスペシャル
放送日:1985年12月20日 オンエアー
出演:長山藍子、田中邦衛、山本 亘、山口美也子、
監督:井上昭
制作:大映映像・CX
2年前「「霖雨の時計台」の頃から、なにかと目にかけてくれた井上昭監督の作品にまたもや参加出来ました。記憶をなくした田中邦衛さんを、妻の長山藍子さんが5年ぶりに見つけ出したものの、山口美也子さんという恋人と同棲していた。そして、その山口さんは邦衛さんの子供を妊娠しているという設定です。今、見直してもすばらしい作品で、ドラマ構成、カメラワーク、すべてにわたって井上昭監督の息がかかっている作品です。
なんども踏切が出てきて、井上監督は踏切が好きなんだなぁと思うし、ナイトロケが美しく、技術スタッフも優秀でした。見直して驚いたのは、同棲していた古いアパートの2階外階段から、山口美也子さんが転げ落ちるスタントは、すごい。怖い。スタントマンはよくやったなぁと思います。真後ろに倒れて落ちるんですから、命がけです。こんなシーンをあまり覚えていませんでした。セカンド助監督って、俳優さんのキュー出しで、意外とカメラ側にいなかったり、次の段取りで頭は先に回転していたりしていて、俳優さんの芝居をしっかり見ていなかったりします。それではダメですよね。でも、フリーランスの助監督に求められる事は、滞りなく現場を進行させる事なんです。そのあたりが、大手の社員助監督さんより、シビアに求められたのです。予算がなかったからですね。それと、大手の社員助監督さん達は、次期監督候補生として、スタッフからしっかり一目おかれていたように思います。助監督だけど、監督修行をしている人達という認識。我らフリーランス助監督は、ともかく現場を進行させる段取り屋でした。でも、この番組の井上昭監督とそのスタッフは、ちゃんと監督候補生と見てくれていたように思います。すばらしいスタッフ達でした。みなさん、大映や日活など出身の方々だったので、その雰囲気が残っていたように思います。たんなる段取り屋として成長するのではなく、井上監督の演出術を、もう少ししっかり見ておかねばなりませんでした。あの時、長山藍子さんと田中邦衛さんの、気持ちを吐露しあう最高のシーンを、しっかり心に刻まずに、段取りばっかり考えて現場にいた事を、強く後悔しています。
この番組の中で、段取り的にやっぱり失敗をやらかしているのを、発見してしまいました。上野駅で撮影をした時のことです。電車の中に、長山藍子さん。ホームに彼女を見送る田中邦衛さんというシーンです。カメラは電車の中から、長山藍子さん越しに田中邦衛さんを撮影しています。カメラも監督も電車の中です。私が、田中邦衛さんの側の柱の陰に隠れています。ホームのスタッフは、セカンド助監督の私一人です。トランシーバで連絡し合ったかどうかは忘れましたが、ドアが閉まる前からカメラは回す予定でした。ドアが閉まって、電車が動き出したら、もうカメラは回っています。監督の「よーい、スタート」の声もなく本番です。緊張しました。失敗すると、もう一度上野駅に戻ってくるという、面倒な事になります。
私は、柱の陰に隠れていました。邦衛さんが芝居をしている声が聞こえます。本番いってるなと心の中で思いました。そしてとっさに気がつきました。電車が動くと同時に、柱の陰に待機している私が、だんだんとカメラに映ってくる角度になって・・・はっとして、私はカメラに映らないよう回り込んで、しゃがみました。映ってないよなぁ、御願いしますと心の中で祈りました。放送分を見ると。なんとかOKでした。しかし、回り込んだ私のおしりが、ちょっと映り込んでいました(笑)危ない危ない(汗) サードの頃なら、気がつかないまま、ぼーっと柱の陰に立っていたでしょう。撮影中、カメラに映っている映像を頭に浮かべる事が、出来るようになっていたんです。ぎりぎり成長の跡があったんですね(笑) 自慢出来る話ではないのですが(笑) おそらく編集の方から、後ろで動いているあの黒い物は何だ?と指摘されたかと思います。使えるぎりぎりのところで編集していただいたと思っています。本当に、すみませんでした・・・