ENEOSホールディングスの宮田知秀社長
「合成燃料」原料から一貫し試験的に製造する施設完成 国内初 NHK 2024年9月30日 7時47分
企業の間で脱炭素に向けた取り組みが広がる中、原油由来のガソリンなどに代わる、環境に優しい燃料とされる「合成燃料」を原料から一貫して試験的に製造する施設が国内で初めて完成しました。
「合成燃料」は、二酸化炭素と水素を合成して作る液体の燃料で、使用する際の二酸化炭素の排出量が実質ゼロとされ、既存のエンジン車や航空機にも使えることから実用化が期待されています。
こうした中で、石油元売り大手のENEOSは横浜市内の研究拠点に合成燃料を原料から一貫して試験的に製造する施設を国内で初めて開設し、今月から稼働を始めました。
この施設では、水を電気分解して製造した水素と、大気中や、工場から排出された二酸化炭素を原料として、当面は、1日あたりおよそ160リットルの合成燃料を製造する計画です。
製造した合成燃料の一部は、来年4月に始まる大阪・関西万博で大型車両の運行に活用される予定だということです。
合成燃料について、政府は、2030年代前半までの商用化を目標に掲げていますが、原油由来のガソリンに比べて高い製造コストをいかに引き下げるかが課題です。
ENEOSホールディングスの宮田知秀社長は「今後も継続して技術を進展させていくとともにどうやったらリーズナブルなコストで作れるかということを徹底的に追求していきたい」と述べました。
「合成燃料」とは? 実用化のカギは?
「合成燃料」は、大気中や、工場などから排出された二酸化炭素と水素を合成して作る液体の燃料です。
原料の水素を再生可能エネルギーによる電力で製造すれば、使用する際の二酸化炭素の排出量を実質ゼロとみなすことができるため、環境に優しいとされ、世界では「e-fuel」とも呼ばれています。
最大の特徴は、既存のエンジン車や航空機にも使える点です。
自動車業界ではガソリンに代えて電気や水素エネルギーを活用する取り組みが主流となっていますが、EV=電気自動車や燃料電池車に切り替えていく必要があり、スタンドなどのインフラも新たに整備しなければなりません。
一方で、合成燃料は、既存の車にも利用できるほか、スタンドなどもこれまでの設備を活用できます。
日本では、ENEOSのほかに出光興産も2035年に50万トンの合成燃料を供給することを目指していて、北海道苫小牧市の製油所内で製造を計画しているほか、ことし3月には海運大手の「商船三井」と共同でアメリカの会社から合成燃料を調達することを発表しています。
海外での注目も高まっています。
ネット通販を手がけるアマゾンは、おととし9月にアメリカの合成燃料の製造会社と調達契約を交わし、アメリカ国内で配送するトラックの燃料に使用することにしています。
また、フォルクスワーゲン傘下のポルシェは、南米のチリの風力発電で作った水素を原料に合成燃料を製造し、試乗会やレースの舞台で使用しています。
一方、最大の課題は、製造コストの高さです。
合成燃料の現在の製造コストは、1リットルあたり300円から700円程度と、原油由来のガソリンの小売価格に比べると最大で4倍余りになっています。
実用化に向けては、生産の効率化などによって、こうした価格差をどこまで縮められるかがカギとなります。