公営競技はどこへ行く

元気溢れる公営競技にしていきたい、その一心で思ったことを書き綴っていきます。

巨人軍論

2006-05-04 00:33:00 | 公営競技論

という本が結構売れているそうだ。そして著者はというと、常に「打倒!巨人」を挑み続けた東北楽天イーグルスの野村克也監督。つまり、巨人軍のOBではない。

ハードカバーではない、新書本であり、そのため、値段も手ごろということが手伝ったんだろうが、内容は実に濃いもので、そこには南海時代、野村氏が選手およびプレーイングマネジャーとして、なぜ巨人に1回しか勝てなかったのか?という理由話が克明に記されている。

ま、巨人の話といえば、私も父親や母親からよーく聞かされたものである。しかし親父は「南海」、お袋は「巨人」のそれぞれファンだったから、全然その捉え方が違うのである。

まず親父の場合、

「巨人はいっつもカネ、カネ、カネ。カネの亡者みたいな球団。」

「審判も巨人に常に見方。Nなんてパリーグの審判やのにマージャンで勝たせてもらったからって巨人寄りの判定ばっかりやった。」

「おまけに、南海のTが日本シリーズ優勝目前にしてなんでもないフライを落球してその後巨人に大逆転負けを食らったときがあったけど、日本シリーズが終わった後、Tを即クビにしよった。普通日本シリーズでそんなことがあったからってするもんちゃうやろ。何かあったんやろ!」

というようにいうと、お袋が、

「何をいってんの。巨人と南海の違いは選手の意識の差。それと審判を見方にできないのは南海がそう仕向けないから。」

「Tの落球はTがへたくそだったから。」

「正力(松太郎)さんがそんな汚いことさせるか!「巨人軍たるもの紳士たれ!」っていつも言ってたのに。」

と返していたね。これを毎年毎年「聞かされていた」ものだから、別に野球がどうとか知らなくとも自然と「わかってしまう」というもの。

ま、野村監督が述べている内容はどちらかというと私の母親が言っていたことに近い。ところが、案外巨人軍の過去の強さの秘密というのは知られていない。したがって南海のみならず、南海以上に「仇敵」である阪神のファンとて、

「村山(実)はいっつも「巨人の審判」に泣かされとった。」

「カネでいっつも巨人はええ選手取り腐っていた。そんなもん、勝つの当たり前やろ。」

というような見方しかこれまでしてこなかったのである。

しかし今でこそ巨人は「普通のチーム」に成り下がってしまった感じだが、正力さんがチーム結成に掲げた、

「巨人軍たるもの紳士たれ」

というよき伝統は今も変わっていない。ま、去年までいた清原がピアスをしたり、無精ひげで試合に出ていたことはあったが、概ね巨人の選手というのは茶髪はもちろん、長髪にする選手もいなければ、ヒゲをたくわえる選手もいない。

野村監督も著書の中で、

「私がヤクルト、阪神の監督時代には絶対に選手に茶・長髪、ヒゲは許さなかった。」

と書いているけど、スポーツ、それもプロの選手であれば、「当たり前」のことである。

それ以上に、巨人軍というチームは先取の考えを常に取り入れて即実践させてきたという、名実ともに「球界の盟主」という野球をしてきたというところを野村監督は強調している。

対して野村氏が在籍した南海、あるいは巨人V9時代に5回も挑戦した阪急は戦力的には巨人と大して差がなく、いや阪急はむしろ巨人よりも個々の力では勝っていたはずにもかかわらず巨人には一回も勝てなかったのはなぜか?という分析までしっかりされている。

つまりここで留意したいのは、V9時代の巨人というのは「とてつもなく強かった」という印象があるが、野村監督から見ると、必ずしもそうではなかったということである。

野村監督のこの本には書いていないが、巨人がV1を達成した1965年の日本シリーズは南海断然有利の下馬評だった。巨人は投手力が弱く、南海の強力打線を封じられないだろうという見方がされていたのである。

しかし終わってみれば巨人の4勝2敗だった。なぜ巨人が勝てたかというと、投手の「分業制」をうまく敷いたからである。つまり、「八時半の男」という名前がこの年に出てくるが、宮田を抑えのエースとして川上監督が仕向けたことが大きかったみたいだ。そしてこの勝利をきっかけとして巨人はヤンキースでさえ、ワールドシリーズをそこまで連覇していないという「9連覇(9年連続日本一)」を果たすわけである。

その後、南海に替わってパリーグの盟主となる阪急とて、年によっては「阪急有利」という見方をされたにもかかわらずついに西本幸雄監督下では川上巨人に一度も勝てなかった。

ということは、野村監督の話から推測すると、巨人は勝って当然では「なかった」ということになる。

なぜ巨人はそこまで勝つことができたのか?それは野村監督のこの著書に詳しく書かれているのでここでは触れないが、要はいかにして「勝つか」という点において、巨人が南海や阪急よりも勝っていたということなんだろう。

おっと、なぜこの「巨人軍論」の話をもちだしたかというと、公営競技の現在の不振にも通じる話だからである。でもそれを取り上げると長くなる。「本題」については次号にて。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする