すっかりチームに溶け込んで
持ち前の負けん気で、好きで好きでたまらない野球にどっぷりハマった悠雅君。
チームの練習日には必ず参加して、監督・コーチに鍛えられ、少しずつではあるが確かな進歩を見せている。
バットスイングも早くなってきた。
あの公式戦デビュー、「涙の初打席」からおよそ1カ月。何度か公式戦の機会はあったが、出番の声はかからなかった。
そして一昨日。18チームが集まる地元での大会が開かれた。
リーグ戦で、全チーム3試合を行い順位を決める。当然ながら得失点の差も問題となる。
そんな大会で、悠雅君所属のチームは優勝候補の一角。人数こそ少ないが少数精鋭。特にピッチャーがいい。
第1試合は10対0の圧倒的優位で進んだ。試合終了間近、「代打、ユウガ」監督が審判に告げる。
思い切りのいい素振りをくれてバッターボックスへ。涙の初打席の雪辱なるか。
そんな甘いものではない。雪辱はお預けの三振。でも今回は涙はなかった。もちろん笑顔もない。
そのわけは、結果は三振だがそのうちの1球はバットをこすった。もう1級はファールと、バットに当たったのだ。
そして最後の3試合目、再び「代打、ユウガ」の声と共にバットを立てて身構える。
3球目、見事にセンター前ヒット。あの小さな体から生み出された初ヒット。勢いよく一塁ベースに駆け込む。
チームメートや監督から喝さいを受けた。相手チームからは「???」、笑顔と拍手が贈られた。
本人もびっくりしたのか、一塁ベース上でどうポーズしたらいいのか迷っていた・・・と、お父さんから聞かされた。
間の悪いことに、教え子の初ヒットを、ジジはこの目で確かめてはいないのである。
1試合目の打席は終わったころに会場に着いて間に合わない。
3試合目の打席は、昼食を挟んだ午後となり、ジジは昼食の持参もなく、しかも炎天下、熱射病を避けて家に帰った後だった。
惜しや惜しや、こんな素敵なシーンを見損なった。悠雅君も、ジジに見てもらいたかったのに違いない。
まあいい、一度この味を覚えたらまた近いうちに次のチャンスはあるだろう。その時までジジからの拍手はお預けだ。
まだまだ歳をとらんように、応援してやりたいよ。