丹精と静寂の世界を切り取った、「秋の盆栽展」
昨日と今日、たった二日間の盆栽展の案内を頂いたのはおよそ1ヵ月前。忘れては義理に欠けると思って葉書をカレンダーに貼り付けておいた。
最高の秋晴れにめぐまれたものの、澄み切った青空とはあまり縁のない、静寂な室内の優しい光線に浮かぶ、作り手の丹精が込められた盆栽展を覗かせてもらった。これまでにも何度となく見せてもらってきたお馴染みの作品もあるが、「おやおやこれはまた珍しい」といった新たな発見もある。
優雅に床の間に飾ったら、家の格も上がりそうだし住む人の品各も上がりそうな素敵な小物作品も展示場を彩っている。
その脇には、樹齢ははっきり読めないほどの長寿の「真柏(しんぱく)」が勇壮さと静寂を併せ持って、観賞する人の目を惹きつける。
この作品のオーナーに直接話を伺った。
作品と同様に話しぶりも、その内容も実に物静かで、ホンの短い時間ではあったが味わい深い思いが心に響いた。
この「しんぱく」が手許にやってきて以来かれこれ30年という。それまでに100年近く、森で生きてきたのだろうとおっしゃる。
風邪を引かせないように。水分を切らさないようにかといって与えすぎないように。病気の症状には早く気付いてやって手当を怠らない・・・などなど。話を聞いていたらまるで我が子の子育て以上の気遣いと思いやりで、一緒に生きてこられた様子が見える。
趣味の世界もここまで来るとまさに一心同体と化すようで、目を細めて話をされる80過ぎのオーナーの顔が、優しさと幼さと若さも交えた不思議な笑顔に見えた。奥様も同じ趣味で、この丹精と静寂の世界を共に楽しんでいるという。
晩秋の一日、いいものを見せてもらった上に、私には及ばない時限の異なる世界を感じさせてもらって、得した気分。