漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第6章 その11

2009年02月27日 04時52分27秒 | 漫画家
( この写真は、リョウさんが80年代に暮らした東京豊島区椎名町駅から数分の所にある目白4丁目
  の住宅街です。この様な夜の街を自転車に乗って仕事場から自分のアパートまで毎日帰って行
  ったのです。《 2008年11月、撮影 》 )


【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
              その11
 
 
慶応2年( 1861年 )1月23日。湯船の中で桃色になった頬に黒髪がからむ
のをその細い指ですくいながら、おりょう(龍馬の妻)が何を思っていた
かは分からない。
 
しかし、その静かな物思いは不審な物音によって中断する・・・。外を走
る男たち( 伏見奉行所配下の刺客 )の足音と荒い息使い・・・・
 
 「 ・・・・・・! 」
 
おりょうが裸のまま風呂場を飛び出して階段を駆け上がる。おりょうが階
段に付けた濡れ足跡から湯気が立ち上っている・・・
 
 ダダダダダ~~ッ
 
パシ~ッ! 襖が千切れる様に開かれると同時に・・・
 
 「逃げてッ!」
 
 
寺田屋( 坂本龍馬が定宿にしていた )で龍馬が襲われた時には、このお
りょうの素早い対応によって龍馬は命を救われます。この時の刺客との激
闘跡として、柱の刀傷や龍馬が発砲した時の弾痕などが今も残っているの
です・・・・。
 
しかし、最近ハッキリした事では、この寺田屋は後に再建されたもので、
当時の建物は火事で焼失してしまったという事です。
 
だから現在建っている「 寺田屋 」がまったくの作り物と結論できるのか
どうかは微妙です・・・。それは、主要な柱や家具など焼け残ったものを
移築したのかもしれない・・・という仮説を否定するだけの根拠がないか
らです・・・・。
 
もちろん・・・ここで、おりょうが入っていた風呂だの、龍馬の弾痕だの
が全て偽物なのかどうか・・・そんな事を私が判断できる事ではありませ
んが・・・・・・。
 
さて・・・、この寺田屋にリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、88
年当時33歳 )たち一行が泊まる事になります( 貸切! 一人一泊7~8千円 )
が・・・・。 どの部屋に泊まるかでもめる事になります。
 
それは寺田屋の2階には、龍馬が泊っていた部屋というものがあったから
です。( 一行が泊った1988年当時には、まだ寺田屋が再建されたもので
あるとは一般には考えれてはいませんでした )龍馬ファンなら誰でも泊ま
りたいと思うはずです・・・。
 
さっそく、ジャンケンで部屋割が決まります・・・。この時に、勝負運な
どには、からっきし弱いリョウさんが20人近くの人の中で勝ち抜いてしま
います。そして、さらに二人・・・。
 
合わせてこの3人で龍馬が泊っていたという問題の部屋( 寺田屋二階 )に
一泊します・・・・・。
 
この部屋で・・・3人が深夜・・・金縛りに合い、枕もとに血だらけの侍が
しゃがんでいる姿でも目撃したり、頭を割られた龍馬の亡霊とご対面・・・
・・・ってな話で盛り上がる様なら・・・・・このブログも私の単行本も・
・・もっと売れたかもしれませんが・・・亡霊の「ぼ」の字も出てはきませ
んでした。
 
実際には・・・・・
 
その部屋でグーグーといびきをかいて眠りつづけていました。しかし・・・
一人リョウさんは一睡も出来なかったのです・・・。( 隣に寝る人物のイ
ビキがうるさかったのもあるのですが )
 
暗い部屋の天井をジッと見つめながら・・・・・・龍馬暗殺の謎や今日一日
の出来事を考え続けていると・・・・。
 
 『 俺は今、龍馬のそばにいる・・・・すぐ近くにいるんだ・・・・・ 』
 
・・・と、あたかも龍馬と接近している様な実感を得るのです。その重く異
様な気分のまま時間が過ぎて行きます。
 
そして・・・リョウさんは、夜が明けるまで頭の中にいくつものイメージを
並べていくのです・・・・
 
龍馬・・・暗殺・・・幕府・・・薩摩・・・長州・・・明治維新・・・軍閥
・・・財閥・・・昭和の終わり・・・・・・
 
ドキン、ドキン・・・と、脈打つ自分の心音でも聞く様に・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その12 」 へつづく・・・



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【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




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漫画家アシスタント 第6章 その10

2009年02月20日 03時24分39秒 | 漫画家
( この写真は、リョウさんが80年代を過ごした椎名町の商店街風景です。昔と変わらぬ賑わい
  のある駅前から少し離れると・・・シャッター商店街が・・・少し寂しい今日この頃です。
  《 2008年12月、撮影 》 )
 
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
              その10
 
 
外見上、まったく変わったところは見られませんでした・・・・。
 
前回、私はリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、74年当時19歳 )
の事をそう書きました。1988年( 昭和63年 )の夏までは、確かに何も
変わったところはありませんでした。
 
しかし、1988年9月に同じ龍馬ファン( 坂本龍馬に関する会報などを出
版 )の仲間たちと京都へ旅行するのですが、この時からリョウさんにあ
る変化が見られる様になります。 それはまさに・・・・
 
 「 あの時に幕末の志士の亡霊に取りつかれたんだ・・・ 」
 
・・・・と後に噂されるほどの変化でした。
 
この京都旅行の直前に、私とリョウさんは、豊島区要町の隣町、千川に
住む女流漫画家Y先生( 東京出身、88年当時、34~5歳。お互いにデビ
ュー前からの知り合いで、アシスタントを2~3人使いながら主にレディ
スコミックに連載していました。 )の所へ遊びに行きました。 Y先生
は、幕末や坂本龍馬が大好きなリョウさんを見て・・・
 
 「 歩く幕末ね・・・ 」( Y先生が命名! )
 
と、大変興味深そうにリョウさんを見ながら微笑んでいました。
 
その後、リョウさんについての印象を聞いた時に・・・
 
 「 何だか、とても面白そうな人ね・・・ 」
 
と、人間として、物書きの端くれとして・・・とても良い印象を持たれ
たのでした。(プロから見ても興味深い人物・・・!)
 
ところで、この時の記念写真には・・・Y先生と並ぶ私たちの背後にあ
る窓から・・・武士の様な男が部屋の中をのぞき込んでいる姿が写り込
んでいました。
 
しかし、もちろん、ただ窓に映る光の反射と窓の錠前部分が影響して、
そう見えるだけの錯視にすぎないと気にもしませんでした。
 
しかし・・・1ヶ月ほどしてから考えると・・・とても単なる偶然とは
思えず・・・・・。( ちなみに、この時の写真は、後にネガと一緒に処
分してしまいました。私は霊の存在を信じるものではありませんが、い
たって小心者なのです。 )
 
 
さて、リョウさんが京都へ出発したのが1988年9月10日・・・( なぜ、
こんなに詳しいかというと、この日時は全てリョウさんの書いた日記が
元になっているからです! )
 
龍馬ファンの仲間は20人近く、老若男女バラバラですが、皆、龍馬への
熱い思いを一つにして新幹線に乗り込みます。旅行と言っても一泊する
だけの限られた小旅行ですので、スケジュールはいっぱいです。
 
まず、霊山寺( 龍馬のお墓がある )へ・・・。 一番目にやはり龍馬の
墓前へ向かう辺りが、いかにも彼等らしいところです。
 
霊山墓地は幕末の志士が多く眠る山なのです。その中には、沢山の墓が
あり山の頂上には桂小五郎( 長州藩士、後の木戸孝允 )の墓もありま
す。
 
坂本龍馬の墓もその多くの墓の中にあるのです( 山の中腹 )。墓の右
隣には龍馬と一緒に襲われた中岡慎太郎の墓。そして、龍馬のすぐ左脇
にも小さな墓があるのですが・・・これは龍馬が暗殺される時に、龍馬
を救おうとして切り殺された下僕、藤吉のお墓です。
 
リョウさんたち一行は、ここで花束を捧げ、線香をたいて全員で合掌・・
・・・。
 
つづいて近江屋( 醤油問屋、京都市中京区河原町 )跡。上にも書きま
したが・・・ここは、慶応3年( 1867年 )11月15日。坂本龍馬と中岡
慎太郎が暗殺集団に襲われ、頭部を割られた龍馬は絶命、そして中岡慎
太郎も重傷を負い2日後に・・・
 
 「 焼メシが食いたい・・・ 」
 
と、最後の言葉を残して死亡した有名な場所です・・・・・今では「 近
江屋跡 」と書かれた小さな石柱があるだけで、通行人は誰一人顧みる人
もありません。
 
次に寺田屋( 龍馬が泊まり込んでいた旅籠。現、京都市伏見区南浜町 )。
慶応2年( 1861年 )1月23日。ここは、龍馬が近江屋で殺害される6年
前に暗殺集団に襲われた所です。
 
この時は、恋人のおりょうが風呂から素っ裸で飛び出して危急を告げた
事で龍馬は難を逃れました。
 
龍馬ファンの一行はここで一泊します( 今でも泊まれます! )。
 
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その11 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その9

2009年02月13日 03時40分30秒 | 漫画家
( この写真は、りょうさんが80年代に暮らした東京豊島区椎名町の住宅街です。酒屋さん(右側)
  の角を右に入るとリョウさんの下宿があります。ちなみに以前、紹介したキタさんがサラ金地
  獄を告白するためにJ先生にかけた電話は、この酒屋さんの公衆電話からでした・・・。
  《 2008年11月、撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
              その9
 
 
坂本龍馬が土佐から江戸へ、たった一人で剣の修行に千葉周作道場の門を
叩いたのが19歳の時。
 
リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、74年当時19歳 )が初めて東京へ
やって来てJ先生の所へ弟子入りしたのが19歳の時。これは単なる偶然だ
と思います。
 
そして、坂本龍馬が暗殺された33歳の時( 慶応3年《1867年》11月15日 )
と同じ年齢になったリョウさんに起こる恐ろしい出来事も、単なる偶然だ
と思います・・・・・。
 
しかし、それは・・・起こるべくして起こった宿命・・・だった様な気が
してならないのです・・・・・。
 
 
1974年にJプロに入り、ゴキブリだらけの仕事場で寝起きし、やっと捜し
たアパートでは読書三昧。
 
酒も博打も女遊びもしない、ただひたすらに坂本龍馬を描き続ける・・・
 
 『 オレも龍馬の様に世の中へ出たい・・・! 』
 
そう思いつつ・・・14年の歳月・・・密かに胸を熱くして生きた14年。あ
っという間に竜馬が暗殺された時の年齢と並んでしまっている・・・・・
 
 『 オレは龍馬が死んだ年と同じ年になってしまった・・・・ 』
 
失恋、漫画の挫折、連日の天皇重体報道、昭和の終わり・・・。
 
いくつもの思いが重なる中で、リョウさんは自分と同じ年で坂本龍馬が暗
殺された事への思いが募っていきます。
 
 『 なぜ暗殺されたのか・・・誰に暗殺されたのか・・・ 』
 
坂本龍馬は対立していた薩摩と長州を和解させ、その事で幕府を大政奉還
させる端緒を作ったという意味で、幕府にとっては憎い反体制派の一味。
充分に暗殺の動機があります。
 
ですから、一般に幕府側の京都見回り組( 新撰組とは別組織 )の隊員た
ちによって暗殺された事になっています。
 
これは、後に京都見回り組の組員が自ら龍馬暗殺を告白している事が根拠
になっています。しかし、その証言内容や共犯者の名前などに疑問もあり・・
・・・謎が残ります。
 
龍馬が幕府と戦争する事を望んではいなかった事は一般に知られています。
つまり、無血革命を望んでいたわけです。( 緊迫する世界情勢からして今、
日本人同士で争っている場合ではない・・・と )
 
しかし、薩摩の西郷たちは、すでに倒幕( 武力革命 )を策謀していました
から、龍馬の活動が疎ましかったであろう事が想像されます。
 
また、龍馬の身内にも裏切り者がいた可能性もあり・・・・と、「 龍馬暗
殺 」の謎は多くの研究者や作家にとっては興味深いテーマだったのです。
 
ですがその謎は解明されぬまま多くの諸説が入り乱れ、かつ新たに発見さ
れる事実(?)などもあり、混沌としていました。
 
疑えば幕府も薩摩も海援隊々員も、龍馬と一緒に襲われて死んだ中岡慎太
郎自身さえ黒幕ではないかと疑う説があるのです。
 
1988年( 昭和63年 )夏。この頃までは、まだリョウさんは普通の「 龍馬
ファン 」でした。外見上まったく変わった所は見られません。
 
それが、9月に京都へ旅行した時から人が変わってしまいます・・・・龍馬
が好きな人たちが集まって行った「 京都幕末名所旧跡ツアー 」に参加した
時から・・・・。
 
後に何人もの友人たちが・・・・
 
 「 リョウさんに幕末の志士の怨霊がとりついた・・・ 」
 
・・・と、言わしめた程の変化が起こります・・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その10 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その8

2009年02月06日 16時34分06秒 | 漫画背景
( このイラストは、リョウさんが1988年当時に描いていた「竜童」という漫画の一ページです。
  もちろん、このキャラクターは坂本龍馬です。前回、ラフなカットとは雰囲気が違います。
  《 1988年、作画 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
              その8
 
 
 『 やられた・・・先にやられたッ・・・・! 』
 
リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、86年当時31歳 )が12年の歳月
をかけて取り組んできた坂本龍馬の物語と実によく似た作品が・・・鳴り
物入り( 有名タレントの原作付き )で登場したのです。
 
この頃( 1986年 )40ページの短編で龍馬の少年期を描いた「 龍馬誕生 」
( ひ弱な少年だった龍馬がたくましく成長していく物語 )の持ち込みを
している時でした。
 
何度もK談社に足を運んでいたのですが・・・・「 ○~い!竜馬 」( S学
館、原作○田鉄矢、作画○山ゆう )の出現によって厳しい状況に追い込まれ
てしまったわけです・・・・。
 
元々、K談社の青年誌に持ち込む様に奨めてくれたのはJ先生でしたが、
リョウさんは律儀にその奨めにそって、持ち込み先をK談社一本に絞って
いました。
 
さて、この強力なライバル・・・「 ○~い!竜馬 」の登場に・・・・と、
言うよりも巨大なゴジラの出現に・・・踏み潰されるしかなかったリョウ
さんですが・・・・
 
龍馬の漫画をあきらめたわけではありませんでした。ただ、その構成を根
本的に変え、全然違う切り口で龍馬を描く事に方向転換します。
 
しかし、それには、まだしばらくの時間が必要でした・・・・・
 
 「 あれ(『 ○~い!竜馬 』)は、良くできているからなぁ・・・・ 」
 
そう言って、ニッコリと笑うリョウさんの顔を今でもよく覚えています。
私には弱音を吐く事も気落ちしたそぶりを見せる事もありませんでした。
 
表面的には、意外なほどサバサバしていたのです・・・・しかし・・・・
 
先日、この当時を振り返って・・・リョウさんは・・・
 
 「 突然、プロボクサーに殴られて悶絶する様なもの! 」
 
・・・だったと。 ・・・やはり、こちらの方が本音だったのだと思いま
す。
 
私も出版社では何度もボツになった経験がありますが、長年温めたネタを
「 横から失礼 」されてしまうといった経験はありません。
 
リョウさんは、これ以降、緻密な歴史ものとして龍馬を描くのではなく、
龍馬の少年期のある一日を描くエッセイ風の小品。さらには現代劇を核に
した作品に龍馬への憧れを込めるといった作風に変えていきます。

・・・・いや、「 変える 」というより変えざるを得なかったと書く方が正
しいのでしょう。
 
そして・・・大きな挫折から立ち直ろうと一歩一歩ゆっくりと進んでいたリ
ョウさんに・・・暗い影が忍び寄って来るのです・・・・
 
1987年9月、腸の手術をされた昭和天皇が1年後の1988年9月に吐血し重体
になります。この1年、マスコミの「 Xデー 」に関する報道で日本全体が緊
張していました。
 
当時、流行した言葉が「 オバタリアン 」と「 自粛 」でした。
 
この88年9月の昭和天皇重体ニュースはリョウさんの心にジワリと暗いダメ
ージを与えます・・・。
 
日々の緊張感は知らぬ間に大きなストレスの蓄積となってリョウさんの精神
を追い詰めていくのです。
 
「 天皇崩御 」によって世の中が大きく変わるかもしれないという緊張は幕
末研究に没頭するリョウさんの中で「 時代の変革 」や「 陰謀 」「 暗殺 」
といった言葉が、キーワードの様に頭の中で支配的になっていくのです。
 
本来、別々の事柄である「 天皇 」「 龍馬 」「 昭和史 」「 幕末 」「 維新 」
「 暗殺 」・・・などの概念が、それぞれの壁を越えてリョウさんの中で「統
合」されていくわけです。
 
繊細で真っ直ぐなガラスの橋に少しづつヒビが入って行く・・・・

リョウさんの精神の限界は静かに・・・・本人が気付きもせぬ間に・・・・

ゆっくりと、しかし確実にやって来るのです・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その9 」 へつづく・・・



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