漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第4章 その60

2007年07月27日 23時36分29秒 | 漫画家
( この写真は、東京目白にあるJプロに積まれた清涼飲料の空き箱である。2ヶ月ほどで溜まっ
 てしまうのである。 《 2007年7月 撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その60
 
 
デビューした私を、Jプロのスタッフみんなが池袋の料亭で豪華な会席料理を
奮発、賑やかにお祝いしてくれる・・・そんなNHKのテレビドラマの様な甘い
世界など何処にも存在しません。
 
私がデビューしようが、賞を取ろうが昨日と同じJプロの静かなる毎日がある
だけなのでした。
 
新しい漫画のアイデアにも恵まれず、霧のかかった淀んだ様な日常の中で私は
せっせとK談社でボツになった作品をヤングJ誌へ持ち込んでいましたが・・
・・・( ヤングJ誌には大変申し訳ない事をしました! )
 
「 雨のドモ五郎 」の受賞とデビューを切っ掛けに私が持ち込んだ作品にも陽
が当たりました。 まず、死後の世界を描いたホラー漫画「 死亡少年 」はヤ
ングJ誌の別冊グレートS号( 1987年8月 )に掲載されます。そして9月には
私の少年時代の思い出を描いたペーソスギャグ「 僕です! 」が第99回月例ヤ
ングJ新人賞で佳作賞をいだだきました。
 
50万円( 準入選賞金 )を払い、期待して旧作にも貴重なページをさき、賞金
を払った太っ腹のヤングJ誌のこの期待度は、私が想像した以上だったわけで
す・・・・。
 
年末には、都内の某有名ホテルの大きなシャンデリアのある大広間での忘年会
に招待していただきました。 写真かテレビでしかお目にかかれない有名な漫
画家先生がズラリと会場の中央に並び、その周りには中堅作家と出版関係者、
壁際にはそれ以外の人たち( 人気投票でパッとしない作家先生と新人たち・・
・・・ )
 
私は着慣れないスーツに身を固くして、飲み物一つ取るでなく壁際へ・・・。
さらに壁のスミ( ! )へ・・・。
 
中央の諸先生方がなんともまぶしく輝いて見えたものです・・・・・。
 
お偉いさんのあいさつやビンゴゲーム・・・明るく華やかな大パーティー会場で、
私は一人もくもくとベタでも塗っている様な心境で透明な存在になっていくので
した・・・・・・
 
「 漫画家アシスタント物語 第5章 」は、このパーティー会場から始まります・・・
 
 
   漫画家アシスタント物語、血の教訓
   
  『 夢を見る事が仕事なのではなく、夢を作る事が仕事なのである。
 
    そこには現実の自分が一人いるだけであり、あたかも孤独な炭鉱
 
    夫の様にモクモクと暗闇にツルハシを振るうのである。 』
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その1 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その59」へ戻る 】


 
                  注意 : お知らせも併せてご覧下さい!
 
 
 
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
  コメントをくれた皆様の中で特に以下の方々へ・・・
 
さいふぁさん、ねもさん、40代女性漫画家さん、kyokinkyaさん、ユウサさん、
横から失礼さん、大泉実成さん、YASUさん、歌垣さん、シャモンさん、バカ
ざるさん、(*`Д´*)さん、ごしまさん、浜名っこ大佐さん、昔話さん、ここさ
ん、銀次郎さん、mimiさん、ヤマさん、竹熊健太郎さん・・・
 
皆さんの中で、コメントが転載される事に同意できないという方は是非ご
一報下さい!
 
一応、このままですとこちらで勝手に編集(明らかな誤字の修正、絵文字の
解体そして改行等)して単行本に転載してしまいます。 どうか、ご遠慮な
く申し出て下さい!

このブログへのコメントでも結構ですし、以下のアドレスへのメールでも構
いません(最初の「イエス」は小文字の「yes」に変換してから送信して下さ
い)。 どうかよろしくお願いいたします!
 
イエス_koike@yahoo.co.jp
 
 
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【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」


 
  
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漫画家アシスタント 第4章 その59

2007年07月20日 03時46分10秒 | 漫画家
( この写真は、東京神田、神保町交差点近くのS学館ビル(中央)と新しいS英社ビル(右側)
 である。 《 2007年7月 撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その59
 
 
「 デビュー 」・・・なんと輝かしい言葉でしょうか・・・! その言葉の響
きにあたかも「 初恋 」と似たような新鮮で清々しい美しさすら感じます。 今
から20年も前の話なのに・・・・・。
 
ヤングJ誌青年漫画大賞の発表があってから1ヶ月後に私のデビュー作「 雨
のドモ五郎 」はヤングJ誌に2色カラーで掲載されました。
 
私はその雑誌「 ヤングJ87年31号 」を書店で10冊ほど買い集めて来たりした
ものです。そして、私がデビューした事を知らせるために30通くらいの手紙を
友人知人に書き送ったりしました。
 
19歳の時から漫画家アシスタント時代・・・苦節(?)13年目にしてやっとデ
ビュー出来たわけです。 32歳。 体力気力共に充分。画力演出力共に充分。精
力勃起力共に充分。・・・しかし・・・発想力は充分とは言い難く・・・・・
 
実はヤングJ誌の漫画大賞選考委員( ○の森章太郎、○いとうたかお、○岡ヤス
ジ、○井豪、○本零士、等々名だたる大先生方 )の中に私の師匠であるJ先生も
加わっていました。 前もって何も知らせてはいなかったので・・・
 
 「 おめィーのがあるんで驚いたぜェ~・・・ 」
 
 「 あれは見せに来なかったもんなァ~・・・ 」
 
J先生に見せなかったのは、J先生を驚かせたかったという理由が一番ですが、
自分ではとても自信があったというか・・・正直な話、J先生に見てもらわな
いと不安だった以前の弱気な気分が、その頃には全然なかったからなのです。
 
さて、賞をもらって夢見心地の気分もそろそろ醒めてまいります・・・。大き
な賞が取れれば、それから簡単に仕事がもらえて好きな漫画を描いてお金がジ
ャンジャン稼げる・・・そんな甘い考えは朝日を浴びた吸血鬼の様に消し飛ん
でしまうのです・・・・・。
 
ここから本当の「 まんが道 」なんだと思った・・・その瞬間には、そこから
先が何~んにも無いのです! やっと高速道路に乗ったつもりでいたら入り口
の料金所しか出来ていない様なものだったのです!
 
「漫画家アシスタント物語」はここで終わり、来週からはいよいよ「漫画家物
語」がスタートする・・・・・・と、思ったら・・・どっこい、まだまだ続く
「漫画家アシスタント物語」・・・と、言う訳でございます。
 
あ~~ヤダ! こんな人生、ホント~にヤダ!
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第4章 その60 」 へつづく・・・



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                  注意 : お知らせも併せてご覧下さい!
 
 
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
  コメントをくれた全ての皆様へ・・・

このブログが単行本化される事になりそうなのですが・・・。(今、編集段階
にあります)このプログには多くの方々からのコメントがあり、そのコメント
も是非単行本に掲載させていただきたいと思いましたが・・・
 
その量は本編の数倍にも達し、全文の掲載は出来そうもありません。 一
部の方の一部のコメントを一部訂正編集して掲載させていただきいと思っ
ております。
 
そこで、私の一存で勝手に掲載文を選択いたします。・・・が・・・以前このブ
ログへ投稿された方で、「単行本への掲載はダメ!」という方は是非、お知
らせ下さい! (「私のなら掲載OK!」というやさしい紳士淑女の方もご
連絡下さい!大歓迎です!)
 
以下のアドレスへメールでご連絡いただきたいのです。最初の「イエス」は
小文字の「yes」に変換してから送信して下さい。どうかよろしくお願いいた
します!                     

イエス_koike@yahoo.co.jp
                             07年7月   yes
 
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漫画家アシスタント 第4章 その58

2007年07月14日 00時29分05秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、東京神田、神保町にあるS英社ビルの一つである。私はこのビルに何度も行き
 ましたが(20年前)今でも当時と変わりません。「 壁 」にも出てきます。 《 2007年7月
 撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その58
 
 
漫画家アシスタントを始めてから13年。J先生の所で仕事を始めてから9年の
歳月が流れていました・・・・。
 
1987年6月( この年、私は32歳 )。「 雨のドモ五郎 」の最終選考結果が出る直
前にK談社でボツになった作品を全てS英社ヤングM誌関係の雑誌へ持ち込みま
した。
 
この頃・・・。次の作品の事とか、創作への意識の集中とか・・・そんな事より
賞が取れるかどうか、いくらお金が貰えるか・・・そうした「 結果 」だけを夢
見てボンヤリ過ごしていたのです・・・・・。
 
そして、ヤングJ誌青年漫画大賞、発表の日がやって来ます・・・。私は要町
( 東京豊島区 )にある書店でヤングJ誌を開きます。担当のK編集員からかな
り良い感触を得ていましたから、まさか落選はないだろう・・・と、ウキウキ、
ドキドキしながら、まず雑誌の後ろにある目次を見ます。
 
「 第16回青年漫画大賞発表、231p 」私は、この時自分は結構冷静になってい
るつもりでそのページを開きました。クールなつもりで・・・でも・・・頭の中
は真っ白・・・何もない・・・。
 
思考の停止した状態で選考結果が目に飛び込んで来る!
 
 「 準入選・賞金50万円と記念品。『 雨のドモ五郎 』 」( 当時、大卒初任
   給15万円ほど・・・ )
 
ジワ~~~ッと・・・その文字が私の体にしみ込みます・・・・。空ッポの頭か
らつま先まで数秒間ジワ~~~ッとしみ通って行きます。
 
ジワ~~~ッ ジワ~~~ッ
 
 『 う・・・う・れ・し・い・・・・・ 』
 
飛び上がって喜ぶというより、シミジミと嬉しい。ホッとする様な喜び・・・。
その書店で発表のあった雑誌を2冊( 1冊は保存用 )買って帰りました。
 
この時点で優秀な新人なら、次の作品で『 もっと、すごいモノを描くぞォ! 』
みたいな心意気に燃える所なのかもしれませんが、私はこの時・・・
 
 『 ステレオが買えるぞ~ッ! CDデッキが買えるぞ~ッ! うな重が食え
  るぞ~ッ! 』
 
ただの貧乏人なわけです。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第4章 その59 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第4章 その57

2007年07月05日 23時50分03秒 | 漫画
( この写真は、現在の東京神田、地下鉄の神保町駅である。「 雨のドモ五郎 」15pに出てくる
 地上出口のモデルになっている。今の姿も昔と変わらない。もちろんドモ五郎はどこにもいない。
 《 2007年6月 撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その57
 
 
私は前回「 気楽にレンタルビデオを見ながらハイライトをプカリプカリと・・・ 」
などと書きましたが・・・本当は・・・・
 
「 レンタルのアダルトビデオを見ながらオナニーに我を忘れていた・・・・・ 」と
書くべきでした・・・・・。
 
自分が本当に崖っぷちにいて、もう後がない、今頑張らねば・・・と、いう時に目
先の欲望に走る事は大変危険です。 ・・・・・30年アシスタントをやった私が言
うのです! 本当です! 
 
もし、「 Hビデオを見てオナニーをする 」というのと、「 H本を見ながらオナニ
ーをする 」という選択肢はどちらを選んだって構わないのですが・・・・( 当然
だ! )
 
「 漫画を描く 」と「 オナニーをする 」の選択の場合は、絶対に「 漫画を描く 」
を選ぶべきだと思います。 目先の欲望を選択してもその先にあるものは不毛の大
地に空っ風が吹いているだけなのです! 何も生まれない! 何も芽吹かない!
 
やはりコツコツと種をまき、水をやり、雑草を取り除く作業を積み重ねないと美味
しい果実にはありつけないわけです! 
 
テレビ、ゲーム、スナック、カラオケ、パチンコ、オナニー・・・すべて同じです。
目先の欲望には細心の注意と警戒が必要です! 
 
目先の欲望に走って、面白い漫画が描けるほど甘くはないのです。30年アシスタン
トをやった私が言うのです! 本当です!
 
 
1987年初春。 ヤングJ誌の青年漫画大賞の最終選考が始まりました。 編集員の
K氏からは・・・
 
 「 Yさん、結構イイみたいですよ! ホントに評判イイですよ! 」
 
と、ニコニコと私を迎えてくれます。 前回、K氏と会った時とはまるで違うので
す。今回は前にK談社でボツになった原稿を持ち込みに来たのですが・・・それに
しても初めてK氏に会った時の、あの無愛想な表情が一気にやさしいニコニコ顔に
変わっているのには薄気味が悪いほどでした・・・!
 
 「 Yさん、やっぱりラストシーンが良かったんだね! あのラストシーンに『 救
  い 』があったからねェ! 」 ( 「 雨のドモ五郎 」ラストシーン
 
本当に嬉しそうでした・・・まるで自分が描いた作品の様に・・・・・・。
 
 
この世界では結果だけがモノを言います。 高い人格や、正義感などは無価値なので
す。なぜなら1円にもならないから・・・・。 もっともこれは、漫画業界に限った
事ではありませんが・・・・。
 
とにかくウカウカしていれば、ゴミの様に消し飛んでしまう世界なのです・・・! 
だからウカウカしていた私はゴミの様に消し飛んでしまうのです・・・・・! 
 
 
さて、はじめの方にも書きましたが、私はしょっちゅう「 漫画かテレビか 」「 漫画
かビデオか 」「 漫画かゲームか 」「 漫画かオナニー 」かの選択で「 漫画 」を選択
せずに、目先の欲望に溺れていたわけです。
 
情けない話です。完全なるバカです。 いつも「 漫画 」を後回しにしました。 こ
の時、私は自らの手で「 雨のドモ五郎 」以降の作品を殺していたのです・・・・・・
 
 
   漫画家アシスタント物語、血の教訓
   
  『 結果(勝利)でしか判断しない人間は結果に流され一喜一憂するだろう。
 
    そして最後には自己の死という結果によって敗北するのだ。 』
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第4章 その58 」 へつづく・・・



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