漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第8章 その43

2011年05月29日 23時12分36秒 | 漫画

 ( この写真は、Jプロの仕事場のドア前から写した目白通りの曇り空です。梅雨入りしたのか、ジメジメ
  とした日々が続きます。写真の中央奥左にあるのがサンシャイン60ビルです。《 2011年5月、 撮影 》 )
  
  
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                  その43  
  
      《 漫画家アシスタントが・・・スパイに悩む・・・!? 》
 
 
水商売の世界では、他店の女の子をスカウトして引き抜く事がよくあるそうですが、タイマッ
サージ店( ※参照 )でも同じ事が起きます。

お店に入りこんだ他店の「 スパイ 」が経営状態などを調べたあげく、最後にやるのが、この
「 引き抜き 」です。

特に「 指名 」の多い優秀なスタッフ( ※参照 )がターゲットになります・・・・

 「 ここよりも手取りが高いお店を知ってるわヨ 」

とか・・・・

 「 私の紹介なら支度金( 10万円位 )が出るのよ 」

などと、嘘か本当かハッキリしない「 エサ 」を匂わせて誘惑します。

ただ、突然やって来たマッサージ師の言葉を鵜呑みにするスタッフは少なかったと思いますが
・・・・。

ちなみに、こうした「 スパイ 」は、その言動が怪しいと、他のスタッフから注意されたりし
て、だいたい1週間ほどで辞めていきます。

多くの場合、新規にお店をオープンする人が身内(?)などに依頼するケースが多い様です。

結局、実害がそれほどなくても・・・・

 『 この人は、スパイじゃないのか? 』

 『 彼女は、引き抜かれるかもしれない・・・・ 』

などと、神経を使うので、精神的に参ってきます・・・・この辺が、従業員と経営サイドの
苦労の違いかも知れません。
 
 
「 スパイ 」意外にも、他店への嫌がらせや圧力・・・・これが予想以上に結構あるのです。

よくあるのが・・・・「 ニセ予約 」で、これを集中的にあびると経営に相当なダメージを
受けます。

「 ニセ予約 」というのは・・・・

土曜日や金曜日などの午後、お客さんが立て混む時間帯を狙って嘘の予約を入れる事です・
・・・・・

例えば・・・・土曜日の午後に電話で・・・・

 「 7時頃に行きます。予約したいコースは・・・・ 」

などと「 ニセ予約 」されると、その時間( 7時~9時 )の人員と部屋をキープする事になりま
す。

つまり、お店は、夕方以降の電話予約があっても、他のスタッフに余裕がなければ、この
「 ニセ予約 」のために・・・・

 「 申し訳ありません、本日は予約がいっぱいでして・・・・ 」

・・・・と、後から来た本当の予約を断らなければならないのです。

この断られたお客さんは、当然、他のお店に電話をします・・・・これが「 ニセ予約 」の
主目的です。

マッサージ店の乱立から「 ニセ予約 」には悩まされましたが、受話器の「 ナンバーディス
プレイ 」によって相手の電話番号はチェックしていました・・・・

しかし、この「 ニセ予約 」だけは、最後までなくなりませんでした・・・・。

お店のデスクには、予約だけして、結局来なかった( 複数回 )人物の電話番号がビッシリと並
んだリストが貼り出されていました・・・・今でも時々、その赤い文字で記された数字列を
思い出します。


長引く不況と過当競争・・・・私も、お店でママをやるカミさん( ※参照 )も、すっかり疲れ
てしまいました。

特に、お店で長く勤めてくれたスタッフが喧嘩をして辞めていく時のダメージは深刻でした。

私の借金人生( ※参照 )は、利息を払い続けるだけで元本はまるで減らないし、夫婦仲も疲労
とストレスから危うくなる一方でした・・・・

特にカミさんがストレスからひどい短気症になり、

 「 なぜ、パソコンばかりやってるのよ! 」

とか・・・・

 「 タイ人のことが全然わかってない! 」

とか、それまでは口にしなかった( 我慢していたのかもしれませんが )様な事を毎日、愚痴る
様になりました。

2007年、ブログの書籍化( ※参照 )へ向けてその準備を始めた頃、私は一つの決断をしま
した・・・・

 
 
            「 漫画家アシスタント 第8章 その44 」 へつづく・・・・ 


                ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第8章 その42」へ戻る 】

 
 
 
 【 ※参照 】
 ・タイマッサージ店・・・・・・池袋北口に開いたタイ式マッサージ店(04~09年)。2000年
  頃からのエスニックブームで、新宿、新橋、池袋などを中心にポツリポツリと開店
  し始めた施術院。(風俗店ではありませんが、盛り場辺りには、怪しげなお店も・・・)
 ・スタッフ・・・・・・お店には常時3~5人のマッサージ師が待機。1日に1~3人のお
  客さんを施術。全員がタイ人女性でタイマッサージ学校を卒業・・・。日本人と結
  婚、就労の出来る在日ビザを持っている。
 ・借金人生・・・・・20年以上のサラ金人生のツケ・・・・サラ金、信販系、銀行系など大ざ
  っぱに500万円。
 ・書籍化・・・・・2004年11月から始まった拙ブログへ06年12月にサン出版社より書籍
  化のオファーをいただきました。実際に編集作業に入ったのは07年の夏から。出
  版されたのは2008年の4月。
 
 
 
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          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




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漫画家アシスタント 第8章 その42

2011年05月22日 20時29分02秒 | 漫画家アシスタント

 ( この写真は、私が暮らすマンション近くの用水路です。以前、満開の桜を紹介した場所の近くです。
  今は緑がいっぱいで、桜の木陰を歩いていると夏の様な厳しい日差しを忘れられます。《 2011年5月、
  撮影 》 )
  
  
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                 その42  
  
     《 漫画家アシスタントが・・・ヌキを悩む・・・!? 》
 
 
「 第8章 」のテーマであるタイマッサージ店( ※参照 )と借金( ※参照 )についての話に
戻りたいと思います。

私がアシスタントの仕事をするJプロ( ※参照 )の経営も不況の影響なのか連載は減る一
方・・・・・・アシスタントの数も20年前の半分( ※参照 )に減っていました。

ボーナスもなくなり、昇給もなくなり・・・・サラ金地獄のド真ん中にいた私が・・・
・・・・苦し紛れに選んだ道が、マッサージ店も経営する兼業漫画家アシスタントでし
た。

最初からプライベートな借金が500万。お店の開店資金で母親から借りたお金が400万
( 翌年100万円追加 )という無茶なスタートでした。

2004年に開店してから半年ほどは赤字でしたが(自分とカミさんはただ働き!)、その後
はなんとか経営も順調に進んでいきました。

しかし、2007年のサブプライムローン問題から2008年のリーマンショックで経営状態
は一気に下り坂に入ります。( 突き落とされる様な急降下! )

そして・・・・丁度、この頃に拙ブログ「 漫画家アシスタント物語 」が書籍化( ※参照 )
されたのでした。

経営の不振、ブログの書籍化、そして重くのしかかる借金・・・・・・日々、落ち込み
と浮かれ気分とが交錯する不安定な毎日でした。

それにしても、世の中の景気が悪いのに、どうした訳か池袋界隈には多くのタイマッサ
ージ店が開店します・・・・・私がお店を開いた2004年当時は10店舗もなかったのに、
5年後には30店舗近くに増えていました。

つまり、不況で減り続けるタイマッサージファンを多くの店舗で奪い合う生存競争が激
化したわけです。

多くのお店ではその開店時には、風俗的なサービスのない普通のマッサージ店として開
店するのですが・・・・苦しい経営の中で、風俗的なサービス( ※参照 )をおこなう様に
なってしまう・・・・・そんなお店が実際には多いのです。

私も開店してからの半年間は、常に「 ヌク 」べきか・・・・「 ヌカザル 」べきか・・
・・・と悩んだものです。結局、風俗サービスのない普通のマッサージ店で済んだのは
運が良かっただけかもしれません。

経営者になってみて分かったのですが・・・・・お店を守る事のストレスは想像以上に
重いものがあります。「 お店のオヤジ 」なんて、はた目には呑気そうに見えたものでし
たが・・・・・・・

さて、今日、紹介したいエピソードは・・・・・この激しいマッサージ業界の生存競争
の一端であります・・・・・・

マッサージ店の経営で重要なのは、優秀なスタッフ( マッサージ師 )を集める事ですが、
これがなかなか難しいのです。

簡単に技術のある美人マッサージ師がお店に応募してくれる事などめったにありません。

求人広告は、主に在日タイ人が読むタイ語月刊雑誌や、タイ語月刊新聞に載せるのです
が、毎月の広告料、一誌あたり3~5万円出して、やっと一人か多くても二人ほどが応募
してくれる程度でした。

さて、生き馬の目を抜く様なこの業界・・・・・人を雇う時にもウカウカしてはいられ
ません。

求人広告を見てやってくる女性の中で一番警戒しなくてはならないのが、他店の「 スパ
イ 」です。(あくまで、ほんの一部の女性ですが)

「 スパイ 」と書くと、皆さんは「 大げさな! 」と思われるかもしれませんが・・・・
・・・・実際には、そうとしか表現の仕様がないのです。

これは、実際に起きた例なのですが・・・・・

まず、こっそりお店の経営状態や接客システム、使用器具などの種類などを調べたり、中
には忙しさに隠れる様にママのデスクの上にある帳簿や電話機の受信履歴( お客さんの )
をのぞいたりする猛者もいるのです

さらに、最終的な目的だと思われるのが・・・・・

美人マッサージ師の引き抜きです。

 
 
           「 漫画家アシスタント 第8章 その43 」 へつづく・・・・  


               ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第8章 その41」へ戻る 】

 
 
 【 ※参照 】
 ・タイマッサージ店・・・・・・池袋北口に開いたタイ式マッサージ店(04~09年)。2000年
  頃からのエスニックブームで、新宿、新橋、池袋などを中心にポツリポツリと開店
  し始めた施術院。(風俗店ではありませんが、盛り場辺りには、怪しげなお店も・・・)
 ・借金・・・・・・・・20年以上のサラ金人生のツケ・・・・サラ金、信販系、銀行系など大ざっ
  ぱに500万円。
 ・Jプロ・・・・・・東京、目白にある漫画家J・Aの仕事場。04年当時、アシスタントは3人。
  連載は隔週誌、月刊誌合わせて2~3本。80年代には連載6本、スタッフ7人という
  時代もありました。
 ・20年前の半分・・・私がJプロに入った78年当時のアシスタントは7人。2009年には3人。
  そして11年現在は、私を含めて2人だけ。
 ・書籍化・・・・・2006年12月に最初のオファーをサン出版社よりいただき、実際に書籍
  化作業に入ったのは07年の夏から。出版されたのは2008年の4月。
 ・風俗的なサービス・・・男性客の求めに応じて性的なサービスをする事。多くは「タマ
  モミ」などと称しているが、それ以外にも「オサワリ」などのソフトなものもある。
 
 
 
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漫画家アシスタント 第8章 その41

2011年05月17日 15時06分00秒 | 漫画家アシスタント

 ( この写真は、Jプロが入っている目白のマンションから見た池袋方面の眺めです。下の通りが目白通り
  でイチョウの緑と明るい日差しが春から初夏を感じさせます。 ただ・・・・・明るい春の日差しも憂鬱な時
  には苦痛の種でしかないのですが・・・・《 2011年5月、撮影 》 )
  
  
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                  その41  
  
     《 漫画家アシスタントが・・・ガタガタ震える・・・!? 》
 
 
原発漫画「 双頭の子 」( ※参照 )をヤングJ誌に持ち込んだのと同じ頃に、私は、これをJ
先生( ※参照 )にも見てもらっていました。

その時に、J先生からは、物語の良し悪しとか、キャラクターがどうしたとかいった漫画制
作の技術的な事柄に関する話は何一つ聞く事は出来ませんでした。

自分のデスクの古い( ラバーが破けて中のスポンジが飛び出している )ソファに深く腰掛け、
「 双頭の子 」をパラパラパラッと飛ばし読みしたJ先生は、私が予想もしなかった一言を
口にしました・・・・

 「 お前ィ~、広島か長崎に身内がいるのかよ? 」

普通、漫画の感想と言えば、例えば・・・・・「 面白くない 」とか「 絵が下手だな 」とか
「 無駄が多い 」といった言葉なのですが・・・・・・私の予想とはまるで違うJ先生の言葉
に、一瞬、何を訊かれたのか分かりませんでした。

 「 お前ィ~は、原爆にあった( 被災した )身内でもいるのか?・・・・って、訊~て
   ンだよ! 」

 「 い・・・・いえ・・・・・・・ 」

J先生は、いつもの様に、ヒキガエルの様な低い声で静かに語るのですが・・・・私には手
厳しい怒声に聞こえました・・・・

 「 んじゃ~何ンんでィ描けンだよッ! 」( ホントに低い、静かな声なのですが・・・ )

 「 ・・・・・・・・・・・・・・ 」

私は、頭の中が真っ白になったまま棒の様にJ先生の前で立ち尽くすだけでした・・・・

 「 何ンの関係もねィ~お前ィ~が、どうして描けるんだよッ! 」

 「 ・・・・・・・・・・・・・・ 」

 『 「関係」がなければ漫画を描いてはいけないのだろうか・・・・・ 』

とっさに、そんな疑問を抱くのですが、私は絶句したまま口を開く事が出来ません・・・・

 「 中沢啓治( ※参照 )はよォ・・・・自分の体験を描いているンだぜ・・・・・
   お前ィ~は違うよなァ? 」

そして、最後の一言。

まさに、J先生のとどめの一撃です・・・・・・

 「 お前ィ~には描けねィ~よッ! 」

私の顔色が青くなり、ひざをガタガタ震わせている姿から、自分が与えた打撃を充分に確認
するように・・・J先生は・・・・・・ゆっくりと・・・・・・話の舵を切ります・・・・
・・・

 「 何ンで、お前ィ~は、こうなっちゃうの・・・・? 」

自分が相撲の張り手で土俵の外へ吹っ飛ばした相手が起き上がって来るのを手伝う様に・・・

 「 もっと明るいものを描けねィ~のかよ・・・・ 」

 「 ・・・・は・・・・はぁ・・・・・・・・ 」

私は、ガックリとJ先生の鋭い視線を避ける様にうつむいたまま沈黙・・・・

 「 カッコいいヒーローや、スカッとしたストーリー・・・・明るい漫画を描いてみろ
   よッ! 」

これが・・・・私の頭の中から原子力発電所が霧の様に消えていった瞬間でした。


20年ほど前に言われた言葉ですが・・・・・・今でも、この言葉を言われ続けている様な気
がするのです・・・・・・

 
 
            「 漫画家アシスタント 第8章 その42 」 へつづく・・・・  


                ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第8章 その40」へ戻る 】

 
 
 
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 【 ※参照 】
・双頭の子・・・1990年代に私が描いた反原発漫画。シナリオと絵コンテだけで終わ
  った作品。
・J先生・・・・・・・・有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には週刊連載
  6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。90年当時、47歳。
・中沢啓治・・・・広島で被爆した体験を元に、漫画「はだしのゲン」(海外向けに翻
  訳もされている)を描いた漫画家。


 

 
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漫画家アシスタント 第8章 その40

2011年05月11日 05時25分41秒 | 漫画

 ( この写真は、私が通勤のために北戸田駅へ向かう途中にある水路です。うっそうと茂る木々と笹がユサ
  ユサと不気味に揺れます。水木しげるの妖怪でも出てきそうな雰囲気の場所です。以前住んでいた池袋
  や板橋にはこんな場所はなかったですね・・・・《 2011年5月、撮影 》 )
  
  
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                  その40  
  
    《 漫画家アシスタントが・・・原発漫画を諦める・・・!? 》
 
 
テレビで福島原発に関連して「 チェルノブイリ事故 」での近隣住民の放射能障害を「 軽
い 」ものだという印象を与える報道があるようなので・・・・

私の持っている資料メモから一つ参考になる事柄を書いておきたいと思います・・・・

これは、1990年8月5日のNHK「 汚染地帯で何が起きているか 」からの引用です。

旧ソビエト、ゴメリ州立病院、産婦人科アナトリー・ワシレツ部長のデータ・・・・

 ・出産時の異常出血 ・・・・・・・・・・・・ 事故前の2.5倍に増加
 ・胎盤はく離症例 ・・・・・・・・・・・・・・ 事故前の3倍に増加
 ・出産時中毒症 ・・・・・・・・・・・・ 事故前の2倍に増加
 ・奇形出産 ・・・・・・・・・・・・・・ 事故前の2.5倍に増加


大震災以降、本来なら震災後の復興へ向けて着実に前進するはずが、原発事故が加わる
事によって、どうも状況が変わってしまった様です。

このブログもそうした状況変化の中で、いったい何を書いているのやら・・・・( 迷走 )

私の漫画シナリオ「 双頭の子 」についての話もそろそろ締めくくりたいと思います。

そこで、シナリオメモから最後に幾つかのエピソードを書いて、また、いつもの「 物語 」
へ戻るつもりです・・・・


20年以上前に書いた私の「 反原発漫画 」では、事故直後に起こるエピソードでケガをし
た原発職員が避難するバスの話を書こうと思っていました・・・・( 以下のシナリオは、ユ
ーリー・シチュルバク著『 チェルノブイリからの証言 』を元にしています )

爆発直後、作業員が乗る数台のバスが止まっている中には負傷している職員もいる。管理
部長が運転手をバスの脇に招きながら・・・・

管理部長
 「 あまり、町の中を通らないでくれ、なるべく幹線道路を避けて裏道とか・・・・ 」

運転手
 「 なぜですか? 」

管理部長
 「 こんなにいっぱいケガ人が乗っているバスが町中を通ったら、みんながいったい
   何事だと思うじゃないか! 」

運転手
 「 はあ・・・・でも・・・・それじゃ・・・遠回りになってしまって・・・・・ 」

管理部長
 「 君! 今一番怖いのはね・・・・パニックだよ、パニック! 」

運転手
 「 しかし・・・・・・ 」

管理部長
 「 こんなバスが町中を走って、もし町でパニックが起きたら・・・・君ッ、責任
   を取れるかね?! 」

運転手
 「 ・・・・・・・・ 」

管理部長
 「 分かったらさっさと行け! 気が利かん男だなッ! 」


そして、もひとつ・・・・

これは、事故後数日して数十万人の住民が避難した後のエピソード・・・・

町の郵便局には、最後まで残務整理のために残っていた局員たちが、山の様な郵便物を前
に立ち尽くしている。

多くの郵便物は、家族や友人の安否を尋ねる手紙や速達などだ・・・・

 「 また・・・・こんなに・・・・・・・・! 」

若い局員が訴える様に・・・・

 「 家族や港で働く夫を心配して・・・・こんなに沢山・・・・・ 」

年かさの局員が力のない声で応える・・・・

 「 ・・・・全部、返送だな・・・・・・ 」

若い局員は絶望しつつ・・・・

 「 ・・・・は・・・・はい・・・・町にはもう誰もいませんからね・・・・ 」


私が書いた「 双頭の子 」が面白くないからボツになった事は以前にも書きました通りで
す。

しかし、編集員からダメ出しされて、それっきり修正したり、描き変えたりする事もなく
私がこの漫画の制作を止めてしまった理由は、全然違うところにありました。

その理由についてのは次回に・・・・・

 
 
           「 漫画家アシスタント 第8章 その41 」 へつづく・・・・


               ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第8章 その39」へ戻る 】
  
 
 
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漫画家アシスタント 第8章 その39

2011年05月01日 05時43分48秒 | 漫画背景

 ( この写真は、Jプロが入っている目白のMマンションです。手前には大変見事なイチョウの木があっ
  たのですが・・・・バッサリと枝打ちされてしまいました。以前の写真「第7章その24」 に出ているイ
  チョウです。本来なら、緑の葉でいっぱいだったはずなのですが・・・・《 2011年4月、撮影 》 )
  
  
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                   その39  
  
      《 漫画家アシスタントが・・・国防について書く・・・!? 》
 
 
大事故の発生がまだ首相官邸に連絡される前。東京神楽坂にある料亭には、元総理大臣( 与
党の中心人物 )を上座に、農政大臣、大手建設会社会長、原電開発本部長、そして新任の通
産大臣などが、懐石料理を囲んでいる・・・・

これは、私が20年近く前に書いた「 双頭の子 」のシナリオの一部です・・・・どうか、も
う少しお付き合いのほどを・・・・・・

一番年の若い通産大臣がマルボロを手に取りながら・・・・

 「 次の( 新原発 )立地は、今しばらく時間をいただければ・・・・ 」

向かい側に座る太った建設会社会長が、子供でも見る様な眼で通産大臣を見つめながら・・・・

 「 そ~簡単にゃ~いかんだろう・・・・ 」

通産大臣( マルボロを吸うポマード男 )
 「 ・・・・と言いますと・・・・? 」

大手建設会社会長( ハゲ豚 )
 「 反対する者をよォ、金と脅しで潰していく『 ブルドーザー方式 』はもう古いんだよ 」

通産大臣( ポマード男 )
 「 ですが、それで反対派を少しずつ減らしていけば・・・・ 」

大手建設会社会長( ハゲ豚 )
 「 減らしてけば・・・・いずれいなくなるってんだろ・・・・それは昔の話だよ。今は、
   少数でも反対派に世論の支持が集まりやすいんだ・・・・ブルドーザーで世論を潰
   せるかい? 」

通産大臣
 「 ・・・おっしゃる事は・・・確かに・・・・で・・・何かいいお考えでも・・・? 」

会長( ハゲ豚 )は、座イスにゆったりと掛けながら目を閉じてうなずく。その横顔を拝む様に
酒のお酌をしながら目つきの鋭い原電開発本部長( 白髪頭 )が口を出す・・・・

 「 会長、『 土壌改良 』でしょ? 」

会長( ハゲ豚 )がニッコリとほほ笑むのを確認して原電開発本部長( 白髪頭 )がつづける・・・

 「 ○○先生( 通産大臣 )、次の立地場所にも『土壌改良』をやってみてはと思っと
   るんですよ 」

通産大臣
 「 土壌改良・・・・? 」

原電開発本部長( 白髪頭 )
 「 はあ。まず予定地に過疎地活性化として農業プロジェクトを立ち上げると・・・・ 」
   横目でチラリと農政大臣を見ながら・・・

 「 まあ、補助金をたっぷり付けて『 新農地開拓 』をやるわけで・・・・つまり農業援
   助ですわな 」

通産大臣
 「 そりゃ、財政の厳しい過疎村にとっては・・・・ 」

原電開発本部長
 「 はあ、願ったりかなったり・・・・ですな。しかし、このプロジェクトには裏があ
   りましてね・・・・ 」

通産大臣
 「 ・・・・裏? 」

この時、芸者たちが次の間へ入ってきた事が告げられる。それを原電開発本部長が「 ちょ
っと待ってねェ~ 」と制しながら・・・・

 「 ・・・・まあ・・・・裏ってのはねェ・・・・ 」

 「 はい 」

 「 大金をかけてねェ、山を崩し河川を整備して農地を造成する・・・・もう大変な大
   工事ですわ。できた耕作地に何を植えるかは国が指導する。しかし、今時、農
   業で儲けなんて出ませんわな 」

農政大臣
 「 当たり前だろ。最初から不良作物の植え付けを計画してあるんだから! 」

原電開発本部長
 「 はあ・・・そうですよねェ。ここまでは、××先生( 農政大臣 )が主役ですからねェ 」

通産大臣
 「 ・・・・・・なるほど・・・・・・つまり、このプロジェクトはとん挫する。残る
   のは地方財政の莫大な赤字( 借金 )ですか・・・・・・ 」

原電開発本部長
 「 貧しいうえに、さらに大借金・・・・そこへ、原発立地と補助金・・・・そして甘
   いもん( リベート )を持って行けば・・・・ 」

農政大臣
 「 つまり、土壌改良をしておけば、後は種(金)をまいて作物が育つのを待つだけだっ
   て話だよ 」

通産大臣
 「 しかし、少々時間がかかりそうな話ですね・・・・? 」

原電開発本部長
 「 まあ・・・・そりゃ~・・・・・・ 」

建設会社会長
 「 よく時間をかけたものほど、味が出るもんさ! 」

一同、納得したように笑う。

元総理大臣( たるんだ顔としゃがれ声 )
 「 国の発展をあせってはいかんよ 」

通産大臣
 「 それにしも、原発関連の費用やゴミの後始末など、費用対効果が悪いのに・・・・
   日本のためになるんでしょうか原発が・・・・ 」

元総理大臣( たるんだ顔 )
 「 君、原発を作るのは原爆を作るのと同じだよ 」

通産大臣は、元総理大臣の顔を見詰めたまま絶句する。

 「 原発はね、国防の布石( 核武装 )なんだ 」


このシナリオの最後の数行は、最近読んだ「 パンドラの箱の悪魔」( 広瀬隆著、文春文
庫 )から示唆を受けて、今、書き加えたものです。

 
 
           「 漫画家アシスタント 第8章 その40 」 へつづく・・・・ 


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