漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第5章 その43

2008年05月30日 12時57分52秒 | 漫画
( この漫画も「覇王の船」の一部です。主人公の青年ですが・・・悪役の漁業監督より存在感
  が薄いのです。昭和初期・・・日本の自由民権思想、反戦と労働運動の全てが絶滅する暗黒
  の時代を暗示する様に・・・・ )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
   
               その43
 
 
Jプロに入ってから2,3年はJ先生にお金を借り、その後はサラ金に手を
出した話は前回までに書いた通りです。
 
23歳でJプロに入り、2,3年・・・1980年当時の私の手取り月給は10万円
ほど、サラ金への元金、利息の返済をすると残り8万8千円( 同世代のサラリ
ーマンの手取りが12,3万円 )。やはり月末の生活が苦しくなります・・・。

そこでサラ金へ・・・暗い顔してオドオド出かけると・・・。
 
キレイなお姉ちゃんが明るく・・・
 
 「 いらっしゃいませ~~っ! 」
 
そして、現金自動支払機で追加融資を1万円・・・ピッ!
 
 「 ありがとうございました~~っ! 」
 
こうして簡単に・・・早く、明るく、サクサクとサラ金地獄の深みへはまっ
てゆきます。
 
1982年サラ金人生3年目に入る頃には50万円近い借金になっていました。も
う、簡単には返せません。「 ボーナスで返せる 」などという金
額ではなくなっていました・・・
 
年齢は27歳を越え、もうすぐ30歳に・・・。12,3万円の月給から利息だけで
も毎月1万5千円の支払い・・・。元金の定額支払が1万円。月給から差し引
くと残り10万円・・・。とても生活できないので月末には、また追加融資を
・・・・・。
 
事態の危機的状況にやっと気付いた時・・・
 
 「 もう、まともには返せっこない・・・! 」
 
何年たっても利息を払い続けるだけ・・・でも、借金は増えるだけ・・・・。
私は、自分が置かれている状況がすでに崖っぷちに来ている事を知ります。
 
部屋代、光熱費、電話代・・・手元に残る現金は6万円ほど・・・。1ヶ月や
2ヶ月の耐乏生活には耐えられるのですが・・・3ヶ月もすると、もう耐え
られません。
 
毎日、安定食とラーメンじゃやり切れないし、古本屋で買ってきた一冊50円
のエロ漫画での自家発電にも限度があり・・・たまにはスカッと女遊びもし
たい・・・と・・・・耐乏生活の反動から散財へ・・・そして月末の追加融
資。これの繰り返し・・・!
 
バブル景気の始まりと共に物価は上がります。もちろん給料も上がりますが、
借金も増えていくわけです。
 
私は、ついにヘトヘトになってJ先生に相談します。J先生にすれば、2,3
年借金しに来なくなったので、少しは真面目に暮らしていると信じていた弟
子がボロボロになっているのですから愕然とするわけです・・・
 
 「 サラ金ン~~ッ? 50万ン~~ッ? 何ンでィ~~ッ? 」
 
J先生39歳、1982年、週刊誌連載2誌、隔週誌連載1誌、月刊誌連載2誌・・
・・・等。月産250ページ以上!
 
 「 俺ィはよォ・・・体がガタガタになるほど忙しくて、歩けね~
  ほど疲れてるんだぜェエエ! おめィ~は、何考えてんだ
  よォオオオ~ッ! 」


 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その44 」 へつづく・・・



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「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



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漫画家アシスタント 第5章 その42

2008年05月24日 01時25分04秒 | 漫画家アシスタント
( この漫画は、前回と同じ「覇王の船」の一部です。悪役が正義のヒーローたちに
  向かって見栄を切るシーンです。 作者自身がお気に入りのワンシーンです。 )
   
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
   
               その42
 
 
漫画家アシスタントの画力と同じ様にその人格も十人十色です。 Jプロ
に勤めるリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山出身、81年当時 27歳 )は、決
して高くない月給の中から、毎月、故郷の岡山に住む母親に送金されてい
たそうです。
 
まったく偉い人です。漫画家アシスタントにはめずらしい学者タイプの真
面目な人でした・・・。その対極に位置するのが私の様なチャランポラン
です。月給というものを計画的に使えません。
 
 「 金は天下の回りもの 」
 
 「 遊びは芸の肥やし」
 
 「 寝るより楽はなかりけり 」
  
 「 浮世の馬鹿は起きて働く 」
 
・・・等、負け組人間の捨て台詞の様な事をモットーに暮らしていました。
 
Jプロに入ってから3年目( 80年、私25歳 )で、初めてサラ金から借りたお
金は5万円ほどでした。
 
 「 この程度の金額はたいした事ない。すぐ返せる 」
 
そう思うところにサラ金地獄の落とし穴があります・・・
 
12万円の給料では足らずに1万円借金しなくては暮せない人間が毎月
の元金1万円と利息( 5万円に対して月利1500円 )を返済にまわすと・・
・・・残り10万8500円。これで5か月辛抱すれば借金はなくなるのですが
・・・。
 
 「 この程度の借金はたいした事ない 」
 
という油断が・・・
 
 「 たいした借金じゃないんだし・・・5か月間の耐乏生活はきついか
   ら・・・・・ 」
 
と気楽な借金生活を選び・・・ジワジワと債務残高が増えてゆきます。
 
こうして始め5万円だった借金が1年後には10万円になり、次の1年で20万
円に・・・・・と、増えていゆきます。
 
サラ金利用者の私とアシスタントの先輩2人を含めた3人は・・・1981年当
時、流行っていた「 たのきんトリオ 」や「 イモ欽トリオ 」になぞらえて
・・・
 
 「 サラ金トリオ 」
 
などと陰で揶揄(やゆ)されたものです。 もっとも笑われているうちが華で、
10年経って金額が10倍に増えていると話題にするのもオゾマシイ、陰々滅
々たる噂となります。
 
5万円から10万円ほどの小額の時は「 すぐ返せる 」と油断し、額が大きく
なると・・・
 
 「 漫画家に成ったら単行本の印税で返そう・・・ 」
 
などと、考えるわけです。
 
私がもし、普通の会社員だったなら・・・。 あるいは、私がもし、漫画家
アシスタントになってから10年後にもアシスタントをやっていると予見出来
ていたなら・・・・・絶対に借金なんかしなかったと思います。
 
 
 
   漫画家アシスタント物語、血の教訓
   
 
  『 絶対(!)漫画家に成る自信があるなら、借金してでも遊びましょう。
 
    もし、そうでないなら貯金するべし! 』

 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その43 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その41

2008年05月17日 12時51分57秒 | 漫画背景
( この漫画は、前回と同じ「覇王の船」の一部です。導入部の12.13ページです。 大正から昭和
  初期の過酷な労働者の姿を描いたものですが、もっと沢山、もっと大きく描いていれば良かった
  と後悔しています。 )
   

【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
   
   
               その41
 
 
1978年、23歳でJプロに入った私は、1年も経たないうちに月末の金欠状態
からJ先生に借金をする様になります。 2,3ヶ月に一回、1万円から2万円
を借りました。
 
月末の金欠状態は、いつもの事でしたが・・・『 2,3年してデビューすれば
借金なんてすぐ返せる・・・ 』程度の思考能力しかありませんので、J先生
への借金は1年ごとに10万円くらいづつ増えていきました・・・・・。( 何ン
でこんな恥ずかしい話を書いているんだろう・・・? だんだん自分が分らな
くなって・・・ )
 
Jプロ入社3年目。 いつもの様に月末になると仕事が終わってから、私はオ
ズオズとJ先生の背中に声をかけます・・・
 
 私  「 あのォ・・・センセ・・・1万円ほど・・・前借りしたいので・・・ 」
 
 先生 「 ん・・・何でィ~? 」
 
 私  「 月末は金が無くて・・・ 」 
 
『 金がないので 』『 金がないから 』・・・先生が大嫌いな言葉です・・・・。
 
 先生 「 おめィ~はいつも同じじゃねィ~かよォ! 」
 
 私  「 す・・・すいま・・・せ・・・・・・ 」
 
 先生 「 だいたい、一度も返した事ねィ~んだからよォ、前借りとは
      言わねィ~だろォ? 」
 
ここまで叱っても、結局1万円出してくれるJ先生なのですが・・・・・さす
がに30万円( 当時の私の月給は12万円ほど )ほどにも膨れてくると・・・
 
 私  「 セ・・・センセ・・・また前借りをお願いしたいのですが・・・ 」
 
 先生 「 おめィ~のは前借りじゃねィ~だろォがよォ! 」
 
初めの頃は、黙って貸してくれたJ先生でも、さすがにあきれ果てたのか、私
が借りに行くたび小言が増えて来ました。
 
こうして私はついにJ先生からではなく、サラ金に手を出してしまうのです・・
・・・。( 実は・・・この時30万円ほどに溜まった先生からの借金は今だに借
りっぱなしで・・・でも、単行本の印税が入ったらきっと返します! 本当です!
本当に返します! )
 
 
借金なんてものは、関係ない人には全然関係ない話です。貧乏とはいえ、漫画
家アシスタントをしている人の中でもサラ金のお世話になる人は少数派だと思
います。 しかし、少数派とはいえ・・・意外と多いのです・・・・・。
 
私の知る限りでも20代後半で社会保険を持っているアシスタントの3割くらいの
人は利用しているのではないでしょうか・・・
 
私は、ある時(Jプロ10年目頃)仕事場で原稿用紙のスミに鉛筆で小さく・・・・
 
 「 プ1・5 第2 日1・・・ 」
 
と、落書きしたのです。これは、サラ金や銀行ローンの月々の返済金額です。多
重債務のない人には意味が分かりません。しかし・・・私の隣に座る先輩アシス
タントが・・・私のその原稿を見つめながら・・・
 
 「 Yちゃん(私)、俺には分るよォ・・・ 」
 
 「 え・・・? 」
 
 「 トボケてもダメだよォ・・・。 分る人には分るんだからァ・・・ 」
 
そう言って、ニヤ~~ッと笑うのです・・・・・。ちなみにこの『 プ1・5 第2
日1・・・ 』の意味は・・・『 プ○ミス1万5千円 第一○銀2万円 日○信販1万円 』
という意味です。
 
 
 「 サラ金は誰でもすぐ、簡単に貸してくれる 」
 
そう教えてくれたのは、先輩アシスタントでした・・・。
 
ある先輩アシスタントは・・・・・
 
 「 サラ金は便利だよ・・・ 」
 
と言っていましたが・・・本当は・・・
 
 「 サラ金は便利な地獄だよ・・・ 」
 
・・・だったのです・・・・・・・

 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その42 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その40

2008年05月10日 19時35分13秒 | 漫画家アシスタント
( この漫画も、100p長編「覇王の船」の一部です。イントロから続く10.11pの見開きで、
  昭和初期の貧しい労働者の生活ぶりを描いています。当時を直接知る人からは、こんな
  に小奇麗じゃない、もっと酷いなどと注意されました。 )
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
  
 
   
              その40
 
 
漫画家アシスタントの仕事でもらっていた月給は手取り19万円。
 
これは1989年当時としては、大卒初任月給より4,5万円多い程度。サラ
リーマン全体の平均月給が30万円程でしたから、中産階級とは言えませ
んが、極貧生活というわけでもなく・・・中程度貧乏といった所でしょ
うか・・・・・。
 
しかし、私には借金がありましたので、この19万円のうちから8~9万円
は利子や元本の返済に取られ、残りの10万円から下宿代、ガス、水道、
電気代などを支払うと・・・手元には現金がほとんど残らず、また新た
に借金をするという悪循環でした。
 
例の・・・「サラ金地獄」です・・・・・。( こんな話すると・・・きっ
と、「 サラ金漫画描きなよ! 」とか言われるんだろうなァ・・・ )
 
もっとも、20代から30代にかけては、自分が漫画家に成る事をこれっぽ
ちも疑ってはいませんでしたから・・・
 
 『 借金なんて問題じゃない。単行本一冊出せば返せる! 』
 
と、「 金は天下の回りもの・・・ 」・・・いや、「 捕らぬ狸の皮算用 」
で吞気に暮らしていました。
 
ところが、小林多喜二の「 蟹工船 」を漫画化する仕事を受けた頃・・・
佐々木氏( その38 その39 参照 )と絶縁した直後には、すっかり自信
をなくし、自分が漫画家に成れるかどうか不安になっていました。
 
32歳でデビューしてから早2年が経過・・・。結果を出せない、連載は見
えて来ない・・・。やっともらった「 100p長編文芸シリーズ 」といって
も、バブルの絶頂期( 光GENJI・村上春樹・鳥山明、ブランド品と億ショ
ンの時代 )にプロレタリア文学の「 蟹工船 」じゃ先は見えている。
 
はじめて私は、自分の状況が絶望的になっているのを知ります・・・・・。
 
借金返済のメドはたたず、オリジナル作品にも枯渇した私に、「 覇王の
船 」制作の停滞が起こります。
 
友人であるイラストレーターのA氏は・・・
 
 「 Yさん(私)は借金があるから漫画が描けるんですよ・・・ 」
 
彼は、他の漫画を描けない多くのアシスタントを念頭に置きながら、そう
言ったのだと思います。つまり、借金地獄のハングリー精神が創作意欲を
生むと・・・。
 
しかし・・・私は、その借金の重みに身動きすらままならない自分に、や
っと気づいるという有様でした。前門の徒労と凡作、後門の借金地獄。
 
漫画の事だけ夢見るように考えていた自分が・・・やっと夢から覚めれば、
首をくくってもおかしくない緊急事態に突入していたのです・・・・・( 酒
乱と旅行なんかしてる場合じゃなかったのです・・・ )
 
「 蟹工船 」の漫画化「 覇王の船 」の制作がどんどん遅れていきます・・・
しかし、編集からは催促の電話一本ありません。もはや、見放されたか・・
・・・・・・・・
 
手取り年収240万円。借金150万円( 金利30% )。
 
そして、35歳に・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その41 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その39

2008年05月04日 07時50分28秒 | 漫画家アシスタント
( この漫画は、拙作「覇王の船」(100p、1991年3月にS社ヤングJ誌別冊に掲載)の一部
  です。このキャラクターが物語の悪役「漁業監督」の罰河原赤蔵。タイを一緒に旅行し
  た佐々木氏に強く刺激されたキャラクターです。 )
  
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
  
 
   
               その39
 
 
「 J・Aを出せ! 文句言ってやるッ! 」・・・この言葉に私の心臓は止
まります・・・!
 
「 J・Aは、弟子にどんな教育してんだよォオオオッ! 」・・・まさに
全身の血液が凍りつく・・・そんな思いでした。
 
よく、有名人の家族が、学校や会社でその有名人の名前を出されるたびに
傷つく、という話を耳にします・・・
 
 「 お前が○○の息子かよ 」 「 あんたが××の妹? 」
 
これは、その子供や奥さんだけではなく、アシスタントも同じなのだと身
に沁みたものです。例えば・・・
 
 「 ○○の弟子のくせに 」 「 君よりも○○先生の方が・・・ 」・・・と、
 
いった感じです。
 
 
1989年( 平成元年 )、1月・・・。酒に酔って怒鳴り散らす佐々木氏( 調布
市、会社代表取締役、50歳代後半 )には、あくまで低姿勢で・・・・。改
めてあいさつに伺うという事で、一応納得してもらうまでに30分ほどの時
間を要しました。
 
グッタリと疲れた私は受話器を置き、ため息をついている暇もなく、急い
で下宿を飛び出します。近所の酒屋さんで一番高そうな日本酒( 一升瓶 )を
買い、そのまま佐々木氏の住む調布市へ向かいました。
 
出来るだけ早く事を済ませたい。さっさとあいさつして、さっさと退去し
て、さっさと関係にケリをつけたい・・・。私は陰鬱な気持ちで佐々木氏
の住む水色のペンキのはげた長屋へ・・・・・・
 
その時、はじめて奥さんと子供たちの異常なまでに静かで従順・・・それ
でいて父親に冷たい視線を投げる理由を知ったわけです。
 
 『 家族の不自然な従順さは、これが原因だったのか・・・ 』
 
私は、面倒な事になるのではないかと心配していたのですが、佐々木氏は
あっさりと私の「 あいさつ 」( お酒と謝罪 )を受け入れてくれました( 少し、
酔いが醒めてきていたのか! )。私も余計な事は何も喋らずにさっさとこの
場を離れようとしました・・・。
 
 「 あら、ご夕食は・・・? 」
 
幽霊のささやきの様な静かな声で奥さんが訊ねてくれましたが・・・それ
には丁寧に頭を下げて玄関へ・・・・・佐々木氏は何も言わず、私を見送
る事もしませんでした。
 
私はそれから氏と二度と会う事はありませんでした。そして、この直後に
「 覇王の船 」の制作に入りますが、悪役の「 漁業監督 」を描く時にどう
してもこの佐々木氏のイメージが重なってしまうのです。描いているのは
漫画のキャラクターなのに、実在の人間の怒りや恨みがわき出てくるので
す・・・
 
そこに、私は逆らう事のできない・・・地響きの様なエネルギーを感じて
いたのです・・・・・・・・。
 
 
1年ほど経って、佐々木氏の友人でもありタイで生活する時任氏( 仮名、
時任二郎。タイの小物を日本へ輸出する30歳代。 )と手紙のやり取りを
した時に時任氏も佐々木氏と酒の上でのトラブルに辟易して一切付き合わ
ない様にしていると手紙に書いてきたりしていました。
 
そして、さらに1年後・・・一緒にタイ旅行した時から2年目に佐々木氏は
奥さんと子供さん( 高校生と中学生の姉弟 )に殺されます。詳しい事はテレ
ビのワイドショーなどで知るのですが、そこには・・・・・
 
佐々木氏の会社が倒産( 私が最後に訪ねてから1年後 )し、仕事をせずに毎
日酒を飲んでは家族に暴力をふるっていたのです。そんな生活が1年ほどつ
づき・・・追い詰められた奥さんと子供たちが協力して、酔いつぶれた佐
々木氏の首にネクタイをまいて絞め殺してしまったのです。
 
私は、このニュースを見て驚き、すぐにタイにいる時任氏に新聞記事の切
り抜きを送りました。時任氏は、佐々木氏の現地妻アリーさん( 当時、15,
6歳に見えるが自称26歳、ショートヘアーの美人 )に新聞記事を見せながら、
佐々木氏の死を告げたのです・・・・・
 
時任氏の説明に、アリーさんはその場に泣き崩れ号泣しました・・・・。
 
アリーさんは自分の存在が原因で佐々木氏が殺されたのだと誤解した様で
したが、時任氏が殺された理由を説明しようとしても聞き入れようとはせ
ず、ただ号泣するだけだったそうです・・・・・・。
 
 
 
   漫画家アシスタント物語、血の教訓
   
 
  『 食事をごちそうになったり、物を買ってもらったりした場合、
  
    大人の世界では、必ず後で請求書を突きつけられる。 特に
 
    若い方は、友人でもないのに親切にしてくれる人物(主に中年)
  
    を疑う事を怠ってはならない。 』

 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その40 」 へつづく・・・



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