漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 古い話で章 その30

2014年08月27日 02時41分21秒 | 漫画家志望

 ( この写真は、仕事場の入っているマンションから撮影した目白通りです。 中央遠くが池袋、右側にある銀杏並木の
  道路を進むと目白駅になります・・・・・久しぶりの青空でした・・・・・・《 2014年、8月、撮影 》 )
 
 
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                    その30


    《 漫画家アシスタントが・・・・・全力で空回りする・・・・・!? 》


 「 絵なんて描いていりゃ~上手くなるもんだよ 」
 
・・・・・・とか
 
 「 漫画は、描き続ける事でどんどん良くなるのだ 」
 
・・・・・・とか、言われますが・・・・・・・・・
 
同じ様な( レベルの )絵を何枚描いても、また、同じ様につまらない漫画を何本描いても、まったく
上達はしないものです。

どこに問題があり、どう解決するのか・・・・・・・論理的に解くだけの脳力( 能ではなく脳! )か、
直感力( 才能 )が必要とされるわけです。
 
何本描いてもダメな時に先生に言われるのが・・・・・・・
 
 「 頭を使え! 」
 
頭を使って描いてみても・・・・・・・
 
 「 発想が弱い・・・・・奇抜なアイデアが必要なんだから、もっと勉強しろ! 」
 
 『 勉強しろ・・・・・って今更かよ? 』( 疑い出す )
 
このあたりまで来るとほとんどの人間は、ヘトヘトに疲れてしまい創作どころではなくなります。
 
同じところをグルグルと回り続けている様な空しさに襲われるのです。
 
もっとも、弟子がそうなる事が分かっているのに、批評し続ける先生も複雑な心境かも知れません
・・・・・・・


さて、私の先輩アシスタントである加川さん( ※参照 )が、その創作意欲に火をつけて毎週の様に作
品( 絵コンテ )を持って先生を訪ねます・・・・・・・

自分に向かって『 毎週一本描いてやる! 』という決意を胸に、猪突猛進・・・・・・・

この状態が1970年、加川さんが20歳の頃、ほぼ一年間続きます・・・・・・

毎週、一本描いた絵コンテやネーム( セリフだけのシナリオ )をJ先生( ※参照 )の応接用のデスクの
上に置いておくのです。

すると、次の日には、その絵コンテやネームの用紙に赤ペンで「 × 」が記されて置いてあります。

それを見ると・・・・・・・

ほとんどのセリフやコマに「 × 」が記されているわけです・・・・・・・

ただ、ほんの一カ所か二カ所・・・・・・・「 無印 」になっているコマがあるのですが・・・・・

その意味は・・・・・・・

 『 お前の原稿で使えるのはココだけだ! 』
 
・・・・・・・という意味なのです。
 
J先生の教え方がまるで禅問答の様に難解なのですが・・・・・・・・全てのアシスタントが、この
洗礼を受けます。

何本も何本も、同じ様に赤ペンで「 × 」が付けられるだけの指導( ? )について、私は、当時を懐か
しそうに話してくれる加川さんに質問してみました。

 「 ( 先生は )ここはダメだけど、こ~すれば良くなるよ・・・・・とかいった言い方は
   なかったんですか? 」
 
 「 なかったね 」
 
 「 ここは、こ~すれば面白くなる・・・・・とかも? 」

 「 そんな言い方、一切ない! 」

 「 『 × 』とかダメ出しするだけですか? 」

 「 そう・・・・・・・・とにかく・・・・・・・・『 こっちのコマ全部、無駄、いら
   ねィ 』って言うだけ 」

 「 でも、それで分かるんですか? 」

 「 分かんね・・・・・・・全然、分かんねえ! 」

 「 そ・・・・・それで・・・・・・・・ど~するんですか? 」

 「 また、描いて持って行く・・・・・・ 」

 「 ダメな部分をどう修正したら良いか分かって・・・・・・・? 」

 「 それも、分かんね 」
 
 
 
      「 漫画家アシスタント 古い話で章 その31 」( 9月1日以降公開 ) へつづく・・・・


             ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント古い話で章 お盆休み」へ戻る 】

  
  
  
  
  【 ※参照 】
 ・加川さん・・・・・・・・・・・(仮名)中学卒業後、職業を転々としながら漫画家アシスタントに成る。
  1969年19歳で、J先生に師事。1978年に少年キングで連載を得て独立。1984年別冊漫画ゴラク連載。
 ・J先生・・・・・・・・・・・・・・・有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には週刊
  連載6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。2014年現在、71歳。1969年当時は26歳。
 
 
 
 

 
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 ★ 「漫画家アシスタント物語 4章の31~」に書かせてもらったガンさん
   (ブログ本では『ハアさん』)が描いたソープランドの実録漫画を公開
   中です・・・ 特別寄稿「 親不孝通り 」 第40話お父さん

 ★ 拙ブログのうぶ主が1987年にヤングジャンプ新人賞で準入選デビュー
   した作品・・・ 「 雨のドモ五郎 」

 ★ 「漫画家アシスタント物語 第6章の10~」に書かせていただいた
   リョウさんが描いたイラストを公開中です・・・ 「 龍馬さんとボク 」

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漫画家アシスタント 古い話で章 お盆休み

2014年08月14日 21時22分49秒 | 漫画家志望

 ( この写真は、日暮れ時にJR駅武蔵浦和を撮影したものです・・・・・・・・ちょっと小雨が降りました・・・・・・。
  この駅から歩いて5分ほどのところに私が暮らすマンションがあるのです・・・・・・《 2014年、8月、撮影 》 )
 
 
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                    お盆休み


まだ、背中の痛みに耐えつつ・・・・・・・キーボードを打っております。

軽い頸椎ヘルニア( 第5,6頸椎 )のため、肩、背中の痛みと腕のシビレがあるのですが・・・・・( 骨
はすっかり老人です! )

痛み止めの薬を何種類か試しているところです・・・・・・・・・・

強い薬( リリカカプセル75mg )を使えば痛みが取れるのですが・・・・・長期間使用するのは、良く
ないのですぐに弱い薬に代えるわけですが・・・・・・・・・・

どうも、痛みからは逃れられません・・・・・・・・・・

マッサージ、針、電気、祈祷、お札、念力・・・・・どれも、即解決とはいかないみたいです。

・・・・・・・・・・という訳で。

今回は、お盆ということもあり・・・・・・お休みをいただきたいと思います。

次回は、10日後ですが・・・・・・・・・・

また、拙ブログへお寄りいただけたら・・・・・・嬉しい限りなのですが・・・・・・・・・・

どうか、よろしくお願いいたします。
 
 
 
      「 漫画家アシスタント 古い話で章 その30 」( 8月20日以降公開 ) へつづく・・・・


            ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント古い話で章 その29」へ戻る 】

 
 
 
 

 
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漫画家アシスタント 古い話で章 その29

2014年08月04日 20時51分08秒 | 漫画家アシスタント

 ( この写真は、Jプロの仕事場が入っているマンションを目白通り側から撮影した写真です。 撮影時期は、5月で気持ち
  良くシャッターを押したものでしたが・・・・・今は、この撮影場所は焼けた鉄板の様に熱いのですあります。 頸椎
  ヘルニアで背中は痛いわ、年のせいか膝も痛いわ、空の財布で懐も痛いわ、まったくひどい今年の夏なのです・・・・
  ・・《 2014年、5月、撮影 》 )
 
 
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                    その29


   《 漫画家アシスタントが・・・・・本気モードのスイッチを・・・・・!? 》


私は、以前・・・・・・といってもかなり前ですが・・・・・・・・・

まだ、若い頃・・・・・・Jプロ( ※参照 )に入って2,3年しか経っていなかった頃だと思いますが・
・・・・・・・・

忘年会か何かの席で、J先生( ※参照 )から唐突に・・・・・・

 「 おめィ~はズタズタになるタイプだな・・・・・・ 」

・・・・・・と、言われた事があります。

その時、どういう意味でそう言われたのか、よく分かりませんでしたが・・・・・・前回、J先生が
人を「斬る」冗談の様な話を書きながら、ふと気づいたのですが・・・・・・・・・

これは、きっと、私が「剣豪」ではさらさらなく、「 ヘナチョコ野郎 」で多くの人から斬られっぱ
なしになると予想した言葉だったのでしょう。

事実、よく・・・・・・

 「 あんた、J先生の弟子なのに、普通の人だね 」
 
・・・・・・なんて言われても、言われっぱなし。( 斬られっぱなし )
 
 「 J先生のとこで、何年やっても漫画家に成れないのか 」
 
・・・・・・これでも言われっぱなし。( 斬られっぱなし )
 
世の中には、初対面でも真剣で斬りつけるタイプの人( 多くは有名漫画家 )がいるのです。

それをしっかりと受け止め、斬り返す事が出来る様でないと・・・・・・なかなか大物には成れな
いのでしょう。
 
 
数年前に、J先生から聞いた面白い話で、こんなものがあります・・・・・・・・
 
まだ、J先生が若かった頃( たぶん60年代末、先生20代 ) ・・・・・・週刊誌で数本の連載を持ち
始めた頃だと思います。
 
銀座の某クラブで、有名な漫画原作者のK大先生と出会った時の事です・・・・・・

その当時のK大先生は、ほぼ全ての少年誌で大ヒットを飛ばし、その作品の多くがテレビで高視聴
率を叩き出していた・・・・・・まさに、黄金時代でした。

ただ、このK大先生・・・・・・業界では大変に恐れられた豪傑の一人・・・・・・並びうる人物
とていない、まさに業界に覇王の様に君臨する親分的存在でした。

彼には、まだ20歳代のJ先生は、ただの甘っちょっに見えたに違いありません。

顔を見知っていたK大先生はJ先生の顔を見ると・・・・・・

 「 おい、Jッ! 」

・・・・・・と、野太い声でこっちへ来いと促します・・・・・・

通常の漫画家なら、この段階でペコペコとご挨拶となるのですが・・・・・・

J先生は、なんだよ・・・・・・という平然とした態度を示します・・・・・・( 元々、人に媚び
る男ではありません )

K大先生は、ス~と手を出して握手をしようとします・・・・・・

この時に、K大先生の手に不用意に握手をすれば、その怪力にものを言わせて、相手の手を握り潰
し、苦痛の悲鳴をあげさせて「 挨拶 」に代えるわけですが・・・・・・・・・・

J先生は、その事を聞き知っていたので・・・・・・瞬間的にごく浅くしか手を握りませんでした。

そのため、K大先生が握力を加えても、それほどの痛みはありません。
 
J先生が平然としていると・・・・・・・・・・
 
 「 お前・・・・・なかなかやるじゃないか 」
 
・・・・・・そう言ってニヤリと笑ったそうです。
 
私だったら、小便漏らして泣いてるところだと思います。
 
 
さて、そんな業界の「 剣豪 」どもの戦いなんぞ、知る由もない漫画家アシスタントの加川さん( ※
参照 )・・・・・

Jプロに来てからの1年間は、フラ~フラ~~~と、風に漂よう綿ホコリの様に呑気に過ごしていた
のですが・・・・・・・・・・・・・・

彼女もでき、極貧暮らしにもうんざりし始め・・・・・・・・いよいよ、漫画道への本気モードに
入ります。

人は誰でも・・・・・・・・・・・

 『 3,4年したら、何ンとかなンだろ~! 』 

・・・・・・・ってな、軽い気分でいる時期というものがあるかと思いますが・・・・・・・・

女ができると人は変わるものなのかどうかは、分かりませんが・・・・・・・・・

とにかく、加川さんにも漫画創作の意欲がムラムラと訪れるわけです。

20歳代の前半、こうした上昇志向の波に乗れると強いもので、その勢いは簡単には収まりません。

 『 よし、俺は、毎週一本、漫画を描いてやるぜ~ッ! 』

 ♪ や~ると思えば~~どこま~でェ~~やるさ~~ ♪

男一匹、漫画家アシスタントが本気を出しますのですが・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 
つづきは次回に・・・・・・・・・
 
 
 
      「 漫画家アシスタント 古い話で章 お盆休み 」( 8月10日以降公開 ) へつづく・・・・
 

            ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント古い話で章 その28」へ戻る 】

 
 
 
 
  【 ※参照 】
 ・Jプロ・・・・・・・・漫画家J先生の仕事場。69年当時は、東京新宿区下落合にあり、スタッフ
  は3人。2014年現在のスタッフは2人。連載は1誌。ちょっと寂しい今日この頃。
 ・J先生・・・・・・・・・・・・・・・有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には週刊
  連載6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。2014年現在、71歳。1969年当時は26歳。
 ・加川さん・・・・・・・・・・・(仮名)中学卒業後、職業を転々としながら漫画家アシスタントに成る。
  1969年19歳で、J先生に師事。1978年に少年キングで連載を得て独立。1984年別冊漫画ゴラク連載。
 
 
 
 

 
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