( このイラストは、リョウさんが1988年当時に描いていた「竜童」という漫画の一ページです。
もちろん、このキャラクターは坂本龍馬です。前回、ラフなカットとは雰囲気が違います。
《 1988年、作画 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その8
『 やられた・・・先にやられたッ・・・・! 』
リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、86年当時31歳 )が12年の歳月
をかけて取り組んできた坂本龍馬の物語と実によく似た作品が・・・鳴り
物入り( 有名タレントの原作付き )で登場したのです。
この頃( 1986年 )40ページの短編で龍馬の少年期を描いた「 龍馬誕生 」
( ひ弱な少年だった龍馬がたくましく成長していく物語 )の持ち込みを
している時でした。
何度もK談社に足を運んでいたのですが・・・・「 ○~い!竜馬 」( S学
館、原作○田鉄矢、作画○山ゆう )の出現によって厳しい状況に追い込まれ
てしまったわけです・・・・。
元々、K談社の青年誌に持ち込む様に奨めてくれたのはJ先生でしたが、
リョウさんは律儀にその奨めにそって、持ち込み先をK談社一本に絞って
いました。
さて、この強力なライバル・・・「 ○~い!竜馬 」の登場に・・・・と、
言うよりも巨大なゴジラの出現に・・・踏み潰されるしかなかったリョウ
さんですが・・・・
龍馬の漫画をあきらめたわけではありませんでした。ただ、その構成を根
本的に変え、全然違う切り口で龍馬を描く事に方向転換します。
しかし、それには、まだしばらくの時間が必要でした・・・・・
「 あれ(『 ○~い!竜馬 』)は、良くできているからなぁ・・・・ 」
そう言って、ニッコリと笑うリョウさんの顔を今でもよく覚えています。
私には弱音を吐く事も気落ちしたそぶりを見せる事もありませんでした。
表面的には、意外なほどサバサバしていたのです・・・・しかし・・・・
先日、この当時を振り返って・・・リョウさんは・・・
「 突然、プロボクサーに殴られて悶絶する様なもの! 」
・・・だったと。 ・・・やはり、こちらの方が本音だったのだと思いま
す。
私も出版社では何度もボツになった経験がありますが、長年温めたネタを
「 横から失礼 」されてしまうといった経験はありません。
リョウさんは、これ以降、緻密な歴史ものとして龍馬を描くのではなく、
龍馬の少年期のある一日を描くエッセイ風の小品。さらには現代劇を核に
した作品に龍馬への憧れを込めるといった作風に変えていきます。
・・・・いや、「 変える 」というより変えざるを得なかったと書く方が正
しいのでしょう。
そして・・・大きな挫折から立ち直ろうと一歩一歩ゆっくりと進んでいたリ
ョウさんに・・・暗い影が忍び寄って来るのです・・・・
1987年9月、腸の手術をされた昭和天皇が1年後の1988年9月に吐血し重体
になります。この1年、マスコミの「 Xデー 」に関する報道で日本全体が緊
張していました。
当時、流行した言葉が「 オバタリアン 」と「 自粛 」でした。
この88年9月の昭和天皇重体ニュースはリョウさんの心にジワリと暗いダメ
ージを与えます・・・。
日々の緊張感は知らぬ間に大きなストレスの蓄積となってリョウさんの精神
を追い詰めていくのです。
「 天皇崩御 」によって世の中が大きく変わるかもしれないという緊張は幕
末研究に没頭するリョウさんの中で「 時代の変革 」や「 陰謀 」「 暗殺 」
といった言葉が、キーワードの様に頭の中で支配的になっていくのです。
本来、別々の事柄である「 天皇 」「 龍馬 」「 昭和史 」「 幕末 」「 維新 」
「 暗殺 」・・・などの概念が、それぞれの壁を越えてリョウさんの中で「統
合」されていくわけです。
繊細で真っ直ぐなガラスの橋に少しづつヒビが入って行く・・・・
リョウさんの精神の限界は静かに・・・・本人が気付きもせぬ間に・・・・
ゆっくりと、しかし確実にやって来るのです・・・・・
「 漫画家アシスタント 第6章 その9 」 へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第6章 その7」へ戻る 】
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「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
もちろん、このキャラクターは坂本龍馬です。前回、ラフなカットとは雰囲気が違います。
《 1988年、作画 》 )
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その8
『 やられた・・・先にやられたッ・・・・! 』
リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、86年当時31歳 )が12年の歳月
をかけて取り組んできた坂本龍馬の物語と実によく似た作品が・・・鳴り
物入り( 有名タレントの原作付き )で登場したのです。
この頃( 1986年 )40ページの短編で龍馬の少年期を描いた「 龍馬誕生 」
( ひ弱な少年だった龍馬がたくましく成長していく物語 )の持ち込みを
している時でした。
何度もK談社に足を運んでいたのですが・・・・「 ○~い!竜馬 」( S学
館、原作○田鉄矢、作画○山ゆう )の出現によって厳しい状況に追い込まれ
てしまったわけです・・・・。
元々、K談社の青年誌に持ち込む様に奨めてくれたのはJ先生でしたが、
リョウさんは律儀にその奨めにそって、持ち込み先をK談社一本に絞って
いました。
さて、この強力なライバル・・・「 ○~い!竜馬 」の登場に・・・・と、
言うよりも巨大なゴジラの出現に・・・踏み潰されるしかなかったリョウ
さんですが・・・・
龍馬の漫画をあきらめたわけではありませんでした。ただ、その構成を根
本的に変え、全然違う切り口で龍馬を描く事に方向転換します。
しかし、それには、まだしばらくの時間が必要でした・・・・・
「 あれ(『 ○~い!竜馬 』)は、良くできているからなぁ・・・・ 」
そう言って、ニッコリと笑うリョウさんの顔を今でもよく覚えています。
私には弱音を吐く事も気落ちしたそぶりを見せる事もありませんでした。
表面的には、意外なほどサバサバしていたのです・・・・しかし・・・・
先日、この当時を振り返って・・・リョウさんは・・・
「 突然、プロボクサーに殴られて悶絶する様なもの! 」
・・・だったと。 ・・・やはり、こちらの方が本音だったのだと思いま
す。
私も出版社では何度もボツになった経験がありますが、長年温めたネタを
「 横から失礼 」されてしまうといった経験はありません。
リョウさんは、これ以降、緻密な歴史ものとして龍馬を描くのではなく、
龍馬の少年期のある一日を描くエッセイ風の小品。さらには現代劇を核に
した作品に龍馬への憧れを込めるといった作風に変えていきます。
・・・・いや、「 変える 」というより変えざるを得なかったと書く方が正
しいのでしょう。
そして・・・大きな挫折から立ち直ろうと一歩一歩ゆっくりと進んでいたリ
ョウさんに・・・暗い影が忍び寄って来るのです・・・・
1987年9月、腸の手術をされた昭和天皇が1年後の1988年9月に吐血し重体
になります。この1年、マスコミの「 Xデー 」に関する報道で日本全体が緊
張していました。
当時、流行した言葉が「 オバタリアン 」と「 自粛 」でした。
この88年9月の昭和天皇重体ニュースはリョウさんの心にジワリと暗いダメ
ージを与えます・・・。
日々の緊張感は知らぬ間に大きなストレスの蓄積となってリョウさんの精神
を追い詰めていくのです。
「 天皇崩御 」によって世の中が大きく変わるかもしれないという緊張は幕
末研究に没頭するリョウさんの中で「 時代の変革 」や「 陰謀 」「 暗殺 」
といった言葉が、キーワードの様に頭の中で支配的になっていくのです。
本来、別々の事柄である「 天皇 」「 龍馬 」「 昭和史 」「 幕末 」「 維新 」
「 暗殺 」・・・などの概念が、それぞれの壁を越えてリョウさんの中で「統
合」されていくわけです。
繊細で真っ直ぐなガラスの橋に少しづつヒビが入って行く・・・・
リョウさんの精神の限界は静かに・・・・本人が気付きもせぬ間に・・・・
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