漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント移住物語 こりゃタイ編 その20

2023年04月03日 15時49分47秒 | タイ移住
               

       ( ↑写真、チェンマイ県ファーンにある田舎の火葬場です。この日、私のタイ人の知人の夫が亡くなり、
         その葬儀と告別式に参加しました。遠くに見えるのは火葬場の煙です。棺桶に火をつける時にちょ
         っとしたセレモニーがあるのです・・・・・《 2023年、2月、撮影 》 )




               

       ( ↑写真、この写真はチェンマイから南部へ行った所にある大きな街のお金持ちのお婆さんの葬列です。
         このお婆さんは大きなホテルのオーナーで家族も皆エリートの地元の名士です。なんでそんな人の
         葬儀に私が出ているのかはともかく、この盛大な葬列を見て下さい、延々と続く棺の車を引く会葬
         者なのです・・・・・《 2023年、2月、撮影 》 )




               

       ( ↑写真、この大きな飾り車が棺桶を収めた車です。中央の黄色い棺桶がお婆さんの棺です。約300人以
         上の会葬者でこの車を葬儀場から火葬場まで引いて行くのです。この車は高さが4mほどあり、とて
         も立派なものです。日本人が見るとお祭りの山車と間違えるかもです・・・・・《 2023年、2月、撮影 》 )




               

       ( ↑写真、これはお婆さんの火葬が始まったところなのですが、一番上の写真と同じ様なセレモニーがあ
         ります。棺桶に着火する瞬間にある録音した音を流します・・・・・それがいった何か想像できますでしょ
         うか?普通の日本人には想像もつかない音です・・・・・火葬の時に全員が聞く音です。それは・・・・・なん
         と・・・・・ゾウの鳴き声です!大きな大きなゾウの鳴き声『プオォオオオ~ン、プオオ~ン』という悲し
         い鳴き声です!これが意外と感動的なのがタイのスゴイところです!・・・・・《 2022年、11月、撮影 》 )




               

       ( ↑写真、この日、朝から遠く南部ハジャイ、東部イサーンから高僧が徒歩で来るというので、多くの市民
         が沿道に出ています。80歳の著名な高僧が裸足で1千キロ歩いてやって来たのです。足は傷だらけで多
         くのお弟子さんや付き添いの人達と一緒に、最重要警備態勢でテクテクと北部へ行脚しているのです。
         皆、今か今かと1時間位待っています・・・・・《 2023年、2月、撮影 》 )



               

       ( ↑写真、高僧一行が到着する前に、わざわざアスファルトの道路を掃き清める係員さんもいます。これ以
         外にも、高僧への寄進物を販売する業者さんなどが何人も沢山の商品を車で引きながら通過していきま
         す。さていよいよ、待望の高僧のご到着です・・・・・《 2023年、2月、撮影 》 )




               

       ( ↑写真、中央の杖をもったお坊さんが有名な高僧です。名前は分かりませんが、新聞やテレビでも行脚が
         報道されるほどの有名人です。ほぼ全ての敬虔な仏教徒にとっては普段お目にかかる事が出来ない高僧
         との対面ですから大変です。全員、地面にひれ伏して待ちます。私も混じって正座しつつ頭を下げ合掌
         しているのでご尊顔を拝する事は出来ませんでしたが・・・・・《 2023年、2月、撮影 》 )




               

       ( ↑写真、アスファルトに映る高僧の影だけは見えるのですが・・・・・「傷だらけの足元は見えないかなぁ」そ
         んな事を考えていると・・・・私の前を通り過ぎる時に、ポン、ポンと軽く頭と肩を杖で叩いて祝福してくれ
         ました。この・・・・・ポンポンという感じを今でも忘れる事ができません・・・・・《 2023年、2月、撮影 》 )






        【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 

                  その20


コロナの感染が中国で始まる少し前だったと思いますが・・・・・・・・( 3年位前 )

私の親類にあたるタイ人の青年が日本へ外国人技能実習生として出発しました。その時の事に
ついて書いておきたいと思います。

彼は、チェンマイの大学でコンピューター関係の学部を専攻、大学院まで行ったのですが、就
職が上手くいかずフリーター状態でした。( 日本でも同じ様に大学院卒って就職が難しい )

そこで、30歳になるのを機に、以前から大好きだった日本( 働きたかった日本 )へ行ける、
この「技術実習生制度」を利用しようと考えたわけです。

若くて健康な人なら誰でも応募できる制度ですので、多くの若者が日本へ行って仕事をしたい
と希望しています。

この送り出しのための専門学校で学ぶ若者たちは、SNSなどで写真を見ると、夢と希望にあふ
れている姿を画面一杯に発散させています。

タイですと、いくつかの地方に日本へ行くための施設( 学校兼宿舎 )があり、そこで多くの若
者が日本語や日本の文化・習慣について学習し、日本の企業の求人に応じて渡航するわけです。

これは、各国やその各施設によって違うのですが、おおむね60万円~90万円ほどの費用がかか
ります。( 全て食費、宿泊費、学習費、教材費、渡航費などを含みます )

若者たちにそれだけ資力があれば問題ないのですが、ほとんどの場合借入金( 多くは親族から
の借金 )で済ませ、来日後に受け取る給料から月々差し引いて返金する形をとります。

仮に60万円借金があっても、日本の会社の給料が20万円もあれば、半年から1年で返せるのでは
ないかと計算するわけです。

つまり、1年我慢すれば・・・・・・後は楽になるし、残りの2年で充分な貯金も出来るだろうし、そ
の上、高度な技術と日本語会話、渡航キャリア・・・・・リターンは多いと。

タイの労働者の月給は5万~7万円ほどですから、日本の20万円の給料はとても魅力的なわけで
す。

ちなみに、学校で日本語を勉強する間に日本の会社についても勉強します・・・・・・・・

多くは、求人のある職種についてです・・・・・農業、工業、建設関連( 塗装や道路、電気工事等 )、
介護、福祉関連から調理やサービス業まで幅広いので、どれでも自由に選べます。

自由に職業を選択し、高度技術の学習と20万円の給料( 同世代の友人たちの3倍の給料! )を
もらえるわけですからウキウキ気分になるのは当たり前です。

私がタイ人の若者だったらきっと参加していると思いますが・・・・・・・ただ、この借金が問題です・・
・・・・・如何せん高過ぎます!

ちなみに、パスポートの取得費から学費や生活費、渡航費用まで、全て本人一人の負担になるの
ですから大変です。( 日本政府も日本の企業も、日本人の全ても、ただの1円たりとも援助はし
ていません )

もしも、何か問題が発生したら、全て、この一人の若者が責任を負わねばならないのです。

さて、私は、彼が嬉しそうな日本行きの報告を複雑な思いで聞いていました・・・・・・・

日本の会社( 外人を雇う中小企業 )なんて信用できないし、問題が発生したら逃げ場がない・・・
・・・・・企業の選択や仕事の内容には十分気を付ける事、日本で何かあったらNPOや支援弁護士など、
いくつかの相談窓口を教えてあげる位の事しか私には出来ません。

毎日、日本語と文化の勉強に一生懸命に取り組み、仲間たちと夢を大きく膨らませて希望にあふ
れる彼らを見ていても・・・・・正直、喜べる気分にはなりませんでした。

さて、だんだんと出発日が近づき、学業も終盤になり、卒業試験なども無事に済ませ、就職先企
業も決定します・・・・・・・

日本語の授業では、平仮名やカタカナの読み書き全て、日常会話や初歩漢字の筆記などもしっか
り覚え、優秀な成績で全教科を終了しました。

その彼が最終的に選んだ仕事は・・・・・・・・

壁のタイル工業会社でした・・・・・給料は20万円ほどで、寮もあり環境も良く、仕事の内容もそれほ
どキツイものではない様( ネットのホームページをみると普通の会社 )なので、くれぐれも体に
気を付ける様に注意して送り出す事にしました。

この時点で、私が噂に聞いていた「違法な労働環境の企業比率は5割にぼる」という当時のデータ
が心配でしたが・・・・・日本のブラック企業なんて沢山あるし、運悪くそれに当たってしまったら、さ
っさとタイへ逃げてくれば良いわけで、それはそれで仕方がないな・・・・・・・・と。

ブラック企業に泣かされるのは、日本人の若者だって同じことなんだと・・・・・・・。


全ての実習生は、3年間の日本滞在と就労を許可されて来日します。

成田空港や羽田空港へ旅客機が着地した時のドシンッ、ドシンッ、ゴゴゴゴゴ~~ッという音を聞
いた時にどんな気持ちになるのでしょう・・・・・・・・

やっと日本へ来たんだという緊張感と高揚感で足が宙に浮いた感じで、空港の通路をイミグレーシ
ョンへ向かったのではないでしょうか・・・・・・・・

さて、各人が大きな荷物を持って税関を抜けると、到着ロビーでは企業の送迎係が待っています。

酷暑期のタイよりは少しだけ涼しいけど、それでも梅雨明けのムシムシする季節・・・・・・・・・・


3年間、仕事を頑張ってお金をたっぷり貯金して返って来る・・・・・・・・どの家族も友人も、皆がそう期
待して彼等を見送りました・・・・・・・・・

何より本人が3年間仕事を辛抱した後で、その次は熟練工としてさらに延長して日本で生活できるこ
とを期待しているのです。


でも・・・・・3ヵ月後に彼は帰国しました。

毎日、実習生を炎天下の屋外作業でこき使いつづけ、給料は応募時の金額の半分!

これは、日本人のずる賢さで多くの経費を載せて、手取り給料を半減させるやり方です。

寮で生活するしかない彼らに、居住費、管理費、保証金、清掃代、雑費等々意味不明の理由をつけ
てはピンハネしていくのです。( 結局日本人の半分の給料 )

日本で暮らしていると分からないのですが、海外でアパートを探す時は、家賃だけ心配すればほと
んど他に費用がかかりません。

つまり、日本の様に不動産仲介料、保証金、敷金( 同じ様なものは海外にもあります )、礼金、
クリーニング代・・・・以上のものは一切ありません。

不動産仲介料は、オーナーが客を見つけてもらうために不動産屋へ払うもので、顧客が支払うもの
ではありません。( おまけにタイでは、ほとんどの賃貸物件は家具付きです! )

こうした日本の巧妙なからくりをタイの若者が知る由もないわけです。

さて、低賃金でキツイ仕事・・・・・・・それなら日本にもゴロゴロあります。

問題はここからです・・・・・・・・

外国人労働者への差別です・・・・・・・・!

まず、日本人の作業員は真夏の炎天下では、自動車のクーラーをガンガン効かせて携帯ゲーム。

その間、汗みどろになって作業させられるのは外国人労働者です。

同じ会社の人間なのに、なぜ、日本人だけは涼しく遊んでいられるのか?・・・・・・眩しい太陽の下で
当然湧き出す汗と疑問です。

そして、仕事の後で、作業の出来、不出来を徹底的に調べられ、ガミガミと文句を言ったり、やり
直させたり・・・・・・・・これが、さっきまで車の中で携帯ゲームをやってた日本人です。

どんな仕事も、2ヵ月、3ヵ月( 手取り給料も宣伝文句の半分 )とやっているうちにだんだんと裏
実情が明らかになっていくものです。

普通の日本人なら、ここで「なら辞めればいいじゃないか」とか「 仕事を替えればいいじゃない
か 」とか思うわけです。

当然です。

しかし、技能実習生制度には、職業を替える事は許されていません。( 職業選択の自由はないの
です )

つまり、全ての仕事は、我慢して3年間耐え続けるか、辞めて帰国するか、二者択一なのです。

先ほども記したように・・・・・彼等はみな60万円以上の借金をしています

技能実習生制度の関連企業や団体などに訴え出たら、それは自動的に荷物まとめて帰国させられ
る事を意味します。

企業にとって、何人辞めようがどうなろうが、全くリスクがありません・・・・・・・この差別的な待遇
にこそ大きな問題があります。

最近、技能実習生制度を利用するブラック企業の問題が一部のマスコミで取り上げられています
が、これはその一例です・・・・・「Yahoo!ニュース『71%で違法行為を確認!』」


彼が日本からタイへ帰国してから1年ほどした頃、私は彼にもう一度チャンスがないものかどうか・・
・・・・・日本のこの制度の関連部署へ電話しました。

 「 事情があって戻った実習生が、も一度日本へ実習生として行く事は出来ますか? 」

 「 出来ません 」

 「 え? 好きで帰った訳ではなく、仕方なく事情があって帰国させられたのに・・・・・ 」( 汗 )

 「 ダメです、一度でも途中で帰った者は、二度と制度を利用出来ません 」

半年間も泊まり込みで勉強して、サラリーマンの半年分の給料を借金してまで日本で働こうとす
る若者に対して、何のリスクもない企業や官僚諸君は、敬意の欠片さえ見せない。

これが日本の外務省です。( 文句のあるアジア人は来るなという事です )

これが日本人の「 おもてなし 」です。

外国人( 重病の女性 )を入管の留置施設で見殺しにして平然としている連中です。

私は、いずれ日本人はその報いを受ける時が来るだろうと思っています。

こうした事が欧米から「 奴隷労働制度 」などと揶揄される所以です。


さて・・・・・・・

タイへ帰ってきた彼は、元気に再就職しています。

チェンマイの大きなデパートの携帯電話売り場の店長を任されています。

 「 日本は大好きだから、また行へきたいです! 」

・・・・・・・これは

仕事は真っ平御免だけど、遊びには行きたい・・・・・・・という意味だと思います。

彼は、頑張って貯金してますが・・・・・

早く嫁さんもらった方がイ~んじゃないかなぁ?



            「 漫画家アシスタント移住物語 こりゃタイ編 その21 」 へつづく・・・・

              ( 月一連載を目指していますが、無理だと思います )


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          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」





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