漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第6章 その2

2008年12月26日 02時48分52秒 | 漫画背景
( この写真は、東京都新宿区中落合にある聖母病院《いつもお世話になっております》前の
  通りです。長くゆるやかな坂道が西武新宿線下落合駅の方へとつづいています。この近く
  にリョウさんの最初のアパートがありました。《 2008年11月、撮影 》 )
  
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
               その2
 
 
 「 36歳までに独立出来なかったらあきらめる・・・ 」
 
1988年、33歳の私は徹夜明けのドロンとした目をして、そう言いました。
 
この時、私の左隣りにいたリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、33歳 )
が、カーテンのすき間からもれる朝日をバックに・・・
 
 リョウさん「 なんで36歳で区切らにゃならんの? 」
 
 私  「 それは・・・俺がJプロに入った時( 11年前の78年春 )の
     J先生の年齢なんですよ・・・ その頃からあの時の先生の
     年齢になってもウダツが上がらなかったらあきらめよう・・
     ・・・って・・・ 」
 
すると、少し眉を寄せ不快そうにリョウさんは言います・・・
 
 リョウさん「 年齢なんて関係ないでしょ、大体、何ンで年なんて気に
       するの? 」
 
 私  「 じゃあ・・・リョウさんは、幾つになってもあきらめない? 」
 
 リョウさん「 あきらめんなぁ・・・! 」
 
リョウさんは胸を張る様に言い切りました。
 
確かにリョウさんの言っている事は「 正しい 」かもしれません。 でも・・・
私は、そのあまりにも「 キッパリ 」とした態度に不安を感じたのです。
 
とても固い・・・しかし・・・堅牢に見えて実は、ガラスの様にもろいので
は・・・そんな漠然とした印象を持ちました。
 
この後で起こる「 事件 」を思い出す時・・・私はいつもこの時の目のすわっ
た( まるで古の武士の目をした )リョウさんの姿を思い浮かべてしまうので
す・・・・。
 
人の人生は色々です。一直線の生き方も清々しいですが・・・その「 チャレ
ンジ 」や「 ファイト 」と同じ位「 あきらめる 」事も大切な事です。それを
否定的に切り捨てる事が正しいとは限りません。
 
人は「 いい加減さ 」や「 ズルさ 」があって、当然なわけで、ただ一つの
「 積極的 」な観念だけで全てを割りきる事は出来ません。人の道とは右へ
行く事も、左へ行く事も、上へも、下へも、たゆまず動き続けるもの・・・
 
こんな世の中です、生きてるだけでも大変です。 リッチになったり、金メ
ダルを取ったりする事が大変なのは勿論ですが、ただ生きているだけでも小
さな金メダルもの・・・なんだと私は思います。
 
落ち込んでも、迷っても、泣いても・・・全て生きてるから起こる事。生き
てるからこそ感じられる事です。 
 
もし・・・もし、その当たり前の事に歪みが生じたら・・・・・
 
 
リョウさんがJプロに入って来たのは1974年( 昭和49年 )。19歳の時でし
た・・・・・

とりあえず、リョウさんの青年時代の話から・・・・
 
東京へ出てくるまでのリョウさんは、郷里の岡山を出て大阪で定時制工芸高
校で絵を勉強しながら酒屋さんの二階で住み込みの仕事をしていたのです。
 
どうしても、絵の仕事がしたい・・・漫画を描いてみたい! そこで、大好
きなCてつや先生に師事しようかと考えますが・・・・・
 
「 ○は鉄平 」「 ○たり松太郎 」「 あした天気に・・・ 」・・・等、その絵
柄のレベル的な高さに腰が引けてしまい・・・・仕方なく(?)Jプロの門
を叩くわけです。

J先生の当時の作品は「 ○ミムシくん 」「 ○・ムーン 」「 ○のよたろう 」な
ど・・・
 
 『 この程度なら俺の画力でも・・・! 』
 
しかし、J先生に見せるスケッチブックに「 ○したのジョー 」のイラストが
( うっかりミス )描かれていました・・・・!
 
 J先生「 うちは、アシスタントはいっぱいだからよォ・・・・おめィ~
     ・・・Cてつやの所へ行った方がいいんじゃねィ~か? 」
 
Cてつや先生の所へ行きたいのは山々なれど・・・・技術的に問題があり・・
・・・・・。

やっぱり、仕事が楽そう(?)な・・・J先生の下へ・・・・この数ヶ月後
に押しかけ弟子としてやって来るのです。
 
その時の逸話に段ボール箱事件(?)があります・・・・
 
まだ、リョウさんがJプロに入って来るのを知らない先輩アシスタントが、
毎日、仕事場の玄関に段ボール箱が一つ二つと増えていくのを不思議がって
いるうちに、玄関を塞ぐほどの量に・・・
 
 「 いったい、何ンだァこりゃ~~ッ? 」
 
これが、リョウさんが大阪から上京する時にJプロに郵送して来た私物だった
のです。
 
アパートに入るのではなく、仕事場に住み込むつもりで荷物だけ先に郵送し
て来たわけです。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その3 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第6章 その1」へ戻る 】

 
 


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          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




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漫画家アシスタント 第6章 その1

2008年12月19日 04時32分45秒 | 漫画家
( この写真は、東京都豊島区椎名町駅近くの商店街です。「第6章」の主要な登場人物たちが暮
  らした町です。そして、この道の先に当時(88年)私の暮らした千早町があります。ちなみに、
  この写真に写っている中央に「 帝国銀行椎名町支店 」がありました。( 参考:『帝銀事件』
   

【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
  
 
   
この「 第6章 」は、その内容から・・・いつ掲載が中断するか分かりません。
もし、そうなったら・・・
 
 「 ああ・・・yesさんのブログは横ヤリが入って潰れたな・・・・ 」
 
・・・と、スッパリとあきらめていただきたいのです。 冗談の様に思われ
るかもしれませんが本気です。
 
 
さて、くどい様ですが・・・これから書いていく話は、お約束通り、人名、
地名、日時などを変更しています。架空の「 物語 」として読んでいただい
て結構です。 そして特に、私の取材に快く協力して下さった先輩アシスタ
ントのリョウさん( 仮名:内海遼一、故郷の岡山県で療養中、08年現在53
歳 )に心より、御礼申し上げます。 数か月に及ぶ取材にお付き合いいただ
き本当にありがとうございました!
 
 
 
     「 漫画家アシスタント物語 第6章 その1 」
 
 
昭和天皇の体調が悪く、下血がつづいていた1988年。 テレビや新聞、雑
誌などのマスコミが「 Xデー 」についての報道をし、その事が巷の話題に
もなっていました。
 
Jプロの仕事場では、いつもの様に漫画制作がおこなわれ、この「 天皇重
体 」報道が一人のアシスタントに重大な影響を及ぼす事になろうとは・・
・・・誰一人として想像さえしませんでした。
 
このブログで何回か書きましたが、この頃、私の住む東京豊島区千早町の
下宿には、連日漫画家アシスタントやイラストレーターそして幾人かの旧
友が訪ねて来てくれていました。
 
1988年春、その日はJプロのスタッフが2人来ていました。私( 当時33歳 )
は「 週刊ヤングJ 」で賞取りをしていましたが、その賞も受賞のたんびに
格下げしていく有様で、気分は落ち込み気味でした。( まだ「 蟹工船 」漫
画化の話はありませんでした )
 
私たちの話題は「 将来どうするのか? 」・・・と、いう事がテーマでした。
 
 『 このまま、モノにならなかったらどうするのか? 』
 
深刻です・・・・・。
 
この頃のJプロでは、自分の漫画作品を制作しているのは私と先輩アシスタ
ントのリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、この当時33歳 )くらいでし
たが・・・特に私は、まるでパッとしない有様でしたので自然と話題も暗く
なります・・・・。
 
徹夜で話し込んだ後のよどんだ様な朝だったと思います。 カーテンを閉め
切り朝日を避けて( 深夜族はドラキュラの様に朝日を嫌います )、コーヒ
ーだけをグビグビやりながら長話をしているわけです。
 
私が初めてJプロに入った「 23歳 」の時を思い出しながら・・・
 
 「 36歳までに独立出来なかったらあきらめる・・・ 」( 当時33歳
   でしたから、後3年で す)
 
・・・と、一人言でも喋る様に言いました。 この「 36歳 」という数字に
は意味がありました。 それは、私がJプロに入った時のJ先生の年齢だっ
たのです。
 
若い頃から・・・漠然と考えていたのです・・・・・
 
 『 今の( 78年当時 )J先生の年齢( 36歳 )までに独立出来ない
  様ではオレ( 当時23歳 )の漫画人生に未来はない・・・ 』

と・・・・・・・・・・・・
 
 
     
          「 漫画家アシスタント 第6章 その2 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第5章 その70」へ戻る 】


 
 
  
    
    

       * 参考 *   
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  .............. 私(yes)のアシスタント履歴
  
  1974年昭和49年 さがみゆき先生 主に(少女系)怪奇漫画。単行本1冊分、
           4,5ヶ月のお手伝いでした。 (19歳)
     
  1976年昭和51年 かわぐちかいじ先生 この当時、氏は今ほど有名ではなか
           ったのですが、背景技術をみっちり仕込まれました。(20歳)

  1977年昭和52年 村野守美先生 漫画界一の豪傑と言われ、エピソードには
           事欠きません。たった1週間しか勤まりませんでした。(21歳)

  1978年昭和53年 ジョージ秋山先生 当時「浮浪雲」(ビックコミックオリ
           ジナルに連載)が、すごい人気で、渡哲也、桃井かおりの
           主演でTVドラマ化されていました。(23歳) 

  2017年平成29年 ジョージ秋山プロを退社、タイ・チェンマイにて隠居中。(62歳)

                    
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漫画家アシスタント 第5章 その70

2008年12月11日 14時25分05秒 | 漫画家
( この写真は、1990年から14年間暮らしたさいたま市南区にあるNマンションです。東京生まれ
  で東京育ちの私にとって、さいたま市は埃っぽくて淋しい町でしたが、「 住めば都 」なのか
  今ではなつかしく、もう一度暮らしてみたいとさえ思えます。《 2008年6月、撮影 》 )
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
  
  
   
              その70
 
 
漫画家に成ろうとデビューしてから4年・・・・。 ついに連載も取れず数
本の賞取り作品と文芸作品「 覇王の船 」に時間を費やし、行きついた先の
エロ漫画でガス欠を起こして沈滞してしまう・・・・。
 
そんな私の「 デビュー後 」に、ここで一区切りを付けさせていただきたい
と思います・・・・・。
 
 
さて・・・第5章を締めくくるにあたりまして、拙ブログ本「 漫画家アシス
タント物語 」や「 劇画 蟹工船 覇王の船 」の売上成績がどうなっているか
の報告をさせていただきたく・・・・・。( もちろん、その実数を上げる
事は出来ないのですが・・・ )
 
実は・・・両方とも・・・イマイチ・・・かなりイマイチでした・・・・。
このブログを支えて下さった皆様に・・・なんとも、申し訳なく(面目次第
もなく)・・・・・恥じ入るばかりです・・・。( 出版関係者には、もう
頭が上がりません・・・一生・・・・! )
 
先日、「 漫画家アシスタント物語 」の売れ行きを担当編集員氏よりメール
で報告していただきましたが・・・・・
 
 「 ちょぼちょぼです・・・ 」( 黒字が極々わずか・・・の意、おちゃ
  めな表現です。 )
 
と・・・・・・! まさに・・・涙が「 ちょぼちょぼ 」出そうな報告です!
チャンスをいただきながら、まったく「 結果 」を出せない万年アシスタント
の面目躍如といったところでしょうか・・・。( yesの漫画を本にしなくて
よかったなァ・・・と胸をなでおろしている他社編集部の方も、きっとおら
れる事でしょう )
 
 
このブログを始めてからちょうど4年。 頭には白髪が目立つ様になってき
ました。 そして、体重も6,7キロ増えて、すっかりオヤジぶりも板に付き、
立ち居振る舞いにも「 賞味期限切れ 」の悲哀が加わってきました。
 
ここまで、ブログを支えてくれた多くの方々に改めて感謝したいと思います
・・・・。
 
 『 読者のみなさま・・・今までお付き合い下さって、どうも
   ありがとうございました! 』
 
・・・と、まるで「 別れのあいさつ 」の様な・・・・・。
 
実は・・・・・・・・・次回からの「 第6章 」は、その内容から・・・・
 
 「 Yちゃん(私)、本当に書くの? 」
 
 「 Y君、書かない方がいい! 」
 
 「 書かん方がええじゃろぉ・・・ 」
 
などと公開を何人もの方から反対されているのです・・・・。そのため( 関
係者からの公開中止要請で )いつブログが中断するか分かりません。 
 
何より、J先生にも随分と我慢をしてもらっていましたが・・・・・さすが
に限界を突破しかねません・・・・・。( 直接J先生の話をテーマに書くわ
けではありませんが・・・ )
 
・・・と、言う訳で「第6章」が無事に進行するかどうか保証出来ません。

ある時突然・・・このブログが閉鎖されているかもしれませんので、どうか、
その事を読者の皆様にご承知おき下さいます様、よろしくお願いいたします。
( 冗談ではなく・・・! )
 
 
では・・・次回「 第6章 その1 」は、時間を少し戻して1988年に・・・・・。
「 蟹工船 」を原作にした「 覇王の船 」を描き出す1年前から始まります・・
・・・。
 
87年に「雨のドモ五郎」でデビューしてから1年半、泣かず飛ばずで悶々とし
ていたた日々に起こった出来事です。
 
「 第5章 」から連続している話ではありませんので「 漫画家アシスタント物
語・特別編 」としてお楽しみ下さい。ただし、場所、人名、日時などは、か
なり変更してあります・・・・。
 
 
   漫画家アシスタント物語、血の教訓
   
 
  『 漫画賞を取る事が大事なのではなく、本に載る事が大事なので
 
    もない・・・、ウケる事、売る事こそが大事だったのに・・・
 
    漫画で人を笑わさねば( 楽しませねば )ならなかったのに・・
 
    ・・・今は自分を笑っている。 』

 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その1 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その69

2008年12月04日 21時56分02秒 | 漫画
( この写真は、共作漫画「 入れてちょうだい! 」を持って出版社巡りをした早稲田通りです。
  なぜか、20年前のこの界隈には小さな( マンションの一室 )エロ編集部が点在していまし
  た。《 2008年11月、撮影 》 )
  
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
  
 
   
              その69
 
 
女子高生が下校時に土手でボーイフレンドとアオカン( 屋外でセックス
する事 )するという、それだけの話「 パンパンパンッ 」が不評に終わっ
たのは言うまでもありません。
 
エロ漫画はセックスシーンだけを売っているのではなく、どんな女性キャ
ラクターがどう崩れていくかをどう見せるかの勝負です。
 
ただ、エッチシーンを描けばいいというものでは絶対にありません。
 
私は「 パンパンパンッ 」の絵コンテをオーさん( 仮名、大村亮、91年
当時34歳。イラストレーター )に渡し、仕上がるまでに第3弾を考えまし
た・・・。
 
 「 普通のセックスにはもう飽きたのでェ・・・ 」( 普通のセックスを
   面白く表現できないだけ )
 
 「 次は・・・獣姦もの! 」
 
動物好きで、動物の王国を作ろうとしている有名な作家が、実は獣姦マニ
アだった( 実は本妻がメス豚だった )というお話です。タイトルは・・・
「 ムキゴロウの獣姦王国 」( ・・・だったかどうだか、もう忘れました
が・・・! )。
 
こんなもん、出版できるわけがありません!
 
完成した「 パンパンパンッ 」と、この「 ムキゴロウの獣姦王国 」( ? )
の絵コンテを持って出版社へ売り込みに行くのですが・・・・
 
「 パンパンパンッ 」は、まったく「 ダメダメダメッ 」。 そして・・・・
・・・「 ムキゴロウの獣姦王国 」は・・・・・・・・これが・・・・・・
・・大ウケッ!
 
この絵コンテを見た編集員がゲラゲラ、ゲラゲラと笑いだしたのです! 

まさに馬鹿ウケです! 編集員がこんなに面白そうに( 椅子にのけぞって )
笑っているのは生まれて初めて見ました!
 
 『 これは、激熱か! スーパーリーチか!? 』
 
・・・と私は確信しました!

・・・しかし!
 
 「 これ、すごく面白いけどヌケないですよ!」

 「 ・・・・・・ 」( 汗、そりゃそうだ )

 「 第一、これはヤバイですよ! 獣姦ものは・・・! 」
 
何が辛いかって、36歳にもなって6畳一間位の小さなエロ出版社で作品を
酷評される事ほど辛い事はありません。
 
これは「 エロ漫画なんて簡単さ 」「 どうせエロ漫画だ 」と、エロ漫画を
バカにしていればいるほど、ボツになった時のショックは大きいのです。
 
私とオーさんたち3人は、エロ3本目にしてフニャチン・・・ではなく、創
作意欲の勃起不全状態に・・・・・
 
自分の作品が何作もボツになってから、改めてエロ漫画雑誌を読んでみる
と・・・何と多くの才能がキラメイテいることか! 

寝る間も惜しんで机に向かい、絞り出す様にしてアイデアを考え、エロ的
表現の完成に全力をそそいでいる・・・( 決して大げさではありません! )
 
私は、ごく自然に・・・エロ第4作目のシナリオを書くのを止めていました。
その事についてはオーさんも黙ったまま、何も言いませんでした。
 
いつしか、エロ漫画の話題さえ避ける様になって・・・・・・。
 
 
1991年7月、共作エロ漫画「 入れてちょうだい! 」が「 漫画Sエロス」
( T書房 )に掲載されました。しかし、掲載後に・・・編集部からは何ン
の連絡もありません。ハガキも電話も・・・
 
 「 次の作品を待っていますよ 」
 
何ンて一言もありません! すでに祭りは終わり、小さなたき火を囲んでい
るだけの3人には、雑誌に掲載された「喜び」も線香花火の様に悲哀に満ち
たものでした。
 
こうして、過去を振り返ると、人並みに努力もし、チャレンジもし、チャン
スもいただき、報酬もいただいているのに結果が出ない・・・。 まさに
「 決定力不足 」!
 
プロにとって、結果を出す事が出来ないという事は・・・・・存在の意味を
失ってしまいます。 自分では重くて暗い「 35年の漫画人生 」だと思って
いましたが・・・意外と軽くて薄くてスケスケの人生だったかもしれません
・・・・・・
 
 
   漫画家アシスタント物語、血の教訓
   
  『 エロ漫画をバカにする者は、エロ漫画にバカにされ、
 
    エロ漫画を笑う者は、エロ漫画に泣かされるどろう 』
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その70 」 へつづく・・・



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